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C18覚悟を決めて…食べる
さて、今夜のお米の仕上がりはどうだろうとコッフェルの蓋をとると、なんとつやつやした仕上がりのマッシュルームご飯が湯気の向こうに見えました。別名、西洋マツタケご飯です。匂いはまったく、おいしそうです。最後の確認は、舌で確かめるしかありません。その美味しそうなご飯の香りに負けて、まずスプーンでご飯を味見しました。久しぶりのご飯の味にテンションが上がります。勢いでマッシュルームのようなキノコもすくって、
もっとみるC17 こだわりのマツタケ風炊き込みご飯
コンロにかけて火をつけます。お米を炊くのには、持参してきたコッフェルが非常に役に立ちます。このアルミ製のコッフェルは、ふた付きでしかも簡易的にロックができるので、お米を炊くときにはそれなりに圧力がかかり、いい具合にお米が炊けるのです。日本にいるときも、このようなシチュエーションがいつかあるだろうと思って、かなりお米を炊く練習はしてきました。その成果を試すときが来ました。この旅の中でお湯を沸かしたり
もっとみるC16 道すがらナゾのキノコを獲る
ドラッグストアでは少し馴染み客になり、住んでいる家のちょっと個性のある煮炊き用のコンロのクセもわかってきました。農場への近道も発見しました。大きなリンゴの木の林を突っ切り、ブラックチェリーの見事な大木がズラリと並ぶ林を通ると、あっという間にドラッグストアの前に出ます。そこから家までは5分もかかりません。しかも思いもよらぬ収穫もありました。リンゴの林を抜けるときにふと木の根元を見ると何かしら白いもの
もっとみるC15リンゴの木と野うさぎと戦闘機
二日目の朝、農場への道を歩きながら出会う人々と元気に挨拶を交わし、朝礼も無事に終えて、ボスに連れられ再びリンゴの赤ちゃんたちのお世話をするために昨日と同じリンゴ畑へと向かいました。今日は万全の準備です。水筒には紅茶、ミネラルウォーターはペットボトルに入れ、お昼ご飯用のサンドイッチとティータイム用のレモンクリームがサンドされているクッキーを一袋用意しました。案の定、ボスは私を畑に落とすなり、さっさと
もっとみるC14ドラッグストア初入店
農場の一日が終わり、帰り道に少し寄り道をしました。目的地は、例のドラッグストアです。当時、日本にはまだ多くなかったドラッグストアに入るのは初めてで、少し緊張していました。店の中は何でも屋のような雰囲気で、郵便局も兼ねているようでした。ちょっと小太りで親しみやすそうなおばちゃんが出てきました。すでにヨーロッパで4ヶ月過ごしているので、挨拶には慣れています。目で会釈をしました。
お目当てのクッキーと
C13本場イギリスで初めてのティーブレイク
ふと腕時計を見ると、10時を過ぎていました。せっかくイギリスにいるのだから、10時のお茶、いわゆるティーブレイクを楽しもうと思いました。とはいえ、紅茶もクッキーも持っていません。今日は水とお昼ご飯用のサンドイッチだけです。まあいい、格好だけでも楽しもうと思い、ベースキャンプに戻り、昼ご飯用のサンドイッチの一部をちぎって腰を下ろし、水を紅茶代わりに飲みながらなんちゃってティーブレイクをしました。昨日
もっとみるC12 一人ぼっちと孤独は違う
翌日は朝のミーティング後にボスは私をトラックタイプのミニクーパーで昨日とは違った現場に私を連れていきました。そこは、果樹の幼木を植えてある明るい農地でした。
荷台に積んである道具を下ろすと、太い針金の部品をいくつか手に取り、幼木のほうに歩いていきました。私も彼の後に続き、どんな作業になるのか少々不安ではありましたが、静かに彼が説明を始めるのを見守りました。「イキオ、これは、まだ小さなリンゴの苗木
C11 旅は人を育てる…かも
農場の事務所に到着すると、すでに10人ほどの農夫が集まっていました。腹を決めて先に「グッドモーニング」と明るく挨拶しました。すると農夫の人たちもちゃんと答えてくれました。よし、まずはつかみはOKかも?と少し安心しました。しばらくするとボスが事務所からスケジュールが書いてあるらしい紙を脇に挟んで出てきました。皆はボスを中心になんとなく半円状に囲みました。まずはボスが挨拶をして、今日の作業予定をそれぞ
もっとみるC08 辿りついた小さな村:フェーバーシェム
翌日の移動はイギリス鉄道で数駅だけ進むことでした。ゆっくり朝食をとり、準備を整えます。所持品が増えたわけではないのに、バックパックは出発時よりもぐっと重くなったように感じます。きっと自分の旅の経験や思い出を詰め込んでいるのでしょう。
農場があるフェーバーシェムというイングランドのいかにも田舎の駅といった風情の小さな駅に降り立ちました。イギリスのローカル線は、ハリーポッターの映画でも見たように、車
C07農場で働く前のゆったり日:カンタベリー
カンタベリーでの2日目は、快晴とまではいかないものの、穏やかな朝でした。宿泊先のB&B(ベッド&ブレックファスト)でイギリス式の朝食を楽しみ、紅茶を飲みながらゆっくりと過ごしました。今晩も同じ場所に泊まるため、カンタベリー大寺院を訪ねることにしました。寺院は今まで見た教会と比べても独特な様式で、大きな四角い塔が左右に立ち、尖塔がそれを取り囲んでいます。その構造は、教会の権威を示すかのようで、イギリ
もっとみるC06ロンドン南部の古都
日が暮れる前に、カンタベリーへ向けて列車に乗りました。高校の世界史の授業で学んだ、イギリス国教会の重要な教会がある場所です。その教会は、かつてチャールズ6世が自分の好きな女性と再婚するために、カトリックの離婚禁止の規則を避けるために新しい宗派を設立した場所であり、その結果、周囲は大いに混乱し、ローマ法王庁との間で戦争に至ったほどです。
カンタベリーに到着し、街の中心にそびえ立つ尖塔群を横目に見なが
C05イギリスで働くための「いろはのい」
ブライトンには外国の学生のために、必要経費を払えば労働許可証を発行してくれる公的な機関があります。今までいくつかの国ですでにバイトの経験済みでしたが、労働許可証がないため、すべて違法労働でした。バレれば、逮捕、日本への強制送還にもなりかねないヤミの労働でした。なかなかヨーロッパで働くにはハードルがたかかったのですが、旅の途中で出会ったある人から「イギリスでは夏休み期間中、アルバイトをする学生のため
もっとみるC04イギリスへの一歩は、新しい始まり
翌朝、船は個人的な思い出をたくさん乗せ、なんとかサザンプトンの港に到着しました。天気は快晴で、「Tomorrow is always fresh with no mistakes in it.」という『赤毛のアン』の言葉が心に響きました。昨夜の悪夢はすっかり消え去り、新たな一日が始まります。
サザンプトンの駅へと歩いて移動していると、なんと昨夜の紳士がきちんとスーツを着こなし、近づいてきました。
C03お金と心の値段の天秤掛け
たしかに、私の手元にはわずか6000円ほどしかありませんでしたが、貧乏旅行者という弱みにつけ込んで、身体を売れと言うなんて、どうかしています!本当に「卑怯者!」と叫んでやるべきだったのですが、驚くべきことに私は思わず「How much?」と返してしまいました。ええ!本当に私は大切な自分をお金で売るのでしょうか?と内心混乱していると、彼は「600ポンドでどう?」と答えました。えっと、1ポンド500円
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