ハルカ

近現代日本文学やポップカルチャーをフェミニズムの観点から研究していました。今は会社員。…

ハルカ

近現代日本文学やポップカルチャーをフェミニズムの観点から研究していました。今は会社員。クィア。

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  • まっすぐでない世界

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最近の記事

私も、ミックステープを作って友達と交換してみたかった!!

    • まっすぐでない時間軸——クィア・テンポラリティから

       「クィア・テンポラリティ」という言葉を知りました。 「結婚・出産」を前提とした、異性愛規範の強いまっすぐな時間軸ではない時間や、過去、現在、未来は別物(そして未来は生まれてくる子供たちのもの)という考え方とは違う時間、歴史を考えようという考え方だそうです。国際基督教大学のジェンダー研究センター主催の講演会「時を超えて触れ合うこと」では、この「クィア・テンポラリティ」を軸にキリスト教とクィアについて語られました。  講演者の安田真由子さんによると、例えば「成長し結婚し家庭を

      • 一人で生きていきたい

         一人で生きていきたい。結婚を望んでいない。誰かと暮らすことも望んでいない。今日も、夫婦が喧嘩するのを泣きながら眺めている夢で目が覚めた。目が覚めて、自分はいま一人なのだと気がつき安心した。  私は一人で生きていきたいのだ。だが、「いい人いないのか」「結婚を考えないのか」としばしば問われる。そのたびに笑ってスルーしてしまう自分が嫌だ。けれど、臆病だから強く言い返せない。「一人は寂しい」と、未だに強く信じられているらしい。一人は寂しい、寂しいのはいけない、そうなのだろうか。確

        • さあどこへ行こう――イ・ラン『アヒル命名会議』

           今いる場所で、少し世界を違う風に感じてみたくはない?帯文にある「すべてをゼロから問いなおす、13の物語」に違わず、イ・ランの短編集『アヒル命名会議』は世界を軽やかにひっくり返す。  ゾンビのようなウイルスが広がり始めた世界で、どうするか話し合うカップルの話に始まり、神様のつくった生物を名づける会議や、映画の撮影に遅刻したばっかりに奇妙な運命をたどるエキストラの物語。ちょっととぼけたような、意表を突くような、シンプルだけれど真似のできない短編集だ。 折り合いのつかない世界で

        私も、ミックステープを作って友達と交換してみたかった!!

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        • 2020年に観た映画
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        記事

          ああそうか、「私」の話だった 『傲慢と善良』

           身につまされる話だった。 西澤架の婚約者・坂庭真実が失踪する。真実はストーカー被害に遭い、架の部屋に逃げてきたばかりだった。真実はストーカーに連れ去られたのではないか?真実を見つけるため、架は彼女の過去を調べ始める。  何重にも積まれた「傲慢」。  タイトルの通り、出てくる登場人物は皆「傲慢」さをもっている。娘の就職や結婚に干渉せずにはいられない真実の母、架がかつての恋人に抱いていた感情、そして真実もまた――。「傲慢と善良」の意味は、説明しすぎなくらいに語られつくされてい

          ああそうか、「私」の話だった 『傲慢と善良』

          小鳥書房より刊行予定の『ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活』に書かせてもらいました!タイトル通り100人のひとり暮らしの記録ということで、楽しみです! https://kotorishobo.theshop.jp/items/87474084

          小鳥書房より刊行予定の『ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活』に書かせてもらいました!タイトル通り100人のひとり暮らしの記録ということで、楽しみです! https://kotorishobo.theshop.jp/items/87474084

          現代語、侍に出会う――『パンク侍、斬られて候』

           江戸時代のある藩。穏やかな日々のなか突然現れた男は、「腹ふり党に注意せよ」と藩のお偉方に忠告する。カルト宗教・腹ふり党の信者は、この世は条虫の腹の中であり、腹をふって馬鹿騒ぎをすることで虫に苦悶させ、糞となって脱することができると思い込んでいる。この腹ふり党のせいで人々は仕事を放棄しどんちゃん騒ぎ、各地は荒れ、飢饉が起きているとのこと。男(掛十之進)は、実は腹ふり党についてよく分かっていないのだが、藩の人間をうまく脅すことで職を得ようとしていた。が、そこで馬鹿げた権力争いに

          現代語、侍に出会う――『パンク侍、斬られて候』

          負け越し(ぐらい)を目指して――『負ける技術』

           漫画家、カレー沢薫のコラムを初めて読んだ。『負ける技術』。 まるでビジネス新書のようだが、全然違う。カレー沢氏曰く――。  これが前書きだ。この前書きに心を掴まれた人は好きなところから読んでみよう。コラムの書籍化で、マンガの担当編集者への恨みつらみから無職時代のこと、SNS論まで豊富に載っている。 文章面白い!  凡庸な褒め方だけれどカレー沢さんの文章はすごく面白い。比喩が巧み(たまに極端)で、面白いのに(一人バーベキューをしたり、マンガ家にファンレターを送りまくった

