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島根県における宗教施設の災害時協力

 2021年12月9日、島根県安来市と安来市仏教会が「災害時等における一時退避施設としての使用に関する協定書」を締結しました。

 今回の協定では、安来市仏教会に加盟する36か所の寺を一時退避施設として1週間程度の利用(たとえば、本堂、トイレ、駐車場など利用)を想定しています。

 以下のように全国でも珍しいとの報道がありますが、寺院および神社など宗教施設と行政の災害時協力の輪がひろがっています。素晴らしい取り組みです。

 実は、島根県では、益田市が市内50ほどの宗教施設と協定締結、その時期も2007年、2018年などです。浜田市も50ほどの宗教施設を一時避難所指定、その中には創価学会浜田文化会館や天理教浜田分教会も含まれます。江津市は10ほどの寺社を避難所指定しています。隠岐郡知夫村は10を超える寺社を緊急避難場所として指定しています。海士町は7つの寺社を緊急避難場所として指定しています。
 また、美郷町は、浸水の可能性が低い10ほどの寺社を、命を守るのめの避難先「つからん場所」としています。隠岐の島町には、自主防災組織や自治会等が決定した「一時避難所」として20を超える寺社があります。津和野町は、町ではなく、施設管理者が地域のために開設する一時避難場所として20近い寺社と協力関係があります。

 私ども大阪大学人間科学研究科(稲場・川端)が実施した2019・2020年調査では、寺社等宗教施設と災害協定を締結している自治体は121でした。協定は締結していないが協力関係がある自治体は208ありました。詳細は以下にあります。

 上記の調査から、さらに行政と宗教施設の災害時協力の輪は広がっています。全国で避難所が不足しているという実態があります。その対応として、自治体が寺社教会などの宗教施設と災害時協定を結ぶという動きが加速化しています。2020年7月17日には、長野市の7寺院が市と災害時の避難所活用の協定を締結しています。協定を締結した安養寺の服部淳一住職は、2019年の台風19号で被災した檀家から、当時被災時に避難所に入れなかったと聞き、「高齢の家族がいると大変。身近な話として受け取っていた」と話しています(信濃毎日新聞、2020年7月18日)。
 高知市も市内北部地域にある弘法寺および土佐厳島神社と災害時協定を締結しました。南部の海岸から離れていて浸水リスクも低い両施設を、感染症拡大防止の観点から避難者1人当たりのスペースは従来の2倍にあたる4平方メートルとして避難所活用するとしています(日本経済新聞、2020年8月19日)。また、愛知県瀬戸市は、分散避難のために市内14寺院に協力を要請し、「風水害時における施設使用等に関する防災協定」を2020年8月20日に締結しています。

 仏教会としての協定としては、以前から、兵庫県多可町と多可郡仏教会、釜石市と釜石仏教会、北海道三笠市と市仏教会、勝浦市仏教連合会などの協定があります。2021年3月17日、愛知県岡崎市は、岡崎市仏教会と避難所活用も含めた「災害時における被災者支援活動の協力に関する協定」を締結しました。
 ちなみに、島根県と島根県仏教会は、2021年11月25日に協定を締結しています。

 安来市は、災害が発生した場合、市が避難所を開設し、使用できる寺を市のホームページなどで周知するとのことですが、地域住民へのより迅速な情報共有のために「災救マップ」を活用して頂きたいです。


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