ゲオルク

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記事一覧

彼らは孤独という名の酒を飲み交わす、だけど独りで飲んでいるよりはずっといいだろう

 身体は極限まで疲れている。喉も枯れてしまった。脳だけが覚醒し続けている。  10月7日より2泊3日で、博多を訪れた。出張ゲンロン・カフェの観覧、および史上初のゲン…

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7か月前
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東浩紀『訂正可能性の哲学』を読んで

まず一言  感動した。  私は東浩紀の古い読者ではない。同時代的に著作を追いかけてきたわけでもない。デビュー作『存在論的、郵便的』から25年、東は本作をキャリアの…

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8か月前
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『観光客の哲学 増補版』読んだ

amazonの購入履歴によると、旧版のほうを読んだのは2年半前。僕の記憶ではもっと昔、5年くらい前に読んでいたような気がしていたので、意外だった。それくらい、この本を…

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10か月前
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1991年生まれにとっての1991年:ロズニツァ『新生ロシア1991』を観て

 セルゲイ・ロズニツァ監督『新生ロシア1991』を観た。同監督の作品を観るのは、先日公開された『ミスター・ランズベルギス』に続いて二作目。備忘録として、いくつか考え…

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1年前
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すんごいテキトーな文章

標題通り。すんごいテキトーな文章書いてみよう。目的もなく、だらだらと。 暇な方は暇つぶしに読んでください。僕も暇つぶしに書くので。 ・今日は何をしたか。蓮實重彦…

ゲオルク
1年前
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審判のAI化について

先日行われたW杯で、三苫の1mmというのが話題になった。スポーツ界は今では積極的にビデオ判定を取り入れるようになっているが、過渡期であるためか、しばしば物議も醸し…

ゲオルク
1年前
3

イチロー引退会見に思う

周回遅れのタイトル、悪しからず。 スーパースターの引退さぞかし荘厳な雰囲気のなか執り行われるのだろうと思っていたら、全然そんなことはなかった。拍子抜けするほどラ…

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1年前
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心の相談室 5¢

♪ 僕はスヌーピーの大ファンだ。 小さい頃から好きだった。 と言っても、コミックを読んでいたわけではなく、ただあのかわいらしいキャラクターが好きだったのだ。自分…

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1年前
1

Stormy Year, 2022

2022年が終わろうとしている。とにかくいろいろあった。世界史的にも、日本史的にも、そして個人史的にも。 第一にはやはり悪いことばかり思い出す。戦争、暗殺、襲撃、…

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1年前
1

『ケイコ 目を澄ませて』を観て

 『ケイコ 目を澄ませて』を観てきた。岸井ゆきの演じる聾の女性ボクサー、ケイコのお話。すごく良かった。ケイコと、ジム経営者・会長の三浦友和(たぶん役名はついてい…

ゲオルク
1年前
1

『観光客の哲学』から考えるレビューの極意(後編)

「レビューを書くまでがシラス」。前回自分が書いた言葉にとらわれて、最近は本当にレビューを書くまではシラスを見た気がしない。3000字くらい書いても、「これだけではあ…

ゲオルク
1年前
8

人、人、人。人しかいない映画:『ミスター・ランズベルギス』を観て

 とにかく人がたくさん出てくる。最初から最後までずっと画面が人で埋め尽くされている。  監督はセルゲイ・ロズニツァ。ベラルーシ出身、ウクライナ育ち。ロシアがウク…

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1年前
5

『観光客の哲学』から考えるレビューの極意(前編)

レビューを書いたことはありますか? 私は放送プラットフォーム「シラス」にレビューを書き始めて約2ヶ月、これまでに18本のレビューを投稿してきた。とても多いというわ…

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1年前
29

オレはキューピーちゃん

オレは腹が弱い。何かとかというとキューっときて、ピーっとくる。そんなオレは、キューピーちゃん。 たとえば電車に乗る。キューっとくる。新快速とかに乗ってると次の駅…

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1年前
1

シラスレビューの先駆者たち

プロローグgeorg : 『新エロイーズ』講義でシラスレビュー界に電撃参戦したオレは、その後立て続けに投稿したいくつかの長文レビューもそれぞれ一定の反響を呼び、さらには…

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1年前
7

まーでもない、らーでもないエッセー: 星野博美『華南体感』に寄せて

 『世界は五反田から始まった』を読んで深い感銘を受け、すぐさま星野博美の他の著作を何冊かネットで購入した。一番早く届いたのは写真集だった。 星野博美との出会い …

ゲオルク
1年前
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彼らは孤独という名の酒を飲み交わす、だけど独りで飲んでいるよりはずっといいだろう

