ノエル

評論という名の創作に勤しむしがない社会人

ノエル

評論という名の創作に勤しむしがない社会人

記事一覧

固定された記事

藤井風 まつり 素直で穏やかな「世界への挑戦」

藤井風のセカンドアルバム「LOVE ALL SERVE ALL」がリリースされてはや半年ほどたちました。個人的には2022年最も聴いたアルバムになりそうな予感もしているのですが改めて…

ノエル
1年前
21

真夜中の

本屋で装画が目に留まってついつい手に取ってしまう。 本好きならそんな経験を何度かしたことがあるはず。 御多分に洩れずそんな調子で今作を手に取りました。 読み終え…

ノエル
8か月前
2

黒い家

好きな小説家を3人上げろと言われればすぐにその名前を言わざるを得ない。 貴志祐介。 昨今様々な芸術領域で起こっているジャンルレス化をより早く展開させており、貴志…

ノエル
8か月前
6

ゴールデンスランバー

伊坂幸太郎さん。遅ればせながら初めて読みました。 ビートルズフリークなら振り向いてしまうタイトルに本屋に行けば1番目立つところに一冊は置いてある伊坂さんの本。 …

ノエル
9か月前
3

音楽

三島由紀夫をたいして読んだことのない私だがこのシンプルかつ強烈なタイトルは放って置けなかった。 三島由紀夫の中でもかなりの異色作らしく、かなり難解。心理学的用語…

ノエル
9か月前
4

さんかく

衣食住のうち二つを掴まれたらそれは浮気なのでしょうか。 内容をちらっと見てすぐに惹かれてしまいました。 こういった男女間のリアルであってリアルでない世界観は千早…

ノエル
10か月前
2

ストレートが来ると思ったら床に穴が空いた

灼熱が息をするようになってきたこの頃。 もっぱら外に出ずに読書ばかりしていると夏真っ盛りという事も忘れてしまいます。 そんな三連休に読んだのは 井上夢人 「ラバ…

ノエル
10か月前
2

3回読み直した本

私事ですが週末に四国へ旅行に行ってきました。 旅行といえばどの本を持って行こうか。まるで小学生の遠足みたいな気持ちになれる数少ない機会の一つでもあります。 今回…

ノエル
10か月前
11

最近読んだ本

めっきり暑くなり外に出るのが憚られる季節がやってきました。 そんな夏は勝手に読書の夏だと思っています。 凪良ゆうさんの「流浪の月」。皿に乗った三つのアイスクリー…

ノエル
11か月前
7

海辺のカフカ 読んでみて

社会人になりまとまった時間が徐々に取れなくなる中ようやく読みました。 村上春樹著「海辺のカフカ」 村上春樹の作品はたまに読みたくなるのですが「ノルウェーの森」か…

ノエル
11か月前
2

本を開けば千早あかね

千早あかねさん。つい最近新作「しろがねの葉」を刊行され、今をときめく作家の1人というのは疑いようがないでしょう。そんな千早さんの作品は一回紹介するほどハマってい…

ノエル
11か月前

文字という名の仮想現実

いつものようにKindleをするするチェックしていると何度か目にしたことのあるタイトルが... 個人的にはミステリーは10回に1回くらいのペースでしか読みません。かつゴリゴ…

ノエル
1年前
3

ゆりかごに揺られて

カートヴォネガットの作品にハマって3冊目に選びました。「猫のゆりかご」 ディストピア小説が好きな私にはあまりに魅力的なあらすじですぐに手に取りました。 ぶっちゃけ…

ノエル
1年前
3

人生最高のエンタメ小説

決してタイトル詐欺ではありません笑 あくまで主観でしかありませんがSF小説を50冊以上は読んだ私のトップということだけ伝えさせてください。 『プロジェクトヘイルメア…

ノエル
1年前
15

人間関係を表現するのに1番向くのは小説

千早茜さんの「神様の暇つぶし」を読みました。彼女の小説と出会ったのは「男ともだち」が初めてでした。 その時から彼女の独特の世界観、特に型にとらわれない人対人をリ…

ノエル
1年前
3

低俗主人

なあ、おれの主人はおれのことをなんだと思ってるんだ?毎日のように散歩には連れてってくれる。甘ったるい飯も食わしてくれる。それに文句を言うつもりはこれっぽっちもな…

