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リサコのために

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構想20年。 ひとりの少女が宇宙の仕組みを紐解く物語。
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長編小説「リサコのために」人物&目次

長編小説「リサコのために」人物&目次

長編小説の「リサコのために」がなんのこっちゃ?となってきたので、登場人物と目次をここにまとめることにした。
これから読んでくれる人は参考にしてね。

多少ネタバレになってしまうかもしれない。

◎登場人物・山本 理沙子(リサコ)…この物語の主人公。
物語の開始時の年齢:16歳
ごく一般的な高校に通う少女だったが、父親がぺんぺん草を食べて溶けるなど、いきなり非現実的な世界にぶっこまれる。
牢獄のよう

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[あとがき] リサコのために

[あとがき] リサコのために

あれは2020年。
日本がコロナに翻弄され始めたころ。
自宅にいても何か発信できないだろうか…と私は考えていました。

ライブ活動も壊滅的にできなくなってしまい、何かしら表現したり作ったりしていないと死ぬタイプの人間である私は、このまま私は老いていくだけなのか?? と急に不安になったりして。

そして、パソコンの奥深く、書いてはなおし、書いてはなおしして、まるで先に進まない物語があることも気になっ

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[小説] リサコのために|068|十四、再構築 (2) 最終回

[小説] リサコのために|068|十四、再構築 (2) 最終回

▼第一話はこちら

← [小説] リサコのために067|十四、再構築 (1)

 どんなに巨大であっても良介は良介であってリサコの最も大切な人であることに変わりはなかった。

 リサコはほっとして立ち上がった。立ち上がるとリサコの顔が良介にも見えたようだった。

 彼は優しく微笑むと、両手に力を込めてさらに亀裂を広げ、ゆっくりとリサコの方へと腕を伸ばした。
 そして彼女を捕まえた。

 リサコは良

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[小説] リサコのために|067|十四、再構築 (1)

[小説] リサコのために|067|十四、再構築 (1)

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← [小説] リサコのために066|十三、再戦 (6)

十四、再構築 (1)「斬った! 私、斬ったよ!」

 リサコは興奮してオブシウス達の方を振り返った。

 そこには誰もいなかった。

 真っ暗闇。

 ただそこには暗闇があった。

「オブシウス?」

 リサコは恐る恐る彼女の名を呼んだ。
 返事はなかった。

 リサコの声は空間に吸収されて詰まったようにまるで響きのない

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[小説] リサコのために|066|十三、再戦 (6)

[小説] リサコのために|066|十三、再戦 (6)

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← [小説] リサコのために065|十三、再戦 (5)

リサコぉぉぉおおおおぉ!!!!!
 がバカでかい声で言った。その波動でリサコやオブシウスたちは後ろの方まですっ飛んでしまった。

 刀がリサコの手から離れて遠くの方へと転がった。
 もう少しで自分を切ってしまうところだった。

「わかった、行くよ!そっちに行くから、お願い、お願い黙って!」

 リサコは念のため、これまで

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[小説] リサコのために|065|十三、再戦 (5)

[小説] リサコのために|065|十三、再戦 (5)

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← [小説] リサコのために064|十三、再戦 (4)

 リサコたちはしばらく暗闇の中を引きずられていた。衣服が擦れるような音だけが聞こえて来る。
 抱えてる刀を失わないようにしっかりと胸に抱いた。

「リサコ? 大丈夫?」

 オブシウスの声がした。

「大丈夫…みんないるの?」

 全員の声がして、良介以外のメンバーが同じように引きずられてきたことがわかった。
 独りでな

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[小説] リサコのために|064|十三、再戦 (4)

[小説] リサコのために|064|十三、再戦 (4)

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← [小説] リサコのために063|十三、再戦 (3)

 これには全員が度肝を抜かれてあんぐりと口をあけて見上げるしかなかった。
 さすがの良介も驚いている様子だった。本当にここに何があるのか解っていなかったようだ。

 良介が不安そうな表情でリサコの方を見た。
 リサコは眉間にシワを寄せた表情で小さく首を振った。

 …私にも解らない…。

「今までで一番遅かったよね」

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[小説] リサコのために|063|十三、再戦 (3)

