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ジャン=ジャック・サンペの一周忌によせて
昨年(2022年)の今日(8月11日)フランスの国民的イラストレーターであり作家のジャンジャック・サンペの訃報が世界を駆け巡った。この日の「ル・モンド」紙には「Le dessinateur Jean-Jacques Sempé est mort」(漫画家ジャン=ジャック・サンペ逝く)と題されたフランシス・マルマンド(Francis Marmande 1945~)の追悼記事が掲載された。
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【書評】後藤繁雄 著 『アート戦略/コンテンポラリーアート虎の巻』コンテンポラリーアートは再接続で成り立っている
本書は、簡潔にいえばコンテンポラリーアートの解説本なのだが、読み終えた感想は「まるで哲学書」である。そのため簡単にとはいかないが、しかし丁寧に読めばコンテンポラリーアートについて理解できるよう構成されている。
著者の後藤繁雄氏は、京都造形芸術大学で教授を務めながら、アートワールドの発展のため新たなアート教育を模索しつつ、アートフェアに積極的に関わるなど、最前線で活躍しているクリエイティブディレク
Prendimi l'anima/ぼくの魂をきみに (2)
前回に引きつづき、R.ファエンツァ監督作品 "Prendimi l’anima” について。
今回は、制作に20年余りを費やすことになった経緯を探る。
そもそも、制作のきっかけは、1980年にファエンツァ監督が偶然一冊の本を手にした時だった。その本とは”Diario di una segreta simmetria, Sabina Spielrein tra Jung e Freud”,
ママン、それとも母さん?
アルベール・カミュの小説『異邦人;LÉtranger』の書き出しは有名で、日本語訳もいくつかある。私の場合、なじみが深いのは、窪田啓作訳「きょう、ママンが死んだ。(原文)Aujourd’hui, maman est morte.」である。今から半世紀も前、高校生の頃読んで以来、音としてはこれがこびりついている。
最近になってこの小説をフランス語で読む必要があって、窪田啓作以外の翻訳をふたつ読ん
映画『永遠のジャンゴ』の孤独について
ロマ、ジプシー、ツィガーン・・・ いろいろな呼び名を持つこの人たちをはじめて目の当たりにした、というか、はっきりと意識して見たのは、パリの地下鉄に乗っているときだったと思う。40代の男が奏でるバイオリンの音色にどこかものすごく惹きつけられて、演奏がつづくなか、混雑した車内をかき分けるようにしてやってきた少年の差し出す缶に、10フラン硬貨をそっと入れた。
それはいまから二十年も前の話だが、これま