The 個性的な旅

世界を巡る個人旅行を始めておよそ半世紀。その中で見た景色や人との関わり、感じた事や考え…

The 個性的な旅

世界を巡る個人旅行を始めておよそ半世紀。その中で見た景色や人との関わり、感じた事や考えた事、そして自分らしく生きる目的や自分らしい時間を過ごす術(すべ)を記します。また仏教の「お経」の中に見られる哲学に心を惹かれています。

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  • 摩訶般若波羅蜜多心経とは

    ・摩訶般若波羅蜜多心経 般若心経の正式題名です。そのまま訳すと「彼岸へ渡るための偉大な智慧のいちばんたいせつなお経」となります。 摩訶とは、「偉大」という意味。般若は「智慧」仏教でいう智慧とは、いま自分が何をすればいいのか、相手に何をしてあげればいいのか、そうしたことを正しく考える力のことです。いつでも正しい考えさえ持てれば、人は困難に打ち勝つことができ、幸福が訪れます。智慧は、仏さまから私たちヘのプレゼントです。 波羅蜜多は「彼岸へ渡る」彼岸は、悩みも苦しみもない向こう岸、あの世のことです、。 心経の心とは、心臟の心、中心の心。いちばんたいせつなお経だから「心経」なのです。

最近の記事

バックパッカーinヨーロッパ(旅は素敵なチャンス)

旅とは、人生における最も魅力的な機会の一つです。太陽が降り注ぐ光は全世界で平等に分けられ、夜空の月も、地球上のどこからでも眺めることができます。しかし、この同じ世界を異なる地点から眺めることで、生活の場、感情の色彩、物の見え方が全く異なるという事実に気づかされるのが、旅の素晴らしい点です。それはまるで、自分自身の中に潜む未知の部分への冒険、すなわちインナートリップとも言えるでしょう。それはまた、外の世界への旅行と同義であると考えています。中には、「深く考えずに、イタリアで軽

    • C35 過激なフルーツ収穫

      今日からは、ブラックカーラントというブルーベリーのような果実の収穫作業を始めることになります。初めて組む農夫の人たちとの共同作業です。地元のアルバイト生は既にどこかの現場に直接出向いているようで、あの騒々しさはありません。ジェームズは、朝礼終了時にのっそりと現れました。ボスはため息をつきながら再度今日の作業について彼に説明していました。 農作業自体は、身振り手振りで通じますし、基本的には繰り返し作業なのでポイントさえ押さえればどうにかなることは今までの経験で分かっています。

      • C40日本に帰る…かな?英国の章(了)

        イギリスでの生活が安定し始めると、驚いたことに日本でアルバイトをしていたころの生活とほとんど変わらないことに気付きました。違うのは住んでいる場所がイギリスで、話している言葉が英語というだけです。生活の範囲はせいぜい数十キロ、立ち寄るお店も数軒程度です。馴染みの店とその周りの人々とのコミュニケーションは、特に劇的に変化するわけではありません。 旅とは、さすらうことであり、移動することです。しかし、一度定住してしまうと、そこから生活が始まります。人生とは旅だという言葉が、今では

        • C39三笠の山に出でし月かも

          結局、ジェームズは2週間も持たずにスペインに帰ると言い出しました。彼は最後までこの農場には馴染めず、相当ボスにも怒られていたようですが、いじめというよりも、彼の自発性のなさが一番の原因に思えます。なんと去る日に、私の部屋に来て「イキオは、ボクのベストフレンドだった。」と思ってもみない言葉を言いました。「俺は何もしていないよ。」と本当のことを素直に言うと「実はイキオ、ボクは君の思い出として、君が使っていたポンチョのレインコートを持って帰りたい。」と本音を吐きました。要は私が持っ

        バックパッカーinヨーロッパ(旅は素敵なチャンス)

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        • 摩訶般若波羅蜜多心経とは
          2本

        記事

          C38 価値ある労働者とは?

