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クリスチャン短歌

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キリストについて詠む短歌。しろうとが、すこしずつ直したりしながら詠んでいる。こんなジャンルがあるのかわからない。旧仮名遣いの歌なんか、今どき誰が理解してくれるのかも、わからない。
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記事一覧

秘密の部屋 / 遠雷 (短歌)

秘密の部屋 / 遠雷 (短歌)



夜ごとにひざまづくとき主はわれと
秘密の部屋で繋がりたまふ

POÄNGに顔をうずめて基督に
思ひの丈をぶちまける夜

"I am weak"
と言ふ我に、
"But thou
art strong"
と続けさせし神を
我愛す

遠雷が機銃掃射のやうに鳴り
優しい雨が窓を打つ夜

 いま、岩波文庫の宮柊二歌集を読んでる。戦場での作品で、弾に折れた草木に白い光が照っている…という歌がとても鮮

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砕け散る海 (短歌)

砕け散る海 (短歌)



たぷたぷと溢れる縁を行き来する
わたしに触れるみ手をのばして

波乗りのやうに砕けて散る海に
われを抱きて挑むキリスト

うつくしと思ほゆ、生の苦しみも
あなたがわたしの中にゐるなら

 「いつこれがわたしの人生になったというの」とよく独り呟く。その意味するところはこうである、「これはもとからキリストの人生であって、わたしの人生などではなかった。まさか1ミリだって自力で生きられるとでも思ったの

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ふれたのかふれられたのか (短歌)

ふれたのかふれられたのか (短歌)



眠られぬ夜にむかしの友だちが
神に歌ってゐる声がする

ふれたのかふれられたのか
わが魂を砂金のやうな霊が過ぎゆく

 
 日曜日もさ夜更けて、くたくたに疲れているのに眠ることができず、わたしはしずかな寝室で、ひとりアラバマの礼拝を聞いていた。

 暗やみのなかに、神から逃げるようにして人生をこんがらからせた、年上の友達の歌声がした。感じやすく、寂しそうなひとなのは、少女の頃から知っていたけれ

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苦しみながら うたう歌 (短歌)

苦しみながら うたう歌 (短歌)



主はやさし、やさしい夜に手をとりて
もっと低くへいざなひたまふ



あを波のさざ立つ海はキリストの
あらはになれるみ胸の如く

 時として、キリストの示される道は低く低くへと続いている。その道を進むには、わたしは打たれ、砕かれ、身を低く低くしなくてはいけない。まだ足りないのか、と思うこともある。

 わたしがもうぐったりと、われを手放して、じぶんで立っていることも出来ずに、み胸にしなだれか

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ほら、わが傍にキリストはゐる (短歌)

ほら、わが傍にキリストはゐる (短歌)



わが傍にゐますイヱスと
荒れ果てし庭に渡れる風のおと聞く

ひかり、落ち葉、水仙のはな
ほら、わが傍にキリストはゐる

 
 わたしの大好きな庭。庭園デザイナーの白井温紀さんの作品なのに、荒れていて、だいたいひとが居ない。この庭に会いたくて、茅ヶ崎の里山公園に行く。もはやナチュラリスティックガーデンを通り越して、荒れ果てた庭になりかけている。きょうはほんの五分だけだが、ひとりでゆっくりと腰掛け

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まつすぐな矢のやうになれ (短歌)

まつすぐな矢のやうになれ (短歌)



You are murdering me, Lord
さひなまれつつ夜につぶやく

まつすぐな矢のやうになれ
砕かれて自我を捨て去りたるあかつきに

  天のお父さまがキリストを十字架に付けたのだとしたら、神のみ手によって苦しめられていることについて、わたしは何の文句も言えない。

 「わたしは愛している者を、みな叱ったり、鍛えたりする」

 と仰有った方である。わたしは、愛されているらしい。

わたしたちの家 (短歌)

わたしたちの家 (短歌)

目を瞑りわれは夢みる基督と
庭ある家に暮らせるゆめを

その家は山のなからに建つてをり
小梢を透けてひかり降り落つ



叱られて暮れなずむ街を行き行かば
見上ぐる月に神の睦言



仕ふ者たれよと語るひとの目に
われと同じきイエス宿れる

とことはに仕ふることは為しがたく
然れど其こそ基督のみち

みうではわれを掻ひて抱かふ (短歌)

