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小説

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#散文

詩『はみ出す青』

詩『はみ出す青』



もう終わるらしい夏休みの
空を見ることなく
部屋の中
ひとりぼっちで吸う息に
とくとくと輝いた愛のなさ
めぐる命の空き箱は
何かを思わすことも無い
さおさおさお
竹の音がどこからか聞こえるの
さおさおさお
また聞こえる
それは猫の悲鳴をかき消すために

マスクから開放され
入ってくるのは青の音
侵食していくその色は
まぶたの裏に焼き付いた

コピー集『花がある生活を』

コピー集『花がある生活を』

コピーライトの授業で提出した課題を投稿します!
お題『コロナ禍に花を売るためのコピー』

最後の写真以外は、大学の写真学科の友人の作品になります。

良き写真をありがとう。いい写真撮ってはるので良かったら!

最後のこの作品は、授業中に優秀作として選んでいただきました。「これはびっくりした……」と褒められたのが幸せでした。
初めの2作も先生に気に入って頂けたのでめっちゃ嬉しかった……。

散文 電車は人になる

散文 電車は人になる

無性に泣き出してしまいそうな私は空を飛ぶ蛇のような電車に揺られる。
どこかの何かの赤い光を雨はかき消そうとする。
こんなに寂しい気持ちになるものなんだと、弱い自分を再発見する。
こんなに弱いのか、こんなに弱いのなんてダメだよ、と私は鞭打つことすら出来ない。
会えないことに涙が出そうになるなんて知らなかった。それほどに私はあの人のことが好きなのか。
それとも、ただの依存か。
愛情を注いでくれる人だか

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レトリックの練習① 比喩にまみれて

レトリックの練習① 比喩にまみれて

電車は人を吐くガマガエルと成り果てた。真昼の猫の腹の中で眠りにつきそうな長髪の君は、スマホを眺める。来るはずのない電車を知らせる電光掲示板は僕の瞬きよりも早く泥水を啜るペガサスのように点滅していた。
こんなことになるのなら、もっとご飯を食べておけばよかった。靴底が早く布団に連れてけと叫ぶけれど、僕は無視をし続ける。爪は光ることなく、血管を潰す。
何かを食べたいと虚無に包まれた学生のようなカバンの中

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散文 下手な私なんて

散文 下手な私なんて

私は動揺している。日々の暮らしの疲れが取れない。心臓より上の胸が痛い。苦しい。思考が暗くなっているようで、何も考えれていない。
命は一瞬で尽きていく。
なのに、私は無駄な時間を過ごしている。
既読がつかないのも、既読が着いてるのに返事が来ないのも両方とも怖くて仕方がない。そんなこと平気な人間だったはずなのに、私はどうしてもどうしても、何か悪いことが起こっているのでは、と考えてしまうんだ。
悪いこと

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描写の練習② 散文だけの世界

描写の練習② 散文だけの世界

【大教室にて】
頭が落ちた人がいる。きっとあれは人もどき。
動物に「もどき」と名づけるのは、人間だけでは無いはず。ヒトにももどきがいるだろあ。ヒトっぽいけど、何かが違うもの。この教室には何人のヒトもどきがいるのだろう。

【ガイダンスにて】
エアコンの音が響く。学生の邪念が走り出す。一人一人の脳裏にあるものがひとつになり映像となる。それがスクリーンに投影されて、目視できるようになった。

【風呂場

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散文 毎日の頭痛

散文 毎日の頭痛

空が白いのは、誰かが牛乳をこぼしたから。
誰かにあの話を聞きたいけど、僕のもとにはそんな人はいない。
心が誰かを求めている。それは僕が一人ぼっちだからかな。

こんなに世界は広いのに、僕はこんなにも一人だ、なんてありきたりな言葉を思い浮かべては、感傷に浸っている自分がいる。
明日になれば、クラスメイトと笑って話す。
当然のように、ただただその時間が楽しいふりをして。
あの時間は、普通に楽しい。楽し

