未来

言葉を失ったわたしは
言葉を信じないと決めた
この目で
あなたの瞳を見て
ひとつの瞬きすら
見逃さない
この耳で
言葉ではなく
あなたの優しい声を聴いて
あなたの考えや生き方は
言葉ではなく
いちばん優しい
音楽だった

あなたは
つきたくなかった嘘を隠し
泣いたのだ
怖がるわたしを
抱きしめたあとで

未来とは
誰かに奪われた言葉
未来とは
見えない朧げな
約束
未来とは
作るものではなく
信じるもの
そして
信じることが困難なもの
それでも

流れ星が光ったとき
秋の風が吹いたとき
疲れたとき
しあわせなとき
季節がめぐるたびに
あなたは
わたしを信じている
そう
思う

わたしも
あなたを信じる
なにがあっても
あなたとわたし
それぞれの未来は
隣にいる人がちがっても

あなたがあのとき
わたしにくれたのは
言葉ではなく
宝石でもなく
はるか昔に約束した

でした

2023.10.16

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