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徒然日記

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#エッセイ

『週刊ヴェルデ』プロジェクト

「脚本家を目指すなら、週一回、1400字~1800字のエッセイを書く訓練を課す」
 先日出た月刊ドラマ2月号で、内館牧子さんのロングインタビューで、こんな内容の行を読んだ。
 何気なく読みすすめていた中で、この箇所は私の深い深い部分に刺さった。
 脚本家なんて別に目指してない、という人でも、今月号の彼女のインタビューの後半だけでもいいから読んで欲しい、と思うほどに。
 理由の一つは、noteが最近

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天才と怪物

天才と怪物

 歴史を見渡すと、「天才」と呼ばれる人物のなんと多い事だろう。

 私自身、今まで展覧会についてコラム記事を書く中で、しばしば「天才」という単語でもって芸術家たちに言及してきた。

 カラヴァッジョ、アルチンボルド、運慶、エッシャー、ゴッホ、狩野永徳…。

 突然変異のように現れ、強烈な存在感を持つ彼らを支えたのは、それまでの先人たちや彼ら自身の経験の積み重ねがある。それは調べて行くうちにようやく

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面白い!ネタを求めて

 手垢の全くついていないネタを探すのは易くはない。
 北斎やら、ミケランジェロやら、有名どころは、既に誰かしらが書いている。
 彼らについて書こうとすれば、「王道」以外を探すしかない。

 ハマスホイ展は、注目度が高い分、あらゆる媒体が取り上げていた。
 多くは日本ではこれまで知られて来なかった「北欧のフェルメール」の生涯や、作品世界の紹介がメインだった。
 私が編集部から最初に求められたのも、そ

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世の中にたえて桜のなかりせば

「満開の桜を見て、『綺麗』と思えない春は初めてだ」
 今朝、出勤の際に桜を見てこう思った。
 空が曇っていたせいもあるかもしれない。
 だが、ここ最近の空気からして、ささくれだっている。
 その中で、満開の桜は、晴れやかさ、明るさよりも、澱み、濁って見える。
 よくよく目をこらせば、緑の葉も花の間から覗いている。
 花弁の白に近い薄紅と、緑の葉のコントラストは、前々から好きな取り合わせなのに、今は

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徒然日記~靴の話

きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いて行けるはずだ。(須賀敦子、『ユルスナールの靴』、プロローグ)

 留学する際にも鞄に入れて行った、須賀敦子さんの『ユルスナールの靴』の冒頭のこの言葉が、今でも頭に残っている。

 きっちり自分に合った靴。

 留学中、それは石畳の上を長い事歩き続けても、痛くならない靴だった。当時、ヒールのある靴は買わなかった。もともと苦手だったというのもある

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映画、ムービー、シネマ・・・

 映画。ムービー。シネマ。キネマ。・・・イタリア語なら、フィルム、チネマ。

 気がつけば、「映画」のことを考えている。

 どんな作品があるのだろう、とか。

 今の私にぴったり来る映画って何だろう、とか。(だが、生憎私の中のデータストックは、貧しいこときわまりない)

 映画を一本消費した後、簡単な感想を専用のアプリに書きとめ、時にはnoteにも書く。

 形にして残すのは単純に楽しいから、意

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美術検定2級勉強日記~現代アートの迷宮と、その地図

美術検定2級勉強日記~現代アートの迷宮と、その地図

 ついに10月に入った。

 美術検定の試験本番は11月10日。

 応用問題など、頭が痛い箇所はまだまだ多いが、まずは基本(土台)を埋めて行くことが肝心。

 そして自分にとってのネックは「現代アート」。

 3級を受けた時には、テキストを読んでひたすら書いて覚えたり、問題を解いたり…最終的にはほぼ「丸暗記で行く!」と開き直って、引っかかりやすい問題の答えも含めて暗記することで乗り切った。

 