[小説] リサコのために|063|十三、再戦 (3)

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← [小説] リサコのために062|十三、再戦 (2)

 良介たちが建物内に出現した謎のエリアの偵察に向かってから、リサコは気が気でなく、廊下への出入口の前で行ったり来たりを繰り返していた。
 そんなリサコの様子を気遣ってか、オブシウスがそっと近くに寄って来た。

 そして二人は自然と会話を始めた。

「良介は優しくしてくれる?」

「うん。あの子は小さいころから優しい子だっ

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[小説] リサコのために|062|十三、再戦 (2)

[小説] リサコのために|062|十三、再戦 (2)

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← [小説] リサコのために061|十三、再戦 (1)

 オブシウスたちはソファーのある休憩スペースで仮眠を取っていた。
 リサコがヤギを斬ったあたりからここの時間が連続しているのであれば、彼らは何日もろくに休めていないはずだ。

 リサコは彼らの邪魔にならないように近くの椅子にそっと腰を下ろすと、目を閉じてへと意識を持って行った。

 《表層の店》では主要な人格たちが集まっ

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[小説] リサコのために|061|十三、再戦 (1)

[小説] リサコのために|061|十三、再戦 (1)

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← [小説] リサコのために060|十二、進化 (4)

十三、再戦「何あれ?」

「わからない…」

 良介にもこの事態は予想外だったようだ。

 良介は廊下を歩いて行くと、床におかれたラジカセを拾い上げ、そして音を止めた。
 安っぽいその音が止まると、建物内は静寂につつまれた。

「誰かがここの状況を改ざんしたみたいだけど、俺にはその形跡を追えない。MIHOも追えないみたい

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[小説] リサコのために|060|十二、進化 (4)

[小説] リサコのために|060|十二、進化 (4)

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← [小説] リサコのために|059|十二、進化 (3)

「ところで、りょうちゃん。あなた目的地への道は分かってるのよね?」

 ディーツーが良介の腕に自分の腕を絡ませながら言った。
 ディーツーの視線にあわせて「表層の店」のステージにも彼の見ているものが映し出される。

 ここは…なんというか、かなり治安の悪そうな場所だった。
 道端で所在なく立っている人、うずくまっている

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[小説] リサコのために|059|十二、進化 (3)

[小説] リサコのために|059|十二、進化 (3)

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← [小説] リサコのために|058|十二、進化 (2)

 オブシウスたちを助けに行く…。

 その響きはリサコにとって現実から遠く離れて聞こえた。
 オブシウスたちと過ごした時間は今ではまるで夢のような、前世の記憶のようなそんな感じがしているのだ。

 リサコの背後にいる人格たちにもこの記憶を共有しているが、彼らはこれをリサコの夢ととらえていた。
 あっちにいるときはリサコ

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[小説] リサコのために|058|十二、進化 (2)

[小説] リサコのために|058|十二、進化 (2)

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← [小説] リサコのために|057|十二、進化 (1)

 “MIHO” との会合を終え、インターネットカフェから帰宅すると、ドアの隙間に手紙が挟まっていた。
 良介はそれを取ると、中を見ずにポケットに入れた。

 まるでそれがそこにあることを事前に知っていたかのような動作だった。

「誰からなの? 見なくていいの?」

 今どきドアに手紙を挟むなんてよっぽど重要な用事なのだ

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[小説] リサコのために|057|十二、進化 (1)

[小説] リサコのために|057|十二、進化 (1)

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← [小説] リサコのために|056|十一、展開 (5)

十二、進化 久々に見る双子のおじさんの姿にリサコは動転していた。

 またここに来ると頭で解っていても、本当はあまり実感が持てていなかったのだ。
 おじさんたちを目の前にして、体感的には十数年経っているあの日に、一瞬にして戻ってしまったかのような錯覚に陥った。

「ちょっと話があるんだけど、いいかな」

 リサコがあわ

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