草原のコキア


春の草原に佇むあなたが
そのうららかな笑顔のうしろで少しずつ
生きる気力を失くしていたこと

わかっていたからわたしはあのとき
その草原に風を呼びました

あなたは風がひとつ吹いたことを
その頬に感じるだけでしょう

だけどその風は
わたしの精一杯の優しさなのです

だれもいない乾いた焼け野原を
わたしは知っているから

青空がめくれあがって剥がれ落ちると
そこから小さな火種がはいりこむ
ここをそんな場所にはさせない

だけどそれはきっと
あなたのその生き方への冒涜なんだろうね

スプリンググリーンの草の波
燃えるような赤いコキアが
ここであなたのすべてを見ていた

あなたはあまりにも
多くのものを壊しすぎたのです

どれだけ強いか
どれだけ耐えられるか試しすぎて
ほんとうに壊してしまったのです
大切なものや小さな心を

それでもあなたは生きていくのでしょうか

そのうららかな笑顔で
生きる気力を失くしながら

それでもあなたは生きていくのでしょうか



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