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C30星空に飛んだスペイン人

外に連れ出すとジェームズは、近くの植え込みに頭を突っ込んで、胃の中のものを戻し始めました。私も4杯目から5杯目だったので、かなり足に来ていました。しばらく戻していたジェームズが、植え込みから這い出してきて、「イキオ、もう俺はだめだ、家まで連れて帰ってくれ」とふざけたことを言います。「帰りたければ自分の足で歩け。オラオラついて来い」と背中を押すとまた茂みの中に頭から突っ込んでしまいました。「イキオ、助けてくれ」と懇願するが、「ばか、自分で歩けない奴は、そこで寝てろ」と日本語で叫んでさっさと歩き始めました。歩き始めると私もかなり足にきていることに気がつきました。まさしく千鳥足です。もう、ジェームズどころではありません。街灯もない道をフラフラしながら家路を急ぎました。急ぐといっても、気持ちは先に進むのですが、まっすぐ歩いていないようで、あちこちの沿道の木に抱きつきながら、歩き続けました。

いよいよと思ってしばらくしゃがんでいると、なんと後ろからジェームズが歩いてきました。「イキオ、待っててくれてありがとう」となんともおめでたいことを言うので。放っておいて、先に歩き始めました。道は、川沿いの土手の上になりました。そこは、川沿いの土手の下に整備された憩いの遊歩道がある。見覚えのある道であと5分も歩けば懐かしの我が家です。そこに来て後ろからついてきたジェームズが、「イキオ、手を貸してくれ、手を握ってくれ」と懇願するので、今日の一番迷惑を掛けたスペイン人に恨みを晴らすチャンスとばかりに、手を取ってやりました。「イキオ、君は僕のベストフレンドだ!」とほざくので、彼の手をしっかり握って、私を中心にして、ハンマー投げの要領で2回ほど彼を振り回した揚句、「お前なんか宇宙の果てまで飛んでいけぇー」と叫ぶとパッと手を離しました。彼は、あぁーっと叫びながら、土手の下に飛んで行った。しばらくゴロゴロ転がり落ちる音の後にうぅっという声が聞こえて静かになりました。水の中に落ちる音はしなかったので、おぼれ死ぬことはないだろう。この川沿いは、遊歩道がちゃんっと整備されていて、その幅も20mとかなり広く、川沿いには公園やテニスコートがあることは知っているから、まあ土手の芝生の上でお気楽に明日の朝までぐっすり寝るだろうと判断して、彼のことは放置して、私はヨタヨタしながら家に着きました。もちろん洋服を脱ぐ余裕もなく、二階までやっとのことで這い上がり、ベッドにばったりと倒れこみました。昼間のリベンジを果たすことができ、スペイン人に酒の強さで勝つなんていうどうでもよい勝負にも勝って、初めてヨーロッパで稼いだ給料も手に入れ、なにか騒動だった初めてのイギリスの週末を過ごすアルバイト生は、泥のように眠りにつきました。それにしても、もうシェリー酒はコリゴリです。

補足情報:イングランドの川沿いの遊歩道

イングランドの川沿いの遊歩道は、その美しさと整備の良さで知られています。特にテムズ川沿いの遊歩道は、多くの人々に愛される観光スポットです。遊歩道は整備されており、季節ごとに異なる景色を楽しむことができます。春には花が咲き乱れ、夏には緑が生い茂り、秋には紅葉が美しく、冬には静かな佇まいが魅力です。沿道にはベンチやピクニックエリアもあり、家族連れやカップルがリラックスできるスペースが設けられています。

遊歩道の多くは、自転車道と併設されており、サイクリングを楽しむ人々も多いです。また、ウォーキングやジョギングをする人々にも人気があります。川沿いには歴史的な建物や橋も点在しており、散策しながらイングランドの歴史と文化を感じることができます。夜には街灯が灯り、安全に歩けるよう配慮されています。イングランドの川沿いの遊歩道は、自然と触れ合いながらリフレッシュできる場所として、多くの人々に親しまれています。

続く…


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