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若い頃

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若い頃の体験談
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桜ひとひら

桜ひとひら


 桜咲くこの季節、今年は地元の数か所を見て回ることができた。昔も今も桜の姿形は変わらない。しかし以前は桜の木全体を見て「美しい」と感じていたが、今は小さな花を見て「可愛い」と思うようにもなった。太く隆々とした幹を持つ長寿の木になればなるほどそのコントラストはいっそう際立ってみえる。

 「木を見て森を見ず」とは「物事の細部に気を取られて全体を見失ってしまうこと」を意味する有名な諺だが、逆に

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「地球の歩き方」の使い方

「地球の歩き方」の使い方

 今月初め、(株)Gakken社から『地球の歩き方・北九州市版』が発売された。1979年創刊以来すでに百数十タイトルを超える大ヒットシリーズだが、国内の市版としては全国初となる。地元住人にとっては興味津々。早速入手した。

あとがきには次のように書かれてある。

 まさにその通り。2年半前に北九州に引越してきた愚生にとっても、想像のナナメ上を行く驚きの日々がずっと続いている。

***

 『地球

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インドの道端で出会った熱きハート

インドの道端で出会った熱きハート

(文5300字)

 タージマハールやカジュラホといった魅力溢れる建築物。ガンジス川流域の独特な風習。シタールに代表される古典音楽のエキゾチックな響き。そして魅惑のインド料理。数えきれないほどの魅力に溢れるインドは今年中国を抜き、人口世界一となった。混沌の大地インドと呼ばれる背景には、経済発展や文化的華やかさの影にある、激しい貧富の差、差別、健康問題などを抱え、日本とはまた異なった社会問題が根深く

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救命犬

救命犬

(文4,200字)

 かれこれ40年ほど前のこと、アジア諸国を巡る一人旅の途中、タイのプーケット島で一匹のとても勇敢なワンコと出会った思い出がある。

アジアを旅するバックパッカーの拠点バンコクのカオサンストリートをぶらぶら歩いていると、旅行代理店の店先に掲げた一枚の写真にふと目が止まった。写っていたのは南国リゾート特有の「真っ白な砂浜とヤシの木と青い海」。
それまでの数か月間、荒涼たるインドネ

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中空の竹

中空の竹

(文3400字 写真40枚)

竹の里

 北九州市小倉南区合馬は日本有数のタケノコの産地である。見渡す限り竹林の山が緩やかな斜面に続く。先日訪れたときには麓の田んぼのあぜ道に彼岸花が一斉に咲き始めた。

開花に合わせるように稲刈りも始まっていた。米の収量は前年に比べると全国的にやや減少という予想らしい。ここ合馬では先日の台風襲来でも強風に倒れることなく、黄色い稲穂がきれいに揃って収穫の時を待って

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青春の丸型郵便ポスト

青春の丸型郵便ポスト

 昔よく見かけた円柱状の郵便ポスト。そのほとんどが四角いポストに取って代わったが、今でも時々現役で使われているのを見かけることがある。初登場は明治41年。中にはおそらく70年以上使われているものもあるはずだ。
1970年に製造中止。1972年時点では日本全国で約55,000本が稼働していたが、2013年3月31日現在では約5,600本が稼働するにとどまるとのこと。
今ではもっと減ったに違いない。

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波音の向こう

波音の向こう

(文3000字 写真30枚)

 久しぶりに水族館へ出かけた。関門海峡を隔てた対岸の山口県下関市には市営水族館「海峡館」がある。門司港からは渡船で5分ほどで着く。
だいぶ前に和歌山で飼育されているイルカには触れたことがある。ひんやりとした弾力ある分厚い表皮。どこを触ってもただじっとしている受容性。そして無垢な遊び心。ときどき懐かしく思い出す。水族館に行きたくなるのはその記憶があるからだ。

しかし

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ヤマアジサイとサムライブルー

ヤマアジサイとサムライブルー

 北九州市のほぼ中央部高塔山の頂上にアジサイ園がある。その北斜面の日光があまり差し込まない森の一角に、数種類の日本原産ヤマアジサイが、西洋アジサイよりも一足早く咲き始めていた。

形はガクアジサイに似ているが、ずっと小ぶりで、森の木陰でひっそりと咲く姿はか弱く繊細な植物に見える。しかしそう感じるのは大きくどっしりした西洋アジサイやガクアジサイの方が見慣れているからで、じっと見つめているうちに、その

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心の薔薇

心の薔薇

(文3000字 写真60枚)2022年5月投稿

 北九州市立響灘緑地グリーンパークで、「春のバラフェア」が開催されている。320種2,500株という数は、全国の有名なバラ園と比べると少ない方だろう。しかしこのバラ園を管理するスタッフの方々の気合いは凄い。朝9時の開園時には園内の手入れがすべて終わり準備万端。次から次へと目の前に現れる個性豊かな美しい薔薇に見惚れて、時間があっという間に過ぎてゆく。

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渡りの道標

渡りの道標

旅客機の飛行高度8,000〜12,000メートルから、外の青い空と白い雲だけの世界を眺めている時にふと思った。毎年、日本列島と大陸との間を行き交う渡り鳥たちは、どれくらいの高度で飛んでゆくのだろうかと。

調べると低高度を飛ぶ鳥で500メートル、それから種類ごとに段階的に上がって、鶴はなんと1万メートル上空を飛行するとのこと。国内線の巡航高度とほぼ同じだ。旅客機のパイロットによる目撃事例もあ

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野に咲く

野に咲く

 中学一年の時、習字の自由課題として「雑草」という二文字を選んだ。
なぜそんな言葉を選んだのかはよく覚えていないが、書き終えた半紙を見て、高齢の先生が、
「ほう、雑草かあ。雑草のごとく逞しく生きる。いいねえ。」
と言って、ニコニコしていたのをよく覚えている。

字を褒めてくれたのか、それともその二文字を見て、ただ喜んでいただけなのかは定かでないが、そうか、雑草のように逞しく生きるということはそんな

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続  花揺れる黄昏

続 花揺れる黄昏

(2021年11月6日投稿)

 9月11日付でnoteに投稿した「花揺れる黄昏」では、1980年代のビルマ(現ミャンマー)での旅の記憶と現在の情勢に関する事柄を結び付けたものを記事にしたが、今回は同じ旅で撮影したその他の写真と、その若干の説明を加えたものを投稿したい。 これらもフィルムカメラで撮った写真で、40年近く押し入れに無造作に保管していたためにだいぶ劣化が目立つ。

 依然として混迷が

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続  湖畔にて

続 湖畔にて

 8月7日に投稿した「湖畔にて」は、主に1980年代初期にバリ島で過ごした数日間の想いを写真と微かな記憶を頼りに記事にした。
今回は同じ旅で撮った別の写真と、いくつか写真にまつわる補足的な文を投稿したい。これらの写真もフィルムカメラで撮ったもので、40年近く無造作に保管していたため劣化が酷く、かなり変色が進んでいる。また前回の記事で使った数枚のカットも説明を補うために再投稿している。

前回の記事

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