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C35 過激なフルーツ収穫

今日からは、ブラックカーラントというブルーベリーのような果実の収穫作業を始めることになります。初めて組む農夫の人たちとの共同作業です。地元のアルバイト生は既にどこかの現場に直接出向いているようで、あの騒々しさはありません。ジェームズは、朝礼終了時にのっそりと現れました。ボスはため息をつきながら再度今日の作業について彼に説明していました。

農作業自体は、身振り手振りで通じますし、基本的には繰り返し作業なのでポイントさえ押さえればどうにかなることは今までの経験で分かっています。作業としては、胸の高さぐらいに育てられた、ちょうど茶畑のようなブラックカーラントというどんぐり大の深い青色の実を、まさしくお茶の摘み取り機のような機械で収穫します。その収穫方法が素晴らしくシンプルです。機械の先頭部には、木を激しくブルブルと揺すって木の実を振り落とす振動機が付いています。その後方に巨大な掃除機が付いていて、落ちてくるブラックカーラントの実を吸い取ります。人間はというと掃除機の後ろから、強烈に噴き出す風と一緒に飛ばされてくる実を収穫用のトレーに収穫します。後ろに繋げられたトレーラーには、作業員が2人乗り込み、収穫した木の実が出てくる口に待機して出てくる実を80cm四方のトレーにビニールシートを敷いて均等に広げていきます。8割程度溜まったら、後ろに控えているスペースに積み上げていきます。20段ほど積み上がると、別働隊として後ろから追走してきているトラクターに積み込み、そのまま加工場に運ぶという流れです。

トレーラーには2名しか乗り込めないので、4チーム編成で作業します。ある程度の時間作業をするとローテーションで交代していきます。私にとって一番恐れているのは、あのジェームズとコンビを組むことです。もしもその場合は、きっと恐ろしいことになるのは目に見えています。どんどんと出てくるブラックカーラントの果実の川。もたもたするジェームズの横で一人孤軍奮闘する自分。そして、後ろから早くしろと飛び交う罵声。想像しただけでも気絶しそうになります。

トーマス主任が今回もリーダーになってチームを組むらしいです。二人ずつパートナーが決まっていきます。私の名前は呼ばれていません。しかもジェームズの名前も呼ばれていません。どんどんと悪夢が現実になることが確実になりそうで心臓がギュッと締め付けられます。「それと俺とイキオ」おぉ、やったー頼もしいトーマス主任となら、上手くやれる自信はあります。となるとジェームズと組むのは誰かと見回すと、既にすべてのチームは決まっています。つまりジェームズはこの作業から外されるのです。まあ先週の作業ぶりを見れば、彼にできる作業はゴミ拾いかと想像していたから納得です。

【補足情報】

イングランドの果実ブラックカーラントの特徴と味と調理法

ブラックカーラント(Ribes nigrum)は、イギリスでは非常にポピュラーな果実で、深い紫色をしており、小さなベリー状の実をつけます。その味は非常に濃厚で、酸味が強く、ビタミンCが豊富です。ブラックカーラントはそのまま食べることもできますが、ジャムやゼリー、ソース、ジュース、リキュールなどに加工されることが一般的です。

特に有名なのが「カシス」というリキュールで、ブラックカーラントを原料としています。また、ブラックカーラントの葉も香りがよく、お茶として利用されることがあります。ブラックカーラントは抗酸化作用が強いとされ、健康食品としても注目されています。調理法としては、果実を砂糖と一緒に煮詰めてジャムにしたり、スムージーに加えたり、ヨーグルトやアイスクリームにトッピングするなど、多岐にわたります。

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