ノエル
1年前
2
藤井風 まつり 素直で穏やかな「世界への挑戦」

藤井風 まつり 素直で穏やかな「世界への挑戦」

藤井風のセカンドアルバム「LOVE ALL SERVE ALL」がリリースされてはや半年ほどたちました。個人的には2022年最も聴いたアルバムになりそうな予感もしているのですが改めてアルバム内の曲について語りたいと思います。
今回語るのはアルバムのリードシングルとして先行配信された「まつり」です。
ジャズやクラシック、歌謡曲、R&Bなど様々なジャンルを「藤井風」としか言えないジャンルに昇華するポッ

もっとみる
真夜中の

真夜中の

本屋で装画が目に留まってついつい手に取ってしまう。

本好きならそんな経験を何度かしたことがあるはず。

御多分に洩れずそんな調子で今作を手に取りました。

読み終えた感想としては、、、

なんか自分に合わない。言ってしまえばそこまで心躍る読書体験ではないと感じてしまいました。

しかしこの本が不思議なのは最後まで読み切らせる力。何かに取り憑かれているかのようにページをめくってしまう。心の中に天使

もっとみる
黒い家

黒い家

好きな小説家を3人上げろと言われればすぐにその名前を言わざるを得ない。

貴志祐介。

昨今様々な芸術領域で起こっているジャンルレス化をより早く展開させており、貴志祐介としか言いようのない世界観が魅力。

個人的にホラーが少し苦手ということもあり「黒い家」は少し後回しにしている感はありました。

しかし一度本をひらけば流石の一言。あれよあれよと読む手は止まらず、休日を丸々使って読み切ってしまいまし

もっとみる
ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

伊坂幸太郎さん。遅ればせながら初めて読みました。

ビートルズフリークなら振り向いてしまうタイトルに本屋に行けば1番目立つところに一冊は置いてある伊坂さんの本。

読まないのがおかしいと思える状況に何度か遭遇しようやく手に取りました。

読み終わって思ったことはアクション映画を見終わったかのようなハラハラ感と小説の繊細な表現が混在していてもうすごい。でした。

それほどまでにエンタメ小説と叙情性の

もっとみる
音楽

音楽

三島由紀夫をたいして読んだことのない私だがこのシンプルかつ強烈なタイトルは放って置けなかった。

三島由紀夫の中でもかなりの異色作らしく、かなり難解。心理学的用語や古典の引用、それらを理解できなくとも人間心理の本質に理詰めで近づく構成は新鮮でした。

精神的な病にも明るくなってきた近年ですが60年代半ばにここまで偏ったテーマで深くまで書き連ねる姿勢はさすが三島由紀夫でしょうか。

中心軸として性と

もっとみる

さんかく

衣食住のうち二つを掴まれたらそれは浮気なのでしょうか。

内容をちらっと見てすぐに惹かれてしまいました。

こういった男女間のリアルであってリアルでない世界観は千早さんの小説では鉄板ですよね。

けど毎回二番煎じにとどまらないのが千早さんのすごいところだと思います。

もしかするとそれらの関係性は本質的に同じなのかもしれません。

ただ表面を齧っただけの読者が勝手に枠に放り込む。そんなやわな工程に

もっとみる
ストレートが来ると思ったら床に穴が空いた

ストレートが来ると思ったら床に穴が空いた

灼熱が息をするようになってきたこの頃。

もっぱら外に出ずに読書ばかりしていると夏真っ盛りという事も忘れてしまいます。

そんな三連休に読んだのは

井上夢人 「ラバーソウル」

ピンとくるかたも多いのではないでしょうか。「ノルウェーの森」も収録されているビートルズのアルバムタイトル。
本屋でまんまとタイトルにつられました笑

最近少しづつミステリーに手を出していふ私は井上夢人氏の作品を初めて手に

もっとみる
3回読み直した本

3回読み直した本

私事ですが週末に四国へ旅行に行ってきました。

旅行といえばどの本を持って行こうか。まるで小学生の遠足みたいな気持ちになれる数少ない機会の一つでもあります。

今回私が選んだのは名作中の名作、村上春樹氏の

「ノルウェーの森」です。

私が本を読むきっかけになった大きな意味を持つ本でもあります。

人間の皮膚の下を描くような生々しさ、それでいて触れるか触れないかソワソワするような感覚。小説でしか得