彼らは孤独という名の酒を飲み交わす、だけど独りで飲んでいるよりはずっといいだろう

 身体は極限まで疲れている。喉も枯れてしまった。脳だけが覚醒し続けている。

 10月7日より2泊3日で、博多を訪れた。出張ゲンロン・カフェの観覧、および史上初のゲンロン非公式ミニ総会「人文マルシェ」(通称「ぶんまる」)に参加するためだ。ぶんまるは昼の部と夜の部に分かれており、夜の部は20:30から29:00までという狂気のスケジュールが組まれていた。僕は夜が弱く、きっとすぐに眠たくなるにちがいな

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東浩紀『訂正可能性の哲学』を読んで

東浩紀『訂正可能性の哲学』を読んで

まず一言

 感動した。

 私は東浩紀の古い読者ではない。同時代的に著作を追いかけてきたわけでもない。デビュー作『存在論的、郵便的』から25年、東は本作をキャリアの総決算と位置付けているけれども、私が東浩紀を同時代の哲学者として認識したのはせいぜいその最後の2、3年に過ぎない。彼の著作のほとんどを私は後追いで読んでいる。だから、本作が東浩紀の到達点などという評価を私が下すのは、おこがましくてでき

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『観光客の哲学 増補版』読んだ

『観光客の哲学 増補版』読んだ

amazonの購入履歴によると、旧版のほうを読んだのは2年半前。僕の記憶ではもっと昔、5年くらい前に読んでいたような気がしていたので、意外だった。それくらい、この本を読んで人生観、世界観を揺り動かされたということだろう。

初めて東浩紀を知ったのは『一般意志2.0』。これもamazonの履歴によれば、読んだのは2015年末のことである。正直に言って、当時は全然よくわからなかった。というより、反感を

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1991年生まれにとっての1991年:ロズニツァ『新生ロシア1991』を観て

1991年生まれにとっての1991年:ロズニツァ『新生ロシア1991』を観て

 セルゲイ・ロズニツァ監督『新生ロシア1991』を観た。同監督の作品を観るのは、先日公開された『ミスター・ランズベルギス』に続いて二作目。備忘録として、いくつか考えたことを記しておく。
 
(※半分以上が映画には直接関係ないことを書いているが、ネタバレについては各自の責任でお願いします。)

捉えどころのない映画だと思った 『新生ロシア1991』の英語タイトルは"The Event"、つまり「出来

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すんごいテキトーな文章

すんごいテキトーな文章

標題通り。すんごいテキトーな文章書いてみよう。目的もなく、だらだらと。
暇な方は暇つぶしに読んでください。僕も暇つぶしに書くので。

・今日は何をしたか。蓮實重彦の『ショットとは何か』を読んでいた。去年出た本。僕は昔の蓮實重彦のことは全然知らない。仄聞するところでは、とてもおっかない文章を書く人だったそうだ。まあ、それはテレビで見た感じとかからもわかる。三島由紀夫賞の授賞式で喋っている蓮見氏を見た

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審判のAI化について

審判のAI化について

先日行われたW杯で、三苫の1mmというのが話題になった。スポーツ界は今では積極的にビデオ判定を取り入れるようになっているが、過渡期であるためか、しばしば物議も醸している。

野球も例外ではない。人間の審判が下したアウト/セーフの判定やフェア/ファールの判定が、ビデオによるリプレイ検証によって覆るということが今では普通になっている。

この流れでいくと、将来的には生身の人間の審判は職を失うことになる

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イチロー引退会見に思う

イチロー引退会見に思う

周回遅れのタイトル、悪しからず。

スーパースターの引退さぞかし荘厳な雰囲気のなか執り行われるのだろうと思っていたら、全然そんなことはなかった。拍子抜けするほどラフでフレンドリーな雰囲気。らしいっちゃらしい独特の和やかな引退会見だった。

イチローの言葉で私が特に考えさせられたのは、「おかしなこと言ってます?」・・・ではない。今のメジャーリーグは「頭を使わなくてもできる野球になりつつある」という言

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心の相談室 5¢

心の相談室 5¢



僕はスヌーピーの大ファンだ。

小さい頃から好きだった。

と言っても、コミックを読んでいたわけではなく、ただあのかわいらしいキャラクターが好きだったのだ。自分で絵に描いたりもしていた。

ビデオは持っていた。そこに出てくるスヌーピーは、ただかわいらしい犬ではない。けっこう悪知恵も働く、皮肉屋のちゃっかり者といった感じだ。これもまたいい。というか、そういうスヌーピーこそが本当のスヌーピーであ

