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散文 なのはなはうそをつく

消えゆく私は赤の中。
明後日を泳いだあの子はもうずっと後ろに。
10年後に落ちる葉っぱの鋸歯を見た。
彼は振り返ることなく、落としたものになる。
揺れて揺れて巻き上がる。
夏の日に見た道路の蜃気楼なんてあいつの人生を語るよりずっとできっこない。
猫になる。
指が白く伸びていく。
黒にはなれずにいる影はもっと先を進む。
またあの日を懺悔する。
消えてなくなる。
消えたら存在がわかるもの。
大事な人などどこにもいない。
寂れたと寂しいは同じかんじ。
みかんが腐ると君になる。君が溶けると海は綺麗になって、深海のそこまで見えてしまう。
居心地の悪いリュウグウノツカイは僕を襲う。
ピンクの顔したクマを彼らは気に入らない。
消毒液は道に転がる。
転がり続けて歩き出す。
線路が行く手を阻むけど関係はない。
川をたどって、砂の蓄積を感じる。
ここから先へはいけない。
落ちるしかない。
モグラはミミズを怖がることを知らない。
少年は言った、昨日が来ると。
馬鹿げたフォークソングを歌いながら、街をゆくサラリーマンは一昨年の夢を見る。
未来も過去も今も全てが同時に起きてこそ世界は圧縮されて、あんぐり。
鳥と亀が同じ咆哮を見た。
おばあさんはまた眠る。
あんなところで踊る犬は、5秒後鷹と仲良くなる。
地は私を包む。
空気は消えたがる。
走り去った少女の後をつけるのは黄色の魚。
フラフラ浮かぶ世界は僕のメガネの中で寝転んだ。

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