          負け越し(ぐらい)を目指して――『負ける技術』

          パラダイスはどこか―『地方にこもる若者たち』

           昨年夏、「モールの想像力」という企画展を見に行った。「ショッピングモール」が若者の集う場となっていることや、文学やミュージックビデオで重要なモチーフとして度々登場していることを取り上げており、小さい展示ながらとても面白かった。  阿部真大『地方にこもる若者たち――都会と田舎の間に出現した新しい社会』も、ショッピングモールが若者の重要な拠点となっている、という話から始まる。岡山県に住む若者を調査対象とし、「余暇を過ごす場所」や人間関係の満足度について聞いた調査結果から見えて

          パラダイスはどこか―『地方にこもる若者たち』

          まっすぐでない世界②:完璧の目指し方を変える

          まっすぐでない世界    親に宛てて書くつもりで始めた「まっすぐでない世界」。親に対するLINEだけではもったいないような気がして、noteでも書くことにした。 「まっすぐでない」ということばには、前に書いたような「時間感覚」や素直に受け取れないまたは受け取りすぎることから、「まっすぐでない」世界を生きている、という意味を込めた。また、大好きな『脇道にそれる』という本も意識した。「脇道にそれる」ことは「まっすぐ」に進まない、ということだ。あと、何かと「まっすぐ」を求める世界

          まっすぐでない世界②:完璧の目指し方を変える

          断片的な私のタイムライン

           親に自分の「時間感覚」について説明してみた。親は私のとまらない愚痴と内省(?)に付き合ってくれており、なぜ同じ後悔を毎日繰り返してしまうのか、私が感じている時間を共有してみようと思った。 点の時間  私は時間を「点」のように感じている。基本的に、時間は「線」として未来に向かってまっすぐ伸びており、過ぎたものは「過去」であるとされていると思う。けれど、私にとって、その出来事が気になるものである限り「過去」ではない。何年も前のことでも数時間前に起こったことのように強烈に感じ

          断片的な私のタイムライン

          種はまかれていた

           日本がどんどん戦争をする国になっていて怖い。他の国の戦争や虐殺は対岸の火事ではないし、他の国のことでも多くの人が殺されたり人権を侵害されたりしている状況に恐怖を感じる。この瞬間にも、家で暴力を受けている人や家がない人もいる。私の生き方や仕事は何ができるんだろうと思う。いろいろなことがあまりに早く変わり、知識や積み上げてきたものが追い付けない。  研究したことが身に染みてきたのは、大学を卒業してからだ。  フェミニズムという思想や運動に大学で出会い、女性差別が社会の根底に

          種はまかれていた

          ずっと誰かといなきゃだめ?

           先日の「Skyrocket Company」(TOKYO FMのラジオ)のメッセージテーマは「友だちどうやってつくる?」だった。  最近、映画を観ていると気になるのは「独りじゃだめだ!」と言わんばかりに、孤独な登場人物に仲間ができる展開だ。「ひとりじゃない」「仲間がいる」—確かに、どれも感動的であり、一人で寂しそうにしていた人物に友人ができるとこちらも涙ぐむ。でも、ひとりでいたい時ってないだろうか。  そもそも「ぼっち」だとか「パリピ」だとか、なんでこんなに極端に二分して

          ずっと誰かといなきゃだめ?

          なぜ分断されるのか 山内マリコ『あのこは貴族』

           読み終わったあと、「私は」と語り始めたい気持ちでいっぱいになった。「私は」に続くことばは、私はこうだった、私はこう思う。きっと多くの人が、この小説を読み終えたときに自分の経験を言葉にしたいと思うのではないだろうか。  榛原華子と時岡美紀という、全く違う環境で育った2人の物語だ。華子は、渋谷区松濤で、親が整形外科医をしている裕福な家で育った。結婚を望み婚活をしている。物語は榛原家が帝国ホテルで迎えるお正月という華々しい場面から始まる。ホテルや美術作品の固有名詞が次々と飛び出

          なぜ分断されるのか 山内マリコ『あのこは貴族』

          楽しいことをしていたい。『私ときどきレッサーパンダ』

           ってどういうことだろうと思っていた。ディズニー+でのみ配信されていた、ピクサーの新作がやっと劇場公開。舞台はカナダ・トロントで、13歳のメイ・リーが主人公だ。メイは我慢せずやりたいことはなんでもやる。成績は完璧。運動も音楽もできる。アイドルグループの4Townが大好きで、3人の素敵な友人もいる。そして、母親からの期待に応え続けようと頑張っている。  そんなメイが楽しく暮らし、母親との関係に悩みつつも、アイドルのライブを心待ちにしていたある日、突然レッサーパンダになってしまう

          楽しいことをしていたい。『私ときどきレッサーパンダ』

          今まで住んだ家を振り返る

           東京に来てからの7年間は、引っ越しとともにある。東京に保護者が住んでもいなければ持ち家があるわけでもない、お金のない独身として、転々としている。  一番最初の家は、大学寮だった。設備は新しく綺麗で、ほかの学生と2人で1部屋。キッチンとシャワーは共同だ。テレビのあるリビングもあった。管理人は住んでいるし、カードキー式で安全な物件だったと思う。家を出れば「自分一人の部屋」が手に入るかと思っていたので、ルームシェアなんて嫌だったけれど、案外居心地がよかった。事前のアンケートをも

          今まで住んだ家を振り返る