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もっともアナーキーでアヴァンギャルドでヴィヴィッドな滋賀旅行

北山:楽しく深夜に中華つついてる時に申し訳ないんだけど……。

高端:どうした、どうした。

北山:なんか最近疲れてきちゃった。ライティングの仕事もちょくちょく入って来るようになったのに、始めたころみたいな「甲斐」がなくなってきたんだ。張り合いっていうかさ。初めて執筆依頼もらった時は嬉しかったな。

四ツ谷:ああ、分かる。30歳近くになって、人生における山場もなくなってきたからね。あとは変化という変化もなく、グラデーションで死に近づいていくだけなんだよ、俺たちは。

高端:いつになく暗いスタートだね。要するに、二人とも仕事しすぎなんじゃないの?

北山:そうなのかなあ。そんなにすり減ってるつもりはないんだけど。仕事もそんなにしてないし。

四ツ谷:仕事はしろよ……。まあ、気づかないうちに摩耗はしてるのかもね。精神は正直だから。

高端:解決になるか分からないけど、一回「意味のないこと」を全力でやってみたら? 我々は日々の営みのなかで、「意味」を求めすぎて疲れているのかもしれない。

四ツ谷:「意味」を求めると「成果」が問われるからね。勝ち続けない限りは、どうしても落ち込むタイミングが来てしまう。

北山:稼ぎもそれなりにあるし、みんな独身で身軽だから、無難に旅行とかするか。

高端:ウラジオストクとかどう?

北山:いまウラジオストクって行けるの?

高端:タイ経由なら行けるらしい。

四ツ谷:ああ、いいじゃん。タイ経由のウラジオストク。タイ経由するの意味ないし、暑いところ通って、寒いところ行くのが馬鹿みたいでめっちゃいい。

北山:残念ながら、それほどの休みはないんだよね。俺は関西に帰るからさ、関西おいでよ。

高端:いいけど、観光地なんて行っちゃだめだよ。意味ができちゃうもん。「観光」って意味があると、「楽しかった」か「楽しくなかったか」かが問われてしまう。なんのイメージもないところに、なんの目的もなく行かないと。

四ツ谷:じゃあ米原とかは? 新幹線で京都の一つ手前の駅。

高端:どこだよ。

北山:滋賀ね。米原か、いいなぁ。関西出身の俺でもなんのイメージもない。滋賀なんて散々行き尽くしたはずなんだけど。毎年、東海道線で通過しながら「雪すごいなぁ」って思うくらいだわ。

高端:涼しいのかな。

北山:めっちゃ暑いみたいだよ。

四ツ谷:これで「避暑」って意味も消え去った。一大観光地の京都に辿り着かず降りるのも意味がわからなくていいね。もう、米原で決定。この計画、宵越したら倒れるにきまってるから、もう新幹線取っちゃうからね。お前らがやるって言ったんだからな!

高端:なんで急にテンション上がったんだよ。引くわ……。それにしても、こいつの行動力すさまじいな。遊び相手としては最高だけど。

四ツ谷:だめだ。グリーン車しか空いてない(笑)

北山:いいねグリーン車、最高。俺たちは特段行きたくないところに、グリーン車で行くのか。めっちゃ意味がないよ。経済も回るし良いことだらけだ。いやはや素晴らしい。

高端:意味を求めない旅行だから、観光地とかは調べないようにしような。着いたところ勝負。本当に情報がないから予想もつかないけど、最悪駅前で絶望して、煙草一本吸って帰ることになる。

北山:それは疲れないか……?

四ツ谷:いいから、やってみるんだよ! よし、新幹線取った!(本当にその場で購入した四ツ谷) 作戦実行は2週間後ね。

高端:冷静に考えると、めっちゃすぐだね。

四ツ谷:こういうのは、心構えする前に実行しないと!

北山:果たして俺たちは、疲れに行っているのか、癒されに行っているのか。

四ツ谷:お前ら「意味を求めない旅行」だから楽しんじゃだめだからな! 終始真顔でいろよ!

北山:結果的に楽しいのはいいんじゃないの……?

高端:いい感じに意味が分からなくなってきたぞ。もはや、このアカウントがルポをテーマとしているのかすら怪しい。

北山:編集方針に意味を求めるのも良くないな。俺たちの滋賀旅行はもう始まってるんだから。

高端:ダメだ。コイツも変なスイッチ入った。


【「ルポ〇〇の世界」の編集部員たち】

北山:1994年生まれ。ライター。「文春オンライン」などに寄稿。なんだかんだ滋賀県が大好き。幼少期は毎週のように朽木の朝市に参加していた。署名は(円)。

四ツ谷:1996年生まれ。学術書編集者。タバコが吸えないのが辛いので飛行機が嫌い。海外旅行はもってのほか。署名は(四)。

高端:1994年生まれ。医療系メーカー勤務。ひどく酔うのでバスの修学旅行を何よりも恐れていた。今も長距離バスが苦手。署名は(高)。

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