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【エッセイ】初夏の魔法、実えんどう玄米ごはんを炊いてみて

2024年5月中旬。

よく行く里の駅で購入した、実えんどうを、玄米の炊き込みごはんにしました。

実えんどうは、えんどうが大きくなって完熟する前の状態で収穫した、柔らかい実で、グリーンピースとも言います。

古代エジプト・古代ギリシアで食用だった記録があり、世界最古の農作物の可能性があるようです(Wikipedia参照)。

実えんどうの玄米炊き込みごはんは、毎年の我が家の楽しみ。

今年は、里の駅に行かれなかった日が多くて、実えんどうを食べ損ねてしまったかと悲しく思っておりましたが、先日、里の駅に行ったらありました!

夫と大喜びです。

ですが、忙しくて、すぐに調理できなかったので、どうすればいいのか、夫がインターネットで調べたところ、鞘から出さずにポリ袋に入れて冷蔵庫で保存すれば、2〜3日は持つとのこと。

なので、夫が実えんどうを鞘ごとラップに包み、冷蔵庫に1日置きました。

そうしたら、翌日になっても、実えんどうの鞘は元気なままでした。

夫と並んで、テーブルに向かい、実えんどうの豆を鞘から取り出しました。

ぱんと張った、実えんどうの黄緑色の鞘の、長いほうの筋の部分を上にして、上から両手の親指で挟むように押したら、鞘はぱかっと開いて、中の豆が綺麗に並んだ状態で見えました。

右手で実えんどうの鞘を持って、左手の親指で鞘の内側をなぞり、簡単に豆を掻き出すことができました。

実えんどうの鞘から豆を取り出す作業の直前に、ひとつだけ、漬物がめの陰に落ちて、ラップに包み損ねた、実えんどうの鞘を発見しました。

その実えんどうの鞘は、皺々になっていましたが、中の豆は、冷蔵庫で冷やした実えんどうと、たいして変わらないように見えたので、鞘から出したばかりの豆たちと一緒に、小ぶりのステンレスボウルに入れておきました。

豆は、濃いめの黄緑色。

表面は粉っぽく、形は真ん丸で、水を吸って膨らむ前の大豆と同じくらいの大きさで揃っています。

ちょっと可愛らしい感じです。

摘んだ青草のような豆の匂いが、微かに漂ってきました。

鼻で匂いを感じながら、ステンレスボウルの中の実えんどうを眺めていたら、ふと、閃きました。

鞘から出したばかりで調理するなら、洗わなくても大丈夫ではないか?

むしろ、そのほうが、美味しいのではないか?

今までは、実えんどうを購入した日のうちに、帰宅してすぐ、鞘から出して洗っていましたが、今回は、洗わないことにしました。

今までも十分美味しかった、実えんどう玄米ごはんが、どんな味になるか、ワクワクします。

さて、実えんどう玄米ごはんの用意に取りかかります。

いつも食べる量より0.2合多めの玄米を、炊飯器の内釜の中で研ぎ、いつものように炊飯器の指示している量よりも0.5合多めの水を入れ、赤穂の天塩をひとつまみ落とし、実えんどうをざざーっとステンレスボウルから空けました。

炊飯器をセット。

楽しみです。

そして、翌朝。

何とも良い匂いのする炊飯器。

実えんどうの、ほんのり青くさくて甘い匂いと、玄米ごはんの、淡い温かみを感じさせる匂いの入り混じった、匂い。

炊飯器の蓋を開けると、ふわっと立ち上った白い湯気の向こうに、鶯色の、やや潰れた実えんどうののった玄米ごはんが、美味しそうに炊けているのが見えました。

やや水っぽく柔らかい玄米ごはん。

実えんどうから水分が出たようです。

毎年、炊いているのに、水分のことは、記憶にありませんでした。

できるだけ、実えんどうと玄米ごはんを潰さないように、手首を使って、さっくりと、実えんどう玄米ごはんをほぐし、ひっくり返し、掻き混ぜました。

それから、乳白色の美濃焼の、ごつごつした、お気に入りのお茶碗を手に取り、実えんどう玄米ごはんを、軽く山盛りに盛り付けました。

食卓に、実えんどう玄米ごはんの入った乳白色の美濃焼お茶碗と、新玉葱の味噌汁の入った小豆色のお椀と、胡瓜・西洋人参・レタスのぬか漬け盛り合わせの入った薄桃色の美濃焼中鉢と、自家製甘酒の入った象牙色の美濃焼小鉢と、かめびしさんの濃口醤油を垂らした温泉卵の入った切子硝子小鉢を、それぞれ2人分ずつ、ずらりと並べて、朝食の準備が整いました。

旬のものも揃い、なんて豪華な食卓。

美味しそう!

「いただきます」
と、私と夫。

私は、左手にお椀を持って、新玉葱の味噌汁をじっくり味わいました。

美味しい。

まさに、今の季節の味です。

それから、お椀を置いて、お茶碗に持ち替え、右手に持った、お箸で、一口、実えんどう玄米ごはんを、期待に胸を膨らませながら、口に運びました。

おぉ、これは!

続けて、もう一口、実えんどう玄米ごはんを口に運びました。

とても美味しい!

一日置いたとはいえ、ぎりぎりまで鞘に入っていた、洗わない実えんどう。

今回の、実えんどうと実えんどうから出た汁のよく染みた玄米ごはんは、子どもの頃に外食で食べたグリーンピースごはんよりも、遥かに、繊細で、複雑で、濃厚で、甘味のある味でした。

さらに、もう一口。

…しっとりとした食感…あぁ、溶けるよう。

幸せ。

その後も、私は、するすると箸を進ませました。

夫とは、
「美味しいね」
とばかり、繰り返し、言葉を交わしました。

私は、実えんどう玄米ごはんが、あまりに美味しくて、他のものと味を混ぜたくなかったことから、お行儀の悪いことは承知しつつも、他のおかずには脇目も振らずに、実えんどう玄米ごはんに集中しました。

気づけば、多めに炊いた実えんどう玄米ごはんを、あっという間に平らげてしまっていました。

夢のような時間でした。

実えんどう玄米ごはんを食べ終わった直後は、まだ、食べ足りないような感じがしましたが、おなかは、ずっしり重く、多めに炊いた実えんどう玄米ごはんを、ちゃんと全部食べてしまったのだなと実感しました。

「実えんどう玄米ごはんを食べようと言ってくれて、ありがとう」
と私は夫に言いました。

「こちらこそ、一緒に食べてくれて、ありがとう」
と夫は私に言いました。
「実えんどう玄米ごはんを炊いてくれたのは、あなただし」

「鞘ごと保存すれば持つと調べてくれて、ラップで包んでくれたのは、あなただし」
と私は夫に言いました。
「本当に美味しくて、私は幸せ」

「ありがとう」
と、私と夫は互いに言いました。

5月。

若葉が茂り、花々が咲き誇る、薫風の5月です。

初夏の魔法、実えんどう玄米ごはん。

実えんどう玄米ごはんは、5月の、気候の良い爽やかな心地良さ、心躍る日々に、さらに彩りを添えてくれました。

実えんどう玄米ごはん、ありがとう。

とても美味しかったです。

生産者さん、ありがとうございます。

ごちそうさまでした!

天野マユミ


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