マガジンのカバー画像

240
運営しているクリエイター

2023年10月の記事一覧

居場所

どこへ行っても
居場所がなかった
自分をさし出せば
後悔することばかりで
いつか自分を
心の奥にしまうようになった
それでも少しでも
自分を出せば
叩かれることばかりで
自分はだめなんだ
おろかなんだと

誰かに認めてほしかった
疑われるでも
貶されるでも
おだてられるでもない
ただありのままのわたしを

居場所なんてなかった
ひとりでよかった
みんなそうなんだと
言われてる気がしてた

音が溶け

もっとみる

言葉の命

言葉の意味とはなんだろう
言葉の命とはなんだろう
言葉にはないきもちを
言葉にしようとする
この試みはなんだろう
ありふれた言葉だっていいじゃないか
けれど言葉に新たな意味を見出したときの
言葉に新たな命を吹き込んだときの
この感覚はなんなのか
言葉が言葉自体
新たな意味を見出すとき
わたしのなかに
あなたのなかに
見えない
新しい命が
生まれるのだ
その命は
いつかの命とつながっているようで

もっとみる

名前

過去の風
吹いて
ひさしぶりに
あなたの名前
つぶやいた
その名に含まれた
波の色を
夜空の色を
思い出して
ああ、わたしはあなたを
あなたを、愛したわたしを
いつだったか
いつだったか手放した
何度くりかえし呼んだかわからないその名を
好きだった
その名が意味するものを
すべて

今だって
あなたに会いたい
会ってどうするでもないけれど
すこし照れて
名前を呼んで、笑い合って
いま好きなひとがい

もっとみる

明日なにを着ようか
あなたと会う前の
わたしのささやかな
たのしみ
この前セールで買ったばかりの
キャミワンピースをおろそうか
でもそろそろ寒いから
お気に入りのニットワンピもいいかも
それともあなたにもらった
同じ趣味のパーカーも着たい
あなたに喜んでもらえる服を着ること
それがわたしのささやかな
よろこび
服を着ること
お化粧をすること
おめかしをすることは
あなたに会うための
聖なる儀式

もっとみる

未来

言葉を失ったわたしは
言葉を信じないと決めた
この目で
あなたの瞳を見て
ひとつの瞬きすら
見逃さない
この耳で
言葉ではなく
あなたの優しい声を聴いて
あなたの考えや生き方は
言葉ではなく
いちばん優しい
音楽だった

あなたは
つきたくなかった嘘を隠し
泣いたのだ
怖がるわたしを
抱きしめたあとで

未来とは
誰かに奪われた言葉
未来とは
見えない朧げな
約束
未来とは
作るものではなく
信じ

もっとみる

記憶

生まれたとき
生きていた
わたしは
大人になるために
だんだん
生きることを忘れて
だから大人に
なりたくなかった
友達になりたかった
けどなれなくて
それでも支えてくれる人がいた
学校は
つまらなかった
生きることは
苦しかった
勉強も
大人になることも
生きることとは
ちがった
あのとき
あなたと光る波を見たとき
大人になって
はじめて生きた
自分がなんだかを
ふたたびみつけた
それ以来、大切

もっとみる

風船

自分に自信がないのは
自分を知らないということ
知るのは
嫌いなところじゃないのに
悪いところじゃないのに

自分のいいところを
自分だけの色を知って
それを自分の地面にする
そうじゃないと
違う誰かに憧れて
そうなれない自分が嫌いになって
さらに誰かに憧れて

幼い頃から
傷ついて
傷つけられて
大人になっても
生きていれば
避けられないこと
そのたびにわたしは
自分を否定するの?
立ち止まるの

もっとみる

眠りと虚無

どんなにしあわせな日の夜でも
眠るのがこわい
ベッドに横になると
誰もいないとおもうから
さみしいなんて
思ってない
こどくは好きなのに
それでも夜眠るときは
人のぬくもりの中で眠りたい
眠るときの
完全なこどく
救いのないこどく
それが毎夜やってくる
わたしはこわいのだ
なにも考えず眠ろうとすると
ひとりで生きることの
死ぬことの
虚無が現実となるから
この生の裏側
だから考え続けようとして

もっとみる

ちいさなわたし

ちいさなこころでいい
大きな他人に怯んでも
ちいさなままで
動いたり
動かなかったり
居場所なんてなくていい
自分のこころのなかに
ちいさなわたしを
見つけられたら
それだけでいい
ちいさなわがままをみつけたら
それだけ譲らなければいい
大きな顔なんてしなくていい
ずっと
ちいさいままでいい
猫に
守ってもらって
おかえしに
守りたい
通じ合えているかどうか
人じゃなくていい
わたしのせかい
しあ

もっとみる

とべ

生きることに
疑問をもったあたしは
この世界が見えて
とてもつらい
けれど
光は
小さくて
いつも
小さくて
あたしは
この世界に
あぐらをかいた
あたしは
愛に
油断した
よろこびに
溺れた
あたしは
弱い
そして
卑怯だ
あたしの中の
はりつめた
線の上のあたしが
いつも
あたしを睨みつける
ぜんぶあたしだ
あたしを否定するのも
あたしを励ますのも
あたしに期待するのも
誰でもない
すべてあた

もっとみる

考えれば

こどものころ
こころにえがいた
うみを
世界を
うしなわずに
見るために
あのかおりを
あの音楽を
あのとき見ていた
なにかを

生きること
闘うこと
風に訊くこと
ちがうと言うこと

誰かが信じることに
従うとか従わないとか
そんな話にのらないこと
わたしが信じることを
守るために

世の中に従いたいのは
人の性?
自分が我慢していること
人に強要するのは
道連れ?

社会に属さなければ
生きて

もっとみる

わたしはひとりで

わたしは
ひとりで
あなたに
であって
ひとりで
あなたを好きだった
あなたは
たったひとり
わたしを

うまれたときから
ひとりだった
ぶつりてきには
ちがくても
もうながいこと
ひとりでだれかといて
もうながいこと
ひとりでゆめをみた

ゆめは
いつのまにか
だれかをつれてきて
そのだれかが
わたしを
ひとりにしなかった
ひとりでなくなったわたしは

迷子になって
あなたをわすれた
あなたが 

もっとみる

瞳にうつる

いまうつくしいとおもうものを
十年後も二十年後も
うつくしいと思えるように
わたしはわたしの
こころを
まもりたい

あのとき
うつくしかったものは
おもいでに汚されて
あの輝きは
ほんとうだったのに

いまを生きるわたしは
うしなわれたわたしで
あなたもきっと
あのとき
うしなわれたのでしょう

痛みと傷は
癒えることなく
うつくしさを抉り取って
腐敗した
わたしは
それでもいま
うつくしい夢を

もっとみる

言葉が言葉を羽ばたくとき
言葉は言葉ならず
ただの離陸点となる
この手をはなれ
羽ばたく言葉の意味するところは
わたしにもわからない空
空が心でつながっていて
言葉のおかげで
それをおもいだす
空を目に映しても
おもいだせない空だけを

2023.10.07