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仕事ができるようになるまでは時間がかかる 三浦しをん『神去なあなあ日常』
仕事を始めて数か月。遅いし注意はどっさりもらうし、全然スムーズにはいかない。焦っても進まず、疲れて寝てばかり。6月は短文を読む気力しかなくSNSをずっと見ていた。これはあまりよくないと、リハビリに短い小説を読んでみることにした。三浦しをんの『神去なあなあ日常』。高校卒業後の進路をまったく決めていなかった平野勇気は、担任の先生が見つけて来た仕事に就く羽目に。その仕事とは、山奥の村での林業だった。勇
もっとみるタイトルのとおり 津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』
2021年に『君は永遠にそいつらより若い』の映画の感想を書いた。今読み返すと拙くてつくづく恥ずかしいが、この映画にとても感動したのだ。このときは大学院1年生で、大学卒業間近の女性が主人公の本作に自分を重ねてもいた。それから2年経ち、大学院も修了して「大学」があっという間に過去の記憶になっている。そんな折、新宿の紀伊國屋で「津村記久子フェア」が行われているのを知った。『この世にたやすい仕事はない
もっとみる『インスタグラム 野望の果ての真実』
(これは昨年8月にブログに載せたものです。ブログの整理にあたり、こちらに移しました)
なぜこんなにも「スタートアップ」「ベンチャー」が盛り上がるのか、分かった気がした。
就活をしていた時、「大企業とベンチャーどちらを選ぶ?」「大企業に就職してからスタートアップに転職するのが理想」といった問いかけ、煽るような記事をたくさん見かけた。なぜそれほど極端に捉え、一生の選択であるかのように考えなければ
迷い、行き詰っているときに読む本―星野博美『島へ免許を取りに行く』
この状況を打開したい、そのための「目標」-自動車の運転免許を取ること。著者の星野博美さんは長崎県五島列島、福江島にある「ごとう自動車学校」の合宿に行くことにするのだ。それが『島へ免許を取りに行く』(集英社)の内容だ。馬も犬もいる、目の前は海の自動車学校。そこで1か月近く奮闘した記録と、免許を取ってからの日々を書いている。
合宿または通いでの運転免許取得そのものは、多くの人が経験すると思う。でも
家族、このどうしようもなさ『ホテル・ニューハンプシャー』
図書館で見つけたときなぜか無性に気になり、新潮文庫の『ホテル・ニューハンプシャー』を手に取った。なぜか今読む必要がある気がした。
「父さん」が熊を買った夏から始まる、僕、父さん、母さん、兄のフランク、姉のフラニー、妹のリリー、弟のエッグ、おじいちゃんのアイオワ・ボブの話。父さんと母さんが会った夏、2人はフロイト(あのフロイトではない)と熊のステイト・オ・メインとも出会う。父さんはフロイトから