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2022年4月の記事一覧

タロッティ

GT750に付けた
タロッティのチャンバーが
暖まったなら
夜の街に出かけよう
喧噪と卑猥に満ちた
欲望溢れるあの場所へ
揺籃に閉じ籠って
震え壊れちまう前に

瞬間

最高を求める男
絶頂を彷徨う女
何れも唯
落ちて逝くだけと
知りながら
それを求め続け
枯れ果てて消えた
傷痕すら残せずに

煙草を捨てる

猥雑な街で
僕は吸いかけの
煙草を捨てる
いつものよに
雑居ビルの隙間から
飛び出した鼠が
消しかけた火を眺め
笑いながら消えた
僕を見上げて
眠れない街は今日も
誰かを飲み込んで
回り続ける
骨すら残さずに

最後の猫

争いの果てに
生き残った
最後の猫は
故郷に建つ
教会へ向かう
全ての罪を清算して
浸礼を受ける為に
罰から解放されても
彼は殺し続ける
定めは変わらないから

灰と血のギャンブラー

ギャンブラー達は
今日も酒を煽り
その安い命を賭け
時に死へと向かう
落下する渡り鳥みたいに
モラルを失くした
狂人達の宴は更ける
平等な線を引きながら

小さな胸を

夜に吸い込まれて
彷徨う都会は
出口の無い迷路のよに
私達を閉じ込め
せせら笑っていた
如何か小さな胸を
傷付けられ嘆かないでと
貴方は言い燃え盛る
瞳で過去を捨て去った
あて無き未来へ向かう為

虚実

賢い人が作った
儲け話に乗る老人
貯め込んだ財産を
全て預け安心して眠る
泥に見える未来を
想像する事は無く
破産が訪れる日まで
幸せで居られるだろう
それが虚実だとしても
疑う事など出来ずに

ジャスミンの水割り

労働の正当な対価を
会社に求めない
飼いやすい忠犬
安月給で使われ
軋む體を引き摺り
仕事終わりに酒場で
ジャスミンの水割りを
1杯頼んで紛らわし
絶望の明日へと向かう
命が枯れ落ちるまで

パントマイマー

いくら模倣しても
貴方を越えられないと
言い残して去る
天才パントマイマー
君が思い描くような
才能など無いと
寂しげに呟き
独りで舞うコーチ
重ならない線と線が
縺れず地に落ちた

折れた右腕

夜の繁華街で
雪駄を履いた修羅に
喧嘩を売る弱い者
自分は臆病ではないと
嘯きながら生きた
付けが回り出す
一瞬で地面へ転がされ
鋭い痛みと共に叫ぶ
他人の不幸が大好きな
通行人の餌食にされても
何が起きたかすら分からず
折れた右腕を押さえ
病院へ運ばれる
言い訳すら出来ずに

レモンズ

何も起きない日々が
幸せだと知らずに
彼らは大人に為る
誰かに怯えながら
キャバレーで
レモンズが歌う
ロックンロールが
街外れに流れて
僕は少しだけ泣いた
生きる事は悲しいから

夢から落ちた夢

信じられない
哀しみばかりが
僕の街に降り注ぐ
君は知るのだろうか
絶大な暴力の前に
人は立ち竦むだけだと
今日も誰かを憎み
誰かに呪われながら
知らない人達は
呪詛の声を上げ
何も出来ずに死んで逝く
夢から落ちた夢の中で

13回目の箱舟

奇跡をこの目に
写したい老人は
箱舟を作っては壊し
13回目に成功した
彼はそのまま
宇宙を彷徨うだろう
柵を越え欲望の儘に

蝶と花

季節は貴方を
大人へと変えて
私から奪い去る
何時までも
蝶と花ではいられず
私は自殺を決めた
歯牙に掛からずとも