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短文 今日も空の下

短文 今日も空の下

この空の下、あいつはどこかに転がっている。ああ、こんな空なら横たわってるのも幸せかもな。
抱きしめるべき人間を抱きしめることができずにいた自分を責めれなかった。
自分に出来ることは限りなく少なくて、笑うだけでそっと許されるような世界ならどれだけ良かったか、と思う毎日だ。
でも、彼女の痛みを少しでも取り除きたいと思うのも本心なんだ。
馬鹿げたことを言ってるってわかっている。
切ないな。
空はこんなに

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散文 秋の存在は春の冒涜

散文 秋の存在は春の冒涜

あの日のことはもう覚えていない。何日だったか、何月だったのか、季節はきっと、夏じゃなかったはず。なんの服を着ていたっけな。
何も覚えていない。
何を覚えているべきだったかもわからない。
でも、何かが欠如した気がする。
その欠損は人生の中心では無いはずだ。ないはず、私は何も欠けていない。
欠けているのだとしたら、それも含めて私なのだ。
なんて、どうでもいい。
そんなわけない。
なんの関係もない。

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散文 らいせはぱんつを

散文 らいせはぱんつを

桜が咲いたらしい。
水筒は落下した。
サメのぬいぐるみはお風呂を泳ぐ。
吊られたライオンはロングヘアの虚無を見た。
猫なで声を上げたあの子が海の底を歩いた時、金髪のあいつは布団を蹴った。
塩を被った。
ワインは馬鹿になる。
バカならバカなりに、爪をはぐ。
ずっと昔はいつかの未来となり得るの。
才能があったのに定期券はここから逃げた。
スマホケースは山の中心。
彼が崩れたばっかりに、蟻は上手になっち

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散文 私の場所はここじゃない

散文 私の場所はここじゃない

頭がぼーっとする。
頭が回らない。
動けない。

私の頭はもう眠りについている。
なのに、私の理性は起きようと、私の生活はまだ寝てはならぬと、強制してる。

頭があるという実感がある。
それはなんとなく悪いことのように思う。
脳があることは自覚してはいけないのではないか。
目が閉じそうで、視界が歪む。
目の上に頭がある。脳が重くなり瞼を閉じさせようとする。
脈を感じる。
心臓を感じる。
ドクドクと

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散文 区間準急は乗りたくなる

散文 区間準急は乗りたくなる

1本だけ咲いた桜の木をしっかり見届けたつもりだった。しかし、僕の記憶の中にはまだ咲かない蕾をつけただけの桜の木の方がより深く刻まれていた。
瓦礫が沢山積まれていた。たぶん冷蔵庫とかエアコンとかの類。人の暮らしを支えていたはずの彼らは、人知れず朽ちていく。あの道を1本でたところは毎日通っているのに、僕はそれらの存在を知ることは無かった。
僕は何も知らないのだと思い知らされる。この街並みを見なれて、た

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散文 枕元のボタンはいじらない

散文 枕元のボタンはいじらない

虚無を抱く。
1人になったベッドの中で、私はシャワーの音を聞く。
ただ湿り気を感じる。ぼんやりとした視界の中で、私はなんでここにいるのだろうという思考が巡る。
愛した人ではない。
布団の中に入ってきたその人は私を抱く。私もそれに合わせて擦り寄るけど、心は静かに冷えていく。
私は好きでもない人と抱き合えてしまう人間だった。
そのことがもう当たり前だったが、たまに寂しくなってしまう。
誰かに抱きしめて

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散文 なのはなはうそをつく

散文 なのはなはうそをつく

消えゆく私は赤の中。
明後日を泳いだあの子はもうずっと後ろに。
10年後に落ちる葉っぱの鋸歯を見た。
彼は振り返ることなく、落としたものになる。
揺れて揺れて巻き上がる。
夏の日に見た道路の蜃気楼なんてあいつの人生を語るよりずっとできっこない。
猫になる。
指が白く伸びていく。
黒にはなれずにいる影はもっと先を進む。
またあの日を懺悔する。
消えてなくなる。
消えたら存在がわかるもの。
大事な人な

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