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散文

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#創作

理由もなく ただ好きだと

理由もなく ただ好きだと

わたしがどんなにかっこよくふるまっても
かっこいいねってあなたは言わない

わたしがどんなにかわいい服を着ていても
かわいいねってあなたは言わない

ただ生きているだけでいいよって言ってくれる

わたしがどんなに優しい言葉を紡いでも
優しいねってあなたは言わない

わたしがどんなに立派なふりをしても
えらいねってあなたは言わない

ただ素敵な生き方だねって言ってくれる

あなたはかっこよくてかわい

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原始

原始

ただひとこと
許してくださいと言い残し
あなたは悲しすぎて鳥になった

わたしとあなたが
まだ白い小石だったころ
世界は静かで言葉もなく
つくりものめいたものはひとつもなかった

わたしとあなたが
まだ二輪の小花だったころ
風がすべてを渡らせて
あすを知りたがるひとはいなかった

あれから果てしない時間が流れ
切なく晴れわたった
初夏の静かな昼下がり

あなたの足が小石をプールへ蹴飛ばして
その指

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孤独な天使

2012年5月7日に、ぼくは自殺しました。そして目が覚めたら、ぼくは天使になっていたのです。いま、ぼくの背中には翼が生え、指の先まで内側から美しく光り輝いています。どうやらここは天国のようです。青空があり、心地のよい風があり、透明な太陽の輝きに満ち満ちています。朝があり、夜があり、もちろん美しい夕暮れもあります。ここにはみんながいます。両親や兄弟、友人や、大好きだったペットたち、あるいは、目も当て

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天国のラジオ vol.2

天国のラジオ vol.2

毎週土曜日 AM9時
天国で放送中のラジオ番組

タイムチャンネル

あらゆる優しさと幸運が重なったとき
まれではあるが地上の人も
その放送を聞くことがあるという

窓辺のソファに腰掛けて
窓を流れてく雨を見ていた
通りを走る車を見ていた

悲しい夜 どうしようもない悲壮感

今日ぼくは
愛も金も夢も希望も失って
なにもかもを無意味に思う

だからこそいま
自分を棺桶にしまうみたいに
この店に足を

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希望

希望

希望を抱くことでしか
あたしには
世界と向き合う術がない

なにも終わらないでほしい

春も 夏も 秋も 冬も
なにも終わらないでほしい

満月も 新月も
雨の日も 晴れの日も
なにも終わらないでほしい

あの歌も あの映画も あの物語も
なにも終わらないでほしい

あまりにも多くの時間が
流れていってしまうから

あたしたちは
この一瞬のために息をして

はやくここへ来て

思い出になる前に

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今に帰りたい

今に帰りたい

秋がいちばん好きだなぁ

この空の輝き
この風の香り

目の前にある一瞬が
もうこんなにも懐かしい

一千年くらい先の未来から
今ここに回帰したくなるような

このとてつもなくせつない気持ち

泣きたくなるよ

もしかしたら

わたしは神様に
一生に一度の願いを叶えてもらい

一千年先の未来から
今ここに帰ってくるため

今朝 目を覚ましたのかもしれない

うん きっとそうだね

いつもそんな気

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ちからをかして

ちからをかして

あなたはいてくれるだけでいい

それだけで
ちからをかしてくれる

垣根越しにあなたと目があったとき
あなたの向こうに
大きな大きな世界がみえた

光にあふれたあたたかな世界

わたしはそこになじみたいと思った

あなたのなかに溶け込んで
大きな世界とひとつになろう

あなたはわたしの死でありいのち
かけがえのないひとつのひかり

いつかつよいちからにあなたが倒れ
なにもできなくなる日がくるとして

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ray

ray

あなたに会いたくて
生まれてきました

光に身体をまとって遥々

はじめて名前を名乗りあったとき
はじめて名前を呼んだとき
はじめて瞳で語りあったとき
はじめて手の温もりにふれたとき
はじめて限りある時間に泣いたとき

人間であることの恥ずかしさと悲しみ
そしてそのすばらしさを想った

あなたがいなくなってもわたしは
なにも変わらず生きていくでしょう

それでもわたしは
あなたに会いたくて

息を

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ドーナツ君の衝撃

ドーナツ君の衝撃



AdobeのIllustratorで描きました。

自分の穴に生まれて初めて気がついたイエロードーナツ君。

なんだこの空洞は!なんだこの欠落部分は!と、イエロードーナツ君にとってはなかなか衝撃的でバイオレンスなシーン。でもピンクドーナツ君に悪気はない。穴という欠落部分があってこそ完璧なふたり。

アニメーションも作ってみたけれど、YouTubeにアップする勇気はまだない(´ω`)

誰のなかにもあなたはいたんだ

誰のなかにもあなたはいたんだ



あなたへの愛に気がついたとき
海や風や花々や
通り過ぎゆく名前も知らない人々が
ぐんとわたしに近づいて
そしてあなただけが遠くなった

あれほど幸せを願ったあなたなのに
こんなに許すことができなくなってはじめて
あなたが泣く理由がわかったの

あなたはいつも突然に
壊れたように泣きだした

だけどそれは
ふいに泣きたくなるわけじゃなかったんだね

あなたはいつも
泣くのを我慢していたんだね

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草原のコキア

春の草原に佇むあなたが
そのうららかな笑顔のうしろで少しずつ
生きる気力を失くしていたこと

わかっていたからわたしはあのとき
その草原に風を呼びました

あなたは風がひとつ吹いたことを
その頬に感じるだけでしょう

だけどその風は
わたしの精一杯の優しさなのです

だれもいない乾いた焼け野原を
わたしは知っているから

青空がめくれあがって剥がれ落ちると
そこから小さな火種がはいりこむ
ここをそ

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魂の森

魂の森

わたしとあなたが死んだあと

わたしとあなたはただ光

見渡すかぎり ただ光だけ

果てしない時が流れる魂の森で
わたしはあなたを見つけます

その肌の熱がなくとも

その瞳の輝きがなくとも

その声が聞こえなくとも

数えきれない光のなかから
わたしはあなたを見つけます

なぜそれができるかわかりますか

それはね

ひどく内気そうに見えて
じつはそうではないのがあなただから

優しいのに気が強

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迷い子のマコ II

迷い子のマコ II

きみが泣く理由なら
僕が数えてもきりがないほどあったのに

きみはなぜ一粒の涙さえこの星に残さず
爪のさきほどの恨みさえ残さず
旅立つことを選んだのだろう

神さま マコを守ってください
無力な僕の代わりにどうか
マコを宇宙に隠してください

マコ もう大丈夫だから
ずっとそこにいていいよ
もう傷つかなくていい
もう誰も傷つけなくて済む

元通りになるだけだから
なにもかも

🌎💫

マコと初

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天国のラジオ

天国のラジオ

毎週土曜日 AM9時
天国で放送中のラジオ番組

タイムチャンネル

あらゆる優しさと幸運が重なったとき
まれではあるが地上の人も
その放送を聞くことがあるという

アメリカンコーヒーと
やわらかなトリュフチョコレート

美しい空にカーテンを開け
木箱のような小さなラジオを
日の当たる窓辺に置いた

揺れてほほ笑むイエローのチューリップ

目を閉じれば海が見える
耳をすませば波音が聞こえる
こころ

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