          小さな業務改善ではありますが、収穫改善の効果は高いはずです。喜びにひたる暇もなく、次のトレーを準備しなければなりません。トーマスがシートを渡し、高く積んである収穫用のトレーにシートを敷き、収穫口から果実を適当に取り分けて、次のトレーに平らに敷きます。振り返ると、まだセットしてあるトレーは一杯になっていなかったので、もう一枚トーマスからシートを取ってもらい、もう一段下のトレーにもビニールを敷きました。これで、次の2回分のトレーの準備が完了しました。 手元の作業に先が見えてくる

          C38 価値ある労働者とは?

          C37 困るから考える

          トーマス主任に向かって、「ちょっとしたアイディアがあるんだけれど、試してみてもいいですか?」と頼みました。トーマスは手を休めることなく、「何だって?どんなアイディアだ?」と尋ねました。「みんながシートを敷くのに苦労しているようなので、少しでも楽になる方法があるかもしれないと思いまして。」と答えると、「オーケー、イキオ。やってみろ。」と言ってくれました。「わかりました。ビニールシートを一枚取って私に渡してください。」と頼むと、トーマスはすぐにビニールシートを渡してくれました。

          C37 困るから考える

          C36 「見る」と「やる」では大違い

          トーマス主任は「ジェームズは、トラクターの後ろに散らばっている小枝を集めて、畑の隅にあるコンテナに集めるのが作業だ。」と指示されました。あー、やっぱりこいつにはゴミ拾いしかできないんだろう、かわいそうにと同情していると、あらぬことか、ジェームズは嬉しそうに返事をして皮の手袋をはめ始めました。まったく、コイツはバイト生としてのプライドはないのかと呆れてしまいました。時給を決められて働くのだから、せめてその分の仕事くらいしないといけないと思います。もしかすると主任は、全体の指揮を

          C36 「見る」と「やる」では大違い

          C35 過激なフルーツ収穫

          今日からは、ブラックカーラントというブルーベリーのような果実の収穫作業を始めることになります。初めて組む農夫の人たちとの共同作業です。地元のアルバイト生は既にどこかの現場に直接出向いているようで、あの騒々しさはありません。ジェームズは、朝礼終了時にのっそりと現れました。ボスはため息をつきながら再度今日の作業について彼に説明していました。 農作業自体は、身振り手振りで通じますし、基本的には繰り返し作業なのでポイントさえ押さえればどうにかなることは今までの経験で分かっています。

          C35 過激なフルーツ収穫

          C34 イギリスの訛りに困惑する

          新しい一週間が始まりました。朝6時に目が覚めたので、さっそく身支度を整えます。ベッドから起きて庭に面した窓のカーテンを開けると、広々とした小麦畑が見えました。すでに収穫が終わっているようです。庭ではウサギが朝食を取っていたようで、カーテンを開く音に驚いて急いで茂みに飛び込んでいきました。ピーターラビットの世界がこんなにも身近に感じられることに感動しました。 昨夜のうちにサンドイッチを作り、涼しい場所に置いておいたので、朝食をゆっくり楽しむ時間が確保できました。冷蔵庫がない環

          C34 イギリスの訛りに困惑する

          C33 農作業が本格化

          新しい一週間が始まりました。朝6時には目が覚め、身支度を済ませました。ベッドから起きて庭に面した窓のカーテンを開けると、広々とした小麦畑が広がっています。既に収穫が済んでいるため、朝の静けさが一層際立っています。庭ではウサギが朝食を取っていたようで、カーテンが開く音に驚いて急いで庭の境にある茂みに飛び込みました。まるでピーターラビットの世界が現実にあるかのようで、その美しい光景に心が癒されます。 昨日のうちに作ったサンドウィッチを涼しい場所に置いておいたので、ゆっくりと朝食