みうではわれを掻ひて抱かふ (短歌)



ナガサキとパアルハアヴア、ブチャの街、
クリミア橋と巡り廻れる

「見よや露国、北の王者」と予言せし
ひとを思ひつニュウス見る日々

つはものを物資のやうに数えたり
遠国のいくさ連綿とつづく



暗闇で語りしことをまひるまの
虚ろなそらに語れよと主は

さ夜なかにみぎ耳を掻く耳のなか
涙溜まりて池となりける

荒波に悶へる舟にうしろから
みうではわれを掻ひて抱かふ

この世界造りしひとと (短歌と証し)

この世界造りしひとと (短歌と証し)



この世界造りしひとと恋に落つ
青く染まれる海をみながら

うつくしき方の姿はまなかひの
海の鏡のなかに映れり

恋をしてをれば感覚触れしもの
すべてうつくしゆふぐれの海

 わたしにとってキリストは、宗教でなくて、恋愛なのです。

 そしてそれは、『わたしが求めるのは愛であって、生け贄ではない』(ホセア6:6) と仰った神のみこころに叶ったことなのだ、とわたしは感じます。

 わたしにはなにも

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うみをみわたすほしのひとかげ (短歌)

うみをみわたすほしのひとかげ (短歌)

《ある日、日没のあとに江ノ島の灯台に登った。まわりで恋人たちが愛を囁きあっているあいだに座って、三才の息子と海に掛かる月を眺めた。そのとき息子が突然口走った歌》

たららららーたららららららーなんだっけー
うみをみわたすほしのひとかげ

《下の句だけを口走った息子に、上の句も作って!と煩くせっついてみたが、結局適当にこんな程度にしか作ってくれなかった。下は同じときのわたしの歌》

大海の一歩手前の

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落ちれば (短歌)

落ちれば (短歌)

寝室に忍びこみたる汽笛の音
ほんとは海はすぐそこにある



猿の鳴く山のあけぼの天幕に
ははの祈れるちひさき声す



落ちれば良い、と神は言ふ
わたしと恋に落ちれば良い、と



米国で『くれいぷまあとお』と習ひをる
はな落つるなりやはらかな陽に

『くれいぷまあとお』はサルスベリ(crape myrtle)。五回くらいきいてやっと覚えた。アメリカ南部では、街中に咲いている。

シンセアな歌を (短歌と反省)

シンセアな歌を (短歌と反省)



やへむぐら古き軒端は削られて
「最大料金あり」の看板

海の辺におほきなアガベ、
ローズマリ、乳母車押すわれを慰む

ゆふがたのバス待つ列にふと聞こゆ
をとこ漏らせしかすかなる歌

この胸のすぐ上に彼のひと感じ
語れるやうにうたふ讃美歌

『子は一人?』『ひとりですよ』
と云ひながらつたなき歌を次々と産む

さいきん読んでいるもの、
『窪田空穂歌集』
『斎藤茂吉歌集』
『明石海人歌集』
『百人

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sink or swim (短歌)

sink or swim (短歌)

遠き日の戀文よめるやうにわが
短歌を読めりあくがれつつも

泣くほどに欲せることは叶わはで
汝がみこころをとつひにわれ言ふ

sink or swim われの心は戦場で
神を信じるとはさういふこと

『しかしわたしの思いではなく、あなたのみこころが成りますように』

嵐のような日々。しかもその嵐は、わたしの心のなかに吹いている。この世でいちばんの激戦地は、ひとの心のなかだという。それもキリストを愛

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I will praise you in the storm (短歌)

I will praise you in the storm (短歌)



わが短歌もとむる方がひとりをり
統べ治めたるいとしきわが主



わたくしをdesperateにするために
苦しみ来たる、それもたびたび



さよふけて目覚めしわれに
『肉の肉、骨の骨』とぞいとしき声す



われは知る、牢につながれうめくとき
さんびは鎖解き放つこと

繋がれしパウロとシラス思ひつつ
うつくし海とさんび、解放

I will praise you in the sto

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