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二人きりの車内で語られた、ストーリーになりきれない人生の断片
生まれてこのかた、居酒屋で偶然隣り合った人と盛り上がった経験がない。できればこのまま経験せずに一生を終えたいと思う。
親しくない人と言葉を交わすのは重労働だ。それが会社の飲み会であれ、親しげな店員さんとの数往復であれ、何を言うのが正解なのかよくわからず、過度にぺらぺら口が滑っては勝手に疲れてしまう。ささやかな緊張と、変な興奮がずっと続く。
だからコロナ禍になって、人から突然話しかけられる機会が
所属コミュニティにEXILEメンバーが入ってきたらどうしよう
その知らせは突然やってきた。
一応断っておくと、もぐら会は、ダンススクールではない。エッセイストの紫原明子さんが主催している、「他者と対話しながら自分で自分を見つめる」コミュニティだ。
もぐら会には、いつも穏やかで円環的な時間が流れている。コミュニティ内のスレッドに、布団の中から「起きた」と三文字書き込めば、ただちに「えらい」「とてもえらい」「とてもとてもえらい」というスタンプが返ってくる。き
書籍 「インターネットの外側で拾いあつめた言葉たち」 の販売を開始しました
編集長をつとめた本が、予約開始になりました!
「2000年から2020年まで、どんな人生を送ってきましたか?」というインタビューが詰まった一冊です。
落ち着かない日々が続きますが、確かに歩んできたこれまでの時間を、共に振り返ってみませんか。
私の書かせてもらった序章を公開しています!こんな目的で制作した本です。
「もぐら本2」の序章を公開〜この1年で失われた言葉を取り戻す試み〜
インターネ
いじわるな子は嫌いなままでいいのかも ――「となりのせきのますだくん」を読む
もし、自分の子供が小学校に入って、「となりのせきのますだくんがいじわるしてくるの」と言ったら。私はなんて答えるんだろうか。
そのくらい放っておけばいいのよ? 先生に相談してみたら? 無視すればいいじゃない? 仕返ししちゃえ?
数十年ぶりに「となりのせきのますだくん」の表紙を見た。強烈な懐かしさを覚えるとともに、どういうストーリーだっけ、と頭をひねった。
とにかく、ますだくんがいじわるだとい
男性の育休は「伝染」する――光文社新書 「家族の幸せ」の経済学 を読む
1歳から保育園に預けるなんてかわいそう。
数年前、そんなお決まりの台詞を言われたことがある。
しかし、私は何とも思わなかった。というよりも、未だにそんな台詞が生きていることに驚いた。
私の周りでは、子供を0歳や1歳で預けるのが主流だったので、どう頑張っても子供たちをかわいそうだと思えなかったのだ。
もし私が、10年前に子育てをしていたら。20年前だったら。心がチクリと痛んだのだろうか。
みんな結婚ごっこなのかもしれない ――能町みね子さん「結婚の奴」を読む
自分の中にある願望を認めて、ひとつずつ果たしてみる。こんなシンプルなことが、なかなかできない。
この一年ほど、能町みね子さんの「結婚の奴」が好きで好きで、何度も読み返している。誰かと結婚をしてみるという、静かで壮大な試みの一部始終。
そもそも、他人と恋愛をして共同生活を営むというのが、ものすごくハードルの高いことなのだ。それなのに私たちは、結婚というワードを使って、それが自然発生する出来事かの
今年はみんな頑張ったよね
今年あと2ヶ月切ったよ?やばくない? 今年やるはずだった仕事、全然終わってないんだけど。
一人で焦っていたら、いやいや今年はみんな頑張ったじゃん、それでいいよ、と夫に言われた。
いいこと言う。そうだ、今年はみんな本当に頑張った。それでいいのかもしれない。
気がつけば、5月末の緊急事態宣言の解除から、もう半年が経とうとしている。
それでもまだ、先の見えない緊張感がうっすら現在進行形で続いてい
婚活のつもりが浄水器を売りこまれた、あの夏のはなし
25歳の夏が終わるころ、私は渋谷駅からほど近い半地下の喫茶店で、同世代の男の子から高額な浄水器の説明を受けていました。
この浄水器で、内側も外側もきれいになって、本当の自信を持ちましょう。エミコさんにぜひ試してみてほしいんです。ああ、結婚というゴールに向けて邁進するはずだったのに。なぜこうなる。
突然ですがみなさん、何回くらい、高額な健康食品や浄水器の勧誘を受けたことがありますか?1回?3回?