猫多ビビ

こんにちは~ 猫多ビビです。 スキマの時間にショートストーリーなんてどうですかねぇ~?…

猫多ビビ

こんにちは~ 猫多ビビです。 スキマの時間にショートストーリーなんてどうですかねぇ~?    どうぞごゆっくり~!

最近の記事

閃光とジングル

 荒野から低く突き出た岩山を登る途中、冷たい風に押されて紙屑が転がってきた。少し追い掛けた手が掴み取ったのは、色褪せた洗濯物の引き換え札だった。「ふん」と空を見上げて鼻を鳴らした後で、私はそれを丸めてゴミ用のポケットに突っ込んだ。  頂上付近で、カメラ越しに四方の荒野を見ていると、宿の女将の言葉が浮かんだ。「この辺じゃ『嵐が丘』なんて、もう誰も読みませんよ」 確かに。本物の荒野に生きていれば、作り物なんて読むことなんてないのか。そう思いながら、シャッターを押した途端、存在感を

    • ベリンダ・ハズナガンの特別な朝

       裏庭の木の上でがなり立てる2匹の鳥の笑い声でベリンダ・ハズナガンは目が覚めた。上向きに少し開けてあるブラインドから覗く外の色はまだ濃紺である。もう少しすると他の鳥たちも囀り始めて、やがて朝がくる。  夜明け前のひんやりと澄んだ時間と色を彼女は好んでいた。研究室での実験や解析、海での探索などに夢中になってしまうとどうしてもこの時間にベッドにいることは難しい。だから今朝はベリンダ・ハズナガンにとって例外という特別な朝である。  そんな特別な理由から、今朝の自分が昨日までの自

      • 震える夜に

        何もかもが嫌になってしまった夜 ひとり暗がりに取り残された時間の中で 慰めになるような何かを書こうとPCを開く それなのに何も思いつかず 唯一思い出したのは グールドのピアノ 痛みや悲しみを見つけてしまわないように 自分の心に触れないように バッハの平均律へと飛んでいく グールドのピアノは憂いの粒 彼のハミングが震える夜に漂う 同情でも優しさでもない呪文が 沈んだ澱を溶かしていく ボリュームを上げ 世界から切り離されて 粒粒の連なりの中に埋もれる <参照> グレン

        • コードネーム金の蛙

          平泳ぎの体勢から身体を捻り、波のない海に身体を十字型に浮かべた。白く細長い雲が一筋、頭から足先に向けて長く伸びている。それ以外は赤や黄色を内包する眩しい青色が視界の全てである。ときどき遠くを通るボートが、少しだけ大きめで、それでも崩れる気配のまったくない水塊のような波を押し出してきた。その度に少しだけ頭を起こし、手をひらひらと動かして体の揺れを安定させた。 砂浜には、日光浴や読書をしている人たちが疎らに見える。 真冬の日曜日の午前中。ヌーサビーチで海に入っているのは、行った

        閃光とジングル

          おかしな出来事

          今朝は久しぶりに走りに出かけたのだが、そこでおかしな出来事にあった。 ここ3~4年、何かしらの方法で毎日しっかり汗を掻いていたのに、この1か月程はついつい面倒になってしまって、週1でロードバイクに乗るくらいだった。 PCの画面を見つめながら同じ姿勢で長い時間座っている日が続くと、やはりあちらこちらが痛くなってくる。なんとなく肋骨のあたりや、胃や腸もおかしいように感じる。 段々と、動かないことから来る体への負担の大きさが心配になってきて、今日になって、「毎日、せめて10分でも

          おかしな出来事

          裏庭にいる「中くらいの」

          うちの裏庭には中くらいのトカゲ君が住んでいる。 もちろん小さいトカゲ君やらゲッコー君らもたくさんいるのだが、 「中くらいの」というのは、一際、魅力的なのだ。 「中くらいの」というのは「中型」ということで、 具体的には、アオシタトカゲ(Blue-toungued Skink)である。 通称「ブルータン」。 以前に、前庭にアゴヒゲトカゲもいたことがあったけど、 彼は通りすがりのドラゴンだったから、 半日くらいでどこかへ行ってしまった。 (これはこれで残念で仕方がない。保護するべ

          裏庭にいる「中くらいの」

          【小説】カンケイの複雑怪奇 #2

          2.笑顔  男の笑顔はどこかおかしい。ぺたっ、と顔に張り付けられたお面のようなのだ。張り付いているときには、「可愛い」と思えるような親しさが込められているようにも見えるのに、外される時期がとにかくおかしい。男の笑顔を知れば知るほど、どうやって覚えたのかが疑問にもなってくるのだけれど、それは実に調度いいところで張り付けられる。そのくせに、その笑顔はあまりにも早く外されてしまうのだ。とりあえず礼儀正しくありたいだけなのか、相手に提示される否や電光石火で外される。  外された後には

          【小説】カンケイの複雑怪奇 #2

          【小説】カンケイの複雑怪奇

          1.スキャナー  一緒に暮らしている男が、自分の過去の写真をすべてスキャンしてくれないかと、頻りに言ってくる。断れば、納得して暫くは黙る。でも、少しすると思い出すのか、また同じことを言ってくる。  そんなことはしたくもないし、写真なんぞ見たくもない。あまりにしつこいので高値を吹っかけてやったら、今度は頻りに値引きをしてくれと言う。「ファミリー割引はどうかなぁ」「大量割引はどうかなぁ」 まったく呆れる。値引きなんぞするわけがない。  段ボールに詰め込まれた写真には、男の別れた妻

          【小説】カンケイの複雑怪奇

          ソファ下のビビ

          こんばんは。猫多ビビと申します。 これが最初の投稿です。なんだかちょっとビビりますね。 猫多ビビの名前は、以前一緒に生活していた白と薄茶のシマ猫の名前からもらいました。彼女はすごいビビりの猫でした。 保護施設で初めて出会ったときには、人懐こくてすり寄ってくる猫たちの中にあって、1匹だけ気取ったようにツンとすまして少し遠くを歩いていました。 引き取って1週間は、我が家に慣れてもらうために使っていない小部屋でゆっくりと過ごしてもらいました。その後、家の中を自由に歩き回れるよう

          ソファ下のビビ