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防災・減災

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記事一覧

関東大震災から百年 神社・宗教と自然災害

関東大震災から百年 神社・宗教と自然災害

稲場「今、自衛隊は、被災地に野外風呂を設置しますが、関東大震災のときは神社の敷地内にバラックや入浴施設などを建てちゃったわけでせう。やはりかういふ歴史を、もう一度いま百年といふ節目の時に振り返る必要があります。百年前にかういふことができてゐて、今の日本はどうですかと。一部の人だけではなくて国民全体がさういふ認識を持って、災害復興時には国が予算をつけて、地域コミュニティの安全・安心のために取り組む気

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宗教施設と自治体の災害時協力に関する国の見解

宗教施設と自治体の災害時協力に関する国の見解

寺院および神社など宗教施設と自治体の災害時協力の輪がひろがっています。宗教団体・施設と自治体の災害時協定、災害時協力に関して、以下、令和4年4月15日「文部科学委員会」における末松文部科学大臣および小寺大臣政務官の発言を紹介します。

末松国務大臣@令和4年4月15日「文部科学委員会」

「地方公共団体の中には、宗教団体と災害協定を締結するなどして、宗教施設を指定避難所として活用しているところもあ

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宗教施設が自治体と災害協定を結ぶ際の留意

宗教施設が自治体と災害協定を結ぶ際の留意

遺体の一時安置所における枕経等の読経 愛知県岡崎市が市仏教会と「災害時における被災者支援活動の協力に関する協定」を締結しています。災害時に必要が生じたときに、岡崎市が市仏教会に要請する協力事項のひとつに「遺体の一時安置所における枕経等の読経」があります。驚かれる人も多いのではないでしょうか。
 協力要請の内容の第一は「被災者及び帰宅困難者を一時的に受け入れることを目的とした、災害時協力避難場所とし

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市民が助かる減災

市民が助かる減災

 今年は、市民が助かる減災のために、行政に加えて社会福祉協議会、自治会などの地縁団体、地域資源としての宗教施設、企業、学校、防災士、宗教者など多様な方々と連携して、未来共生災害救援マップ(災救マップ)の社会実装をより一層進めます。多様性によるイノベーションです。
 未来の共生は、地域住民が主体で、地域住民のためのもので、行政の仕事の効率化、合理化のためではありません。避難所を開設運営し、時々刻々と

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島根県における宗教施設の災害時協力

島根県における宗教施設の災害時協力

 2021年12月9日、島根県安来市と安来市仏教会が「災害時等における一時退避施設としての使用に関する協定書」を締結しました。

 今回の協定では、安来市仏教会に加盟する36か所の寺を一時退避施設として1週間程度の利用(たとえば、本堂、トイレ、駐車場など利用)を想定しています。

 以下のように全国でも珍しいとの報道がありますが、寺院および神社など宗教施設と行政の災害時協力の輪がひろがっています。

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宗教vs(?)防災×自治体×科学技術~新たな災害時協力の提案~

宗教vs(?)防災×自治体×科学技術~新たな災害時協力の提案~

9月27日(月)20時から、「オンライン市役所防災対策課」のzoomオンラインで話します。

タイトル
「宗教vs(?)防災×自治体×科学技術〜新たな災害時協力の提案〜」

参加無料ですが、以下で申し込みが必要です。
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地域防災だよりNo.1793(拡散希望)
○毎週月曜日20時からは「防災関係人口」全員集合、オンライン市役所

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大雨特別警報、安全確保を

大雨特別警報、安全確保を

 佐賀、長崎、福岡、広島などに線状降水帯が発生し、各地に「大雨特別警報」。連日の雨により土砂災害もすでに発生。九州、中国、四国などを中心に、少なくとも水曜日まで4、5日間降り続きます。線状降水帯も発生します。自然の力の前にお手上げ状態ですが、メディアでも繰り返し呼びかけがあるように、とにかく最大級の警戒、命を守る行動を。

画像は以下をもとに。
https://www.windy.com/

洪水がすべてを奪った

洪水がすべてを奪った

大きな物音がすると、心が引き裂かれるようで耐えられません。自信をすっかり失ってしまったようです。独りになるのが怖いのです。嵐も怖い。悪夢を見ます。以前の自分とは別人のようです……。

 これは、『そこにすべてがあった  バッファロー・クリーク洪水と集合的トラウマの社会学』に出てくる被災者の言葉だ(同書, p.152)。

 本書は社会学の災害研究において古典とも言える1976年に刊行されたEver

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「住みたかとよね。景色が変わっても ここが安心するとよ」

「住みたかとよね。景色が変わっても ここが安心するとよ」

「球磨川に生きる 熊本 神瀬 豪雨1年の記録」
(NHK「目撃!にっぽん)

「こうのせ再生委員会」代表の岩崎哲秀さん

さしより 住むところば (何より住むところを早く)
これが委員会の総意。

球磨村 松谷浩一村長

時間ははっきり いつぐらいまでということは言えませんけれど、確実に住めるような場所に今後なっていくのは間違いこざいません

 全長115キロの球磨川の氾濫。被害は流域全体に及び、

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帰宅困難者施設の確保

帰宅困難者施設の確保

 大阪市の帰宅困難者対策が後手に回っている。行き場のない人を広く受け入れる一時滞在施設は市内に確保されていない。

大都市を襲った3年前の大阪北部地震では、交通機関が乱れ帰宅できない人が街にあふれた。こうした教訓から、各自治体は帰宅困難者で行き場のない人が一時的に滞在できる施設の確保に力を入れている。だがその「成果」は都市間で差があるようだ。(朝日新聞、2021年6月18日)

 東日本大震災では

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破局論の中に希望を見出す

破局論の中に希望を見出す

 武力衝突、クーデーター、紛争、戦争、テロ、疫病、自然災害、気候変動、公害、原発事故・・・。世の中には危険が溢れている。それらは、人間、自然、技術によってもたらされる。

恐れを知らない動物は、逃げることもできず、生存競争においてたちまちに敗北するだろう。( ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』岩波文庫、p.191)

戦争は多分起こりそうだとも、と同時に、起こりそうにもないとみえた。それは、あの宿

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利他のひろがり

利他のひろがり

 私の母はもうこの世にはいませんが、利他を考えるきっかけは母でした。20世紀末からの人文学・社会科学の研究は、利他性は社会生活によって学ぶことができるということを示しています。利他を論じた書籍にアプローチの違いはありますが、社会をよくしたいという思いは共通して存在します。日本社会の中にもです。とりわけ若い世代の中にそのような思いがあることを頼もしく感じています。

 今、格差社会、分断社会にあって

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東日本大震災の「人間復興」 共に「すごす関わり」に転換へ

東日本大震災の「人間復興」 共に「すごす関わり」に転換へ

 未曽有の大災害と呼ばれた巨大地震、津波、原発事故から10年たった。ある人は家を失い、大切な人を失い、仕事を奪われた。避難所、仮設住宅、災害公営住宅、再建した家と住まう場を転々とした。この間の暮らしはどうであったか。

(本稿は以下に加筆しました)

 1923(大正12)年9月1日に発生した関東大震災への対応として、大規模な帝都復興を唱えた後藤新平に対し、大正デモクラシーを代表する経済学者の福田

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