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散文 枕元のボタンはいじらない
虚無を抱く。
1人になったベッドの中で、私はシャワーの音を聞く。
ただ湿り気を感じる。ぼんやりとした視界の中で、私はなんでここにいるのだろうという思考が巡る。
愛した人ではない。
布団の中に入ってきたその人は私を抱く。私もそれに合わせて擦り寄るけど、心は静かに冷えていく。
私は好きでもない人と抱き合えてしまう人間だった。
そのことがもう当たり前だったが、たまに寂しくなってしまう。
誰かに抱きしめて欲しくて、見ていて欲しくて、一瞬でいいから、といつの間にかそんな人になってしまった。
もう戻ることは出来ない。
好きな人などいない。
人間なんて、人間なんて、もう。
自分を愛することも出来ない。
もう、私たちは落ちていくだけだ。
5時間後には他人。それまでの時間ぐらい楽しんだ振りをしていたい。
何も埋まらない。
ただ埋まらない穴から一瞬だけ目を背けることが出来る時間を。
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