ショタジジイ

絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #95

 前 目次  腕を伝い、四百メートル程度の距離を一気に駆け抜ける。一歩で体を数メートルほど射出し、着地の衝撃を弾く勁力に変えて再び巨神の腕を蹴り抜く。  そうして瞬時に甲零式の御座へと踊り込む。  がぁ、と獣のような声とともに、半神的な美貌の女は掴みかかってくる。  意に介さずその…

絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #89

 前 目次  振動センサーは次々と甲零式の出現を検知している。  その数、三十を越えた。今も増え続けている。  当然ながら、そのすべてが本物というわけではないだろう。あるいはすべて偽物か。アンタゴニアスの各種センサーのすべてを完璧に欺かれるとは思わなかった。  ――あるいは、欺かれ…

絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #88

 前 目次  回避は、可能であった。亜光速で照射される重金属粒子ビームであるが、アンタゴニアスの全身に張り巡らされた神経組織は「電位差」などというノロマな伝達方式とは根本的に異なるメカニズムで信号をやりとりしている。十分に余裕をもって反応できるはずであった。  だが――アーカロト…

絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #87

 前 目次  七十三の仏塔(ストゥーパ)と、五十の僧堂(ビハーラ)、七つの祀堂(チャイティヤ)などによって構成される伽藍都市が、ひとつの高層建築の中で全方位に伸びている。全高は七キロメートル強であり、予測される数十万トンの重量を支えるには、その基底部は貧弱すぎるように思えた。明らかに分…

絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #86

 前 目次 《どう? 苦しくない?》 「だいじょうぶなのですわ!」 《じゃあ閉めるよ》  まず〈接続棺〉にアーカロトが入り、神経接続。それからシアラが横に身を横たえる。  もともと〈接続棺〉は成人を月世界に葬送するために作り出されたものなので、二人で入っても手狭というほどではない。 …

絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #83

 前 目次  ――きっとわたくしは、きれいなばかりではいけないのですわ。  大きな声を出したシアラを、みんなが驚いた目で注視している。  皆、寂しそうだったから。  皆、怖がっていたから。  ここまでの温かな触れあいで、ようやく自分がどうしようもなく傷つき、疲れ果てていたことを自覚し…

【まとめ読み版】絶罪殺機アンタゴニアス外典 〜押し潰されそうな空の下で〜

 絶罪殺機アンタゴニアス目次へ 絶罪殺機アンタゴニアス 外典 押し潰されそうな空の下で 1  果てしなく青い空が、見たい。  それが幼い頃から、そして〈原罪兵〉となった今も変わらぬ彼女の――ヒュートリア・ゼロゼアゼプターのたった一つのささやかな願いであった。  ――そして、それが…

絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #81

 前 目次 「御子よ。我々はこれまで誤った信仰のもと、多くの人々を殺めてきました。命乞いをする者らを、何人も何人も黄泉路に導きました。それだけが救いだと、愚かにも疑うことなく」  強化装甲服を外し、平服姿となった重サイバネの男たちは、シアラの前に跪きながら言った。 「お裁きを賜りた…

絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #80

 前 目次 「うぃー、なんか珍しい空気じゃねえか? はは、いつもこうならいいんだけどなぁ、ひっく」 「酒臭いな、デイル」  どっかりと爬虫類顔の男がアーカロトの隣に腰掛ける。 「おめーは飲(や)んねえの?」 「……なぜ当然のような顔をして子供に酒を飲ませようとしているのだろうこの男は」…

絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #79

 前 目次  宿主は彼女のクローンたちだった。定着を期するならやはり本人に限る。免疫抑制剤は、そう簡単には手に入らない。  人体を六つに分割し、うち五つをそれぞれ五人のクローンに移植する。  否――置換すると言うべきか。彼女の右腕を担うクローンは右腕を切除して彼女のものと入れ替えた…