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Stormy Year, 2022

Stormy Year, 2022

2022年が終わろうとしている。とにかくいろいろあった。世界史的にも、日本史的にも、そして個人史的にも。

第一にはやはり悪いことばかり思い出す。戦争、暗殺、襲撃、背信、離別、等々。これまではわりと運良く生きてきたという自覚があるのだが、ここに来て僕の人生はもう運が尽きてしまったのではないかという感じがする。人生は大変だ。この世界にはなぜこんなに悪が多いのだろう。神様はなぜもっとよくできた世界を

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『ケイコ 目を澄ませて』を観て

『ケイコ 目を澄ませて』を観て

 『ケイコ 目を澄ませて』を観てきた。岸井ゆきの演じる聾の女性ボクサー、ケイコのお話。すごく良かった。ケイコと、ジム経営者・会長の三浦友和(たぶん役名はついていなくて、ただ「会長」と呼ばれていたような)が鏡に向かってシンクロしながらシャドーボクシングの練習をするところや、ミット打ちのリズミカルな感じや、パン、パーンという音がすごく良い。あれだけで、「ああ、映画だなあ」と思う。だけど、ケイコにはそれ

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『観光客の哲学』から考えるレビューの極意(後編)

『観光客の哲学』から考えるレビューの極意(後編)

「レビューを書くまでがシラス」。前回自分が書いた言葉にとらわれて、最近は本当にレビューを書くまではシラスを見た気がしない。3000字くらい書いても、「これだけではあまりにも少なすぎるから、それなら投稿しないほうがマシではないか」と考えたりもする。3日も書いていないと禁断症状で手が震えてくる。これがレビュー中毒というものだ。
書いているといろんなことが思い浮かんできて、自分はこんなにいろんなこと考え

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人、人、人。人しかいない映画:『ミスター・ランズベルギス』を観て

人、人、人。人しかいない映画:『ミスター・ランズベルギス』を観て

 とにかく人がたくさん出てくる。最初から最後までずっと画面が人で埋め尽くされている。
 監督はセルゲイ・ロズニツァ。ベラルーシ出身、ウクライナ育ち。ロシアがウクライナを侵攻したあと、日本でも『ドンバス』や『国葬』が立て続けに劇場公開されたが、僕は見ていなかった。したがって、僕にとってはこれが初めてのロズニツァ作品となる。
 パンフレットによれば、ロズニツァ監督はこれまでもずっと群衆に関心を持ってそ

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『観光客の哲学』から考えるレビューの極意(前編)

『観光客の哲学』から考えるレビューの極意(前編)

レビューを書いたことはありますか?

私は放送プラットフォーム「シラス」にレビューを書き始めて約2ヶ月、これまでに18本のレビューを投稿してきた。とても多いというわけではないが、書くことの快感を知らなければこんなに書いていないだろう。

みなさんにも、この快感を知ってもらいたい。そして、もっとたくさんの人にレビューを書いてほしい。いや、書かないのは損だ。なぜなら、レビューを書くことはたんに楽しいだ

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オレはキューピーちゃん

オレはキューピーちゃん

オレは腹が弱い。何かとかというとキューっときて、ピーっとくる。そんなオレは、キューピーちゃん。

たとえば電車に乗る。キューっとくる。新快速とかに乗ってると次の駅まで15分もかかるから、マジでヤバイ。

だけど次の駅はオレの目的地ではない。その次がオレが降りる駅。だから、ちょっと我慢しちゃう。そしてすぐ後悔する。車内のトイレに行け?なめるな。もう、歩くこともままならないところまで来ているのだ。その

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シラスレビューの先駆者たち

シラスレビューの先駆者たち

プロローグgeorg : 『新エロイーズ』講義でシラスレビュー界に電撃参戦したオレは、その後立て続けに投稿したいくつかの長文レビューもそれぞれ一定の反響を呼び、さらには@Hazumaマイページのイチオシでも三度(黙示的言及も含めると四度!)にわたって言及されるなどして、一躍その名を知らしめた。このままいけば、レビュー界を制覇する日も近いだろう。ひっひっひ。ちょろいちょろい。
8eor8 : 調子に

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まーでもない、らーでもないエッセー: 星野博美『華南体感』に寄せて

まーでもない、らーでもないエッセー: 星野博美『華南体感』に寄せて

 『世界は五反田から始まった』を読んで深い感銘を受け、すぐさま星野博美の他の著作を何冊かネットで購入した。一番早く届いたのは写真集だった。

星野博美との出会い 星野博美を初めて知ったのは、ゲンロンカフェのイベント「星野博美×上田洋子「すべての道は五反田に通ず──町工場から見た戦争と戦後」【『世界は五反田から始まった』刊行記念】」のシラスの放送を通じてである。厳密に言えばそれ以前にも、ゲンロンβの

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