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被災した街の復興プロジェクトを舞台に、現場を取り巻く人たちや工事につながっている人たちの日常や思いを短く綴っていきます。※完全なるフィクションです。実在の人物や組織、場所、技術な…
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#現場監督
第76話-2 語り合いたい野崎さん(AI編-3・下)
マサは、配属先であるデジタルトリプルで与えられた役割を淡々とこなしていった。
安全面で問題がある設備や作業員らの行動を抜き出してアラートを出し、そのバリエーションを高度化かつ精緻化していく。
人間が建設現場の安全性を高めて維持してきた過程と、基本的には同じだ。
それが途中から明らかに変わっていった。どこで変わったのかは分からない。だが、確実に変わっていった。
「なぜなのですか?」
「理由をもう
第76話-1 語り合いたい野崎さん(AI編-3・上)
野崎正年は、半世紀以上も前に新卒でゼネコンに就職した。現場一筋の人生と言っていいと思う。
40代半ばに管理職として支店に上がり、50代に経営陣となり現場から離れた時期はあったが、海外の金融機関の破綻に端を発した世界的な不況で売り上げが落ち込んで、責任の押し付け合いからリストラを始めた時に、即座に手を上げてゼネコンを去った。
「経営陣がいの一番にリストラの波に飲み込まれてどうするんだ」「野崎に責任
ゲンバノミライ(仮) 第3話 休日の西野所長
土曜日の夕方、西野忠夫の携帯電話が鳴った。
久しぶりに土曜休みをとって、現場から家に戻り、家族と街に出かけていた。隣にいる高校卒業を間近に控えた娘の手には、2時間悩んだ末にようやく決めた入学式用フォーマルコートが包まれた紙袋が揺らめいている。穏やかな春の日。買い物を済ませて、これから食事に向かうタイミングだった。
B工区を任せている高崎直人の名前が表示されている。
通常であれば、連絡調整アプ