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原始


ただひとこと
許してくださいと言い残し
あなたは悲しすぎて鳥になった


わたしとあなたが
まだ白い小石だったころ
世界は静かで言葉もなく
つくりものめいたものはひとつもなかった

わたしとあなたが
まだ二輪の小花だったころ
風がすべてを渡らせて
あすを知りたがるひとはいなかった


あれから果てしない時間が流れ
切なく晴れわたった
初夏の静かな昼下がり


あなたの足が小石をプールへ蹴飛ばして
その指が花びらであすの不幸を占ったとき

あなたの世界は化石に変わる


そしてただひとこと
許してくださいと言い残し
あなたは悲しすぎて鳥になった



夢から覚めたその瞬間から
自分が何者なのかを思い出す
あの空白の一瞬を永遠と呼ぶ

あなたとわたしはそこにいる
今もわたしから呼んでいる

わたしたちの永遠に帰ろう

あのころの
世界の姿が見えますか


あなたを探して空を見上げれば
音もなく大きな鳥が渡る




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