もっとみる
最近読んだ本

最近読んだ本

めっきり暑くなり外に出るのが憚られる季節がやってきました。

そんな夏は勝手に読書の夏だと思っています。

凪良ゆうさんの「流浪の月」。皿に乗った三つのアイスクリームとテーブルに落ちている二つと皿の上の一つのイチゴ。

皿に乗ることを諦めたのか、それともスプーンを使うこと自体諦めたのか何かしらの諦念が感じられる妙に艶やかなカバー写真。

更紗と文の関係性は二人にとっては全く違うもので、それは触れる

もっとみる
海辺のカフカ 読んでみて

海辺のカフカ 読んでみて

社会人になりまとまった時間が徐々に取れなくなる中ようやく読みました。

村上春樹著「海辺のカフカ」

村上春樹の作品はたまに読みたくなるのですが「ノルウェーの森」か「スプートニクの恋人」を繰り返し読んでいました。

村上春樹の作品にはよく生と死が対極的に置かれていることが多いと思っていました。

しかし「海辺のカフカ」では現実かそうでないかの境目が非常に曖昧な世界観が全開。

その曖昧さはおそらく

もっとみる
本を開けば千早あかね

本を開けば千早あかね

千早あかねさん。つい最近新作「しろがねの葉」を刊行され、今をときめく作家の1人というのは疑いようがないでしょう。そんな千早さんの作品は一回紹介するほどハマっていました。

しかし。しかしデビュー作を読んでいないことに気づきました。そんなわけで書店に直行。ありました。

魚神 (うおがみ)

目を引く表紙のデザインは少し刺々しく、生々しさが匂う。読み終わると他の作品にも通ずる部分が多くありました。で

もっとみる
文字という名の仮想現実

文字という名の仮想現実

いつものようにKindleをするするチェックしていると何度か目にしたことのあるタイトルが...

個人的にはミステリーは10回に1回くらいのペースでしか読みません。かつゴリゴリ文系の私は理系ミステリー代表の森博嗣さんを何度かスルーしていました。
そして期間限定なのかは分かりませんがKindle Unlimitedの文字が!これは読むしかないと思い読んでみました。

結果、1日で読んでしまいました、

もっとみる
ゆりかごに揺られて

ゆりかごに揺られて

カートヴォネガットの作品にハマって3冊目に選びました。「猫のゆりかご」
ディストピア小説が好きな私にはあまりに魅力的なあらすじですぐに手に取りました。

ぶっちゃけましょう。想像とは違いました...笑
予想を裏切られた!というような爽快感でらなく、むしろ「んんん?ほええ、なるほど」のような奇想天外な感情にさせてくれました。(語彙力)

日本に落とされた原子爆弾、これについての本を語り手が執筆しよう

もっとみる
人生最高のエンタメ小説

人生最高のエンタメ小説

決してタイトル詐欺ではありません笑

あくまで主観でしかありませんがSF小説を50冊以上は読んだ私のトップということだけ伝えさせてください。

『プロジェクトヘイルメアリー』は、作家アンディ・ウィアーによるSFエンタメ小説です。

物語は主人公が記憶喪失で目覚め、名前や自分がどこにいるのか、過去やことの経緯を理解するために奮闘するところから始まります。そして彼は宇宙船に乗っており、そこで人類の存亡

もっとみる

人間関係を表現するのに1番向くのは小説

千早茜さんの「神様の暇つぶし」を読みました。彼女の小説と出会ったのは「男ともだち」が初めてでした。

その時から彼女の独特の世界観、特に型にとらわれない人対人をリアルにかつどこか遠い世界のように描く世界観に惹かれてました。

しかし「神様の暇つぶし」を読むと更なる衝撃が私を襲いました。

人が共通しているのは誰もが私は皆と違うところがある。と思っているところ。そんな一見辛辣なテーマを漂わせる小説で

もっとみる
低俗主人

低俗主人

なあ、おれの主人はおれのことをなんだと思ってるんだ?毎日のように散歩には連れてってくれる。甘ったるい飯も食わしてくれる。それに文句を言うつもりはこれっぽっちもない。ただ自然からあまりにも隔絶されたおれは歳を食っただけの無能上司のように世界の片隅にも寄与することができない。まあ、周りの奴らみたいに下卑た扱いで消費されるよりはいくらかマシかもしれない。ただ人間としてはそんな下卑た意思すら持ち合わせない

もっとみる