罪業

絶罪殺機アンタゴニアス外典 〜この熱き血潮に懸けて〜 #7

前 絶罪殺機アンタゴニアス目次へ  彼はその時まで何者でもなかった。血と暴虐の時代を生きる、徒人(ただびと)であった。奪う側に属せていただけ幸福と言っていいのかもしれない。  だが掠奪者はいともたやすく踏み躙られる側へと転落し得る。  彼らは犯罪率が激減し、罪業が希少となった社会に…

絶罪殺機アンタゴニアス外典 〜この熱き血潮に懸けて〜 #6

前 絶罪殺機アンタゴニアス目次へ 「青き血脈」は楽園(ちきゅう)で誕生した。かの一族が他と隔絶していた理由は、当時の爛熟した遺伝子操作技術により、一から人を導くイデアそのものとしてデザインされたからだ。  そして、その遺伝子の中に不確定性原理に基づくとあるコードが仕込まれた。  秘…

絶罪殺機アンタゴニアス外典 〜この熱き血潮に懸けて〜 #5

前 絶罪殺機アンタゴニアス目次へ 「起きてくださーい!!! 朝ですよー!!!」  砲撃でも始まったのかと思う大音声にも、流石に一週間毎朝聞かされれば慣れてきた。トウマは目を擦りながら起床する。恐ろしいことにソファで寝ているパットは未だ目を覚ましていない。  バロットがカーテンを勢い…

絶罪殺機アンタゴニアス外典 〜この熱き血潮に懸けて〜 #4

前 絶罪殺機アンタゴニアス目次へ  ──いつからだろう。記憶の中の君達すら微笑まなくなったのは。  或いは最初からか。自分に向けて笑顔を見せたこと自体が幻想だったか。  二人きりの時に見せる、子供っぽい笑顔が好きだった。  子を産んでから魅せる、強く優しい笑顔が好きだった。  慈しん…

絶罪殺機アンタゴニアス外典 〜この熱き血潮に懸けて〜 #3

前 絶罪殺機アンタゴニアス目次へ  降り来たる。可視化され、擬人化された地獄が。  迫り来たる。万物を嘲り嬲る、機械の牢獄が。  巨大な宇宙服の如きソレは、最初の一機に続いて更に二つが、ホバージャンプ機構を用い轟音を響かせながら簡易耐爆シェルターの残骸の上に着地した。  ソレは薄緑…

絶罪殺機アンタゴニアス外典 〜この熱き血潮に懸けて〜 #2

前 絶罪殺機アンタゴニアス目次へ  罪業変換機関を再発見した人類は、まるで休眠状態の種子が水を得たかのように文明を花開かせた。  殺人者共にこの手足を削いで皮を剥いだ胎児の如き肉塊を繋ぐと、それだけで都市の要求する全エネルギーを賄えた。空気は浄化され、水は溢れ、食糧は飽くほど生産…

「罪業を知れ」ではない。「知れない」てのが「私」の事実。

我々が自らの罪業を知らないということ。 そのことはすなわち、自分の生命というものをほんとうに生きていないということであり、自分の人生を、空しく自分の思いによって流しているということになるのであります。 自らの罪が自覚しえないということが、もっとも深い畏れなのです。         …

石神井公園 2020.12.15

いいかい、あらゆる思想はひっくり返る ほら見てごらん、生命はひっくり返る 智慧も利他心も親愛も正念も時代でさえ たしかに、絶えず気を張って 片面にしがみついていれば何があってもやり過ごせるだろう 故郷にこだわるか、故郷を捨てるか いつ何時も、損をするのは「あなた」ではない

絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #95

 前 目次  腕を伝い、四百メートル程度の距離を一気に駆け抜ける。一歩で体を数メートルほど射出し、着地の衝撃を弾く勁力に変えて再び巨神の腕を蹴り抜く。  そうして瞬時に甲零式の御座へと踊り込む。  がぁ、と獣のような声とともに、半神的な美貌の女は掴みかかってくる。  意に介さずその…