記事一覧
【小説】カンケイの複雑怪奇 #2
2.笑顔
男の笑顔はどこかおかしい。ぺたっ、と顔に張り付けられたお面のようなのだ。張り付いているときには、「可愛い」と思えるような親しさが込められているようにも見えるのに、外される時期がとにかくおかしい。男の笑顔を知れば知るほど、どうやって覚えたのかが疑問にもなってくるのだけれど、それは実に調度いいところで張り付けられる。そのくせに、その笑顔はあまりにも早く外されてしまうのだ。とりあえず礼儀正し
【小説】カンケイの複雑怪奇
1.スキャナー
一緒に暮らしている男が、自分の過去の写真をすべてスキャンしてくれないかと、頻りに言ってくる。断れば、納得して暫くは黙る。でも、少しすると思い出すのか、また同じことを言ってくる。
そんなことはしたくもないし、写真なんぞ見たくもない。あまりにしつこいので高値を吹っかけてやったら、今度は頻りに値引きをしてくれと言う。「ファミリー割引はどうかなぁ」「大量割引はどうかなぁ」
まったく呆れ