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映画「トールキン

旅のはじまり」覚え書き

映画「トールキン 旅のはじまり」覚え書き

「今日見たいっ!延ばしたくない」

 そんな思いに取りつかれて、映画館へ。

 目当ては『トールキン 旅のはじまり』。作品の存在を知ったのも今朝のことだ。

 タイトルからお察しの通り、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の作者トールキンの若いころを描いた伝記映画である。

 彼の生涯については、戦争に従軍したこと、言語学の教授だったことなど、断片的に知ってはいた。

 が、「こういうことがあった」

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徒然日記~下手な鉄砲でも、数撃てば当るわけではないという話

徒然日記~下手な鉄砲でも、数撃てば当るわけではないという話

「とにかく量をこなせ」

 分野を問わず、「上達」する方法は、この一言に集約される。

 文章がうまくなりたいなら、字数を増やしたいなら、とにかく書く。

 話作りができるようになりたいなら、映画や漫画でも、とにかく作品に多く接する。

 

コンテンツの「大量消費」が、発想力を鍛えるための第一歩―――昼休みに『クリエイティヴ・スイッチ』を開いたら、ちょうどこんな箇所があった。

 下手な鉄砲でも

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書きたいもの~<モナ・リザ>の隣人、ヴェロネーゼ<カナの婚礼>

書きたいもの~<モナ・リザ>の隣人、ヴェロネーゼ<カナの婚礼>

 ルーヴルのその部屋で、人々の視線のほとんどを集めているのは、一人の女性だった。

 そう、<モナ・リザ>だ。

 10年以上前に訪れた時、部屋に入って最初に目についたのが、国籍も様々と思しき人々が小さな絵の前に群がって、携帯電話(当然ガラケー)を向けている姿だった。

「本当に小さいねえ…」

 苦笑と共に、私はちょうど<モナ・リザ>の向かい側の壁にかけられた絵へと目を向けた。

 ヴェネツィア

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徒然日記~やまとうたの効用

徒然日記~やまとうたの効用

やまとうたは、人のこゝろをたねとして、よろづのことのはとぞなれりける。(やまとうたは、人の心を種として、万の言の葉とぞなれりける)

 伊勢物語について、「歌物語」というジャンルについて調べていて、古今和歌集仮名序のこの一節が頭に浮かんだ。

 人の心、心に生じた波―――喜びや悲しみ、様々な動き(感動)、「気づき」が種子になる。それを三十一文字の定型の中に昇華させる。それが、歌だ。

 五七五七七

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気になる本~「印象派の歴史(上下二巻本)」

 またもや気になる本を書店で見つけてしまった。

 印象派は日本でも人気が高い。

 カレンダーの絵柄としても定番だし、毎年どこかで必ず印象派関連の展覧会が開催される。(てっとり早く入場者数とお金を稼ぐには良いのだろう。作品も多いからつぶしもきくだろうし)

 読みたい。

 印象派の歴史を一度自分でもまとめ直してみたい。

 印象派の登場は、西洋美術史において、ルネサンスと並ぶ大きな変革期とも言

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徒然日記~「宮仕えはつらいよ」シリーズ化計画中

徒然日記~「宮仕えはつらいよ」シリーズ化計画中

 ダッシュボードを見ると、この二つの記事が上位に来る。

 …ので、三作目として今日は「ルーベンス(下図)」を書くつもりだった。

 が、もう少し練りたくなってきたので、今日は裏話的なものを。

 とりあえずは、タイトルについて。

 大抵の方はすでに気づいているとは思うが、映画「男はつらいよ」が元ネタになっている。

「宮廷画家は~」とするべきかとも迷い続けているが、「宮仕え~」の方で落ち着きそ

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徒然日記

「海外に縁がある」

 占いで見てもらうと、よくそんなことを言われる。

「海外に出た方が良い」

 確かに、大学時代は交換留学でヴェネツィア大学にいたこともある。そのころは大学に残って研究職につくことを夢見ていた。

 その後、「研究」がどうも自分のやりたいことと違うのでは、と思い、外に出たい、と思った。研究を続けたところで、食べて行けるのか。

 しかし、世の中はそううまくはいかない。就職活動

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