          C33 農作業が本格化

          C32感謝する日曜日

          1979年当時、日本の休日は日曜だけで、土曜日は半ドンでした。しかし、イギリスでは既に週休2日制が導入されており、週末に2日も休める習慣にはまだ慣れていませんでした。そのため、週末が来るたびに大変得をしたような気持ちになっていました。特に土曜日に家事をすべて済ませると、日曜日は完全にフリーになり、心も体もリフレッシュできます。 朝の光がカーテン越しに差し込み、部屋全体が明るくなります。窓の外を見ると、正装した人々が通りを歩いて教会に向かっているのが見えます。イギリスでは日曜

          C32感謝する日曜日

          C31二日酔いと快晴のウィークエンド

          翌日も素晴らしい快晴です。イングランドの夏は本当に愛すべき季節です。週末には、皆外に出て熱心に庭の手入れをしたり、散歩や日光浴を楽しむのが普通ですが、今日の私は最低の気分です。昨夜のシェリー酒勝負には勝ったものの、勝利の美酒というよりは、二日酔いの種を頭に植え込んだようなものでした。昨日から同居するはずのジェームスは、イギリスの夏の朝をきっと美しい芝生に横たわって眺めたことでしょう。日本の芝生と違って、イギリスの芝生は素足で歩いても日本のようにチクチク足の裏に刺さることはあり

          C31二日酔いと快晴のウィークエンド

          C30星空に飛んだスペイン人

          外に連れ出すとジェームズは、近くの植え込みに頭を突っ込んで、胃の中のものを戻し始めました。私も4杯目から5杯目だったので、かなり足に来ていました。しばらく戻していたジェームズが、植え込みから這い出してきて、「イキオ、もう俺はだめだ、家まで連れて帰ってくれ」とふざけたことを言います。「帰りたければ自分の足で歩け。オラオラついて来い」と背中を押すとまた茂みの中に頭から突っ込んでしまいました。「イキオ、助けてくれ」と懇願するが、「ばか、自分で歩けない奴は、そこで寝てろ」と日本語で叫

          C30星空に飛んだスペイン人

          C29 スペイン人と酒飲み対決

          「イキオ、今日の勝負は、ボクの勝ちだよ!」と少し口元が怪しくなってきたジェームスは、2杯目のシェリー酒もあっさり飲み干してしまいました。それを見ると、これは長期戦に持ち込まないとあっちのペースでは、こちらのペースコントロールを乱されてしまうと思いました。「はぁ?何を言ってるの?ここにお互いが飲んだグラスを並べていこう。どっちが多く並ぶかが勝負の決め手だ!」と提案しました。「OK、イキオ、それじゃあ今二人とも2杯目だね。ボクは3杯目を飲むからね。」とすでに2杯目を飲み干し、3杯

          C29 スペイン人と酒飲み対決

          C28ラガービールでとりあえず乾杯

          ちょっと気分がハイになり、「ジェームズ、どんな酒で勝負をするんだ?」と尋ねると「ビールかな?」と返ってきました。「ふざけるな!ビールで勝負なんてばかばかしい」と言い返すと、ジェームズは「ボクは、初めにビールが飲みたい」とごく当たり前のことを言いました。その点は同感だったので、「初めの一杯は、お前がおごれ!」と先輩風を吹かせて言うと、意外とあっさり「うん、わかった!」と承諾しました。「よし!」と一杯目は、生ぬるいラガービールで乾杯しました。なかなか芳醇な香りで、生ぬるいビールな

          C28ラガービールでとりあえず乾杯

          C27悪魔の同居人と過ごす花の金曜日の夜

          悪魔のように空気読めない同居人ジェームスが今日からこのコテージに住みつくのです。ジェームスはやって来るなり、「イキオ、今日は金曜日だからパブに行こうぜ」と飲みに誘うのです。「ジェームス、残念だが俺はここで週末の夜をゆっくり過ごすのだ」と言い切りました。ワインも買ってあるし、久しぶりに美味しそうな燻製のハムも手に入れたから、たとえジェームズでなく誰か他の人に誘われたとしても、今夜の外出する気持ちはさらさらなかったのです。するとジェームスは、「イキオは酒が飲めないのか?それとも酒

          C27悪魔の同居人と過ごす花の金曜日の夜