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東京フォトジェニック

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東京ってなんだ。それは様々な時代がカオスする場所。それはミクロでもマクロでも楽しめる、日本最大のアミューズメントパーク。知れば知るほどへんてこな街の、へんてこフォトジェニックへよ…
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メタボリズムの時代(静岡新聞・静岡放送東京支社ビル)【東京フォトジェニック】

メタボリズムの時代(静岡新聞・静岡放送東京支社ビル)【東京フォトジェニック】



静岡新聞・静岡放送東京支社ビル
竣工:1967年10月
設計:丹下健三

新橋駅銀座口を降りて左手、東京方面へ向かう山手線が緩やかなカーブに差し掛かるあたり。
まるで幹と枝、大樹を連想させる構造体がある。

オフィス街の無機質なビルヂングの中で一際目立つこの建物は、かつての日本人が夢見た来るべき建築の遺産であった。

メタボリズム。

名の通り、膨張する建築。
1960年代の初期、戦後日本は高

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取り残された曲線(晴海橋梁)【東京フォトジェニック】

取り残された曲線(晴海橋梁)【東京フォトジェニック】



東京都港湾局専用線 晴海橋梁 (江東区晴海)

東京臨海副都心計画によって大規模な再開発が行われた江東区・晴海。
立方体オブジェクトに佇む曲線。
東京都港湾局専用線 晴海橋梁である。

かつて石炭を主に貨物輸送を行っていた専用線は、モータリゼーションに飲まれ89年に廃線。
晴海橋梁はその数少ない遺構だ。
単線の線路やアーチがそのまま残っており、周りの景色とのコントラストが高い。
まるで廃線当日

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高級マンションを育てた時代(渋谷 代官山コーポラス) 【東京フォトジェニック】

高級マンションを育てた時代(渋谷 代官山コーポラス) 【東京フォトジェニック】



2017年9月に四谷コーポラスの解体が始まったことは、フリークにとってビッグニュースだった。
四谷コーポラスは日本初の民間分譲マンションであり、高級マンション"コーポラス シリーズ"の先駆けとして1956年に竣工された。
いわば
・来たる核家族時代の象徴
・高級物件としての集合住宅のモチーフ
であった。

代官山コーポラスはその翌年に竣工され、四谷の血筋を引く貴重な文化遺産である。
メゾネット

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Tokyo Subcultecture(北千住『昭和サロン 小柳』) 【東京フォトジェニック】

Tokyo Subcultecture(北千住『昭和サロン 小柳』) 【東京フォトジェニック】

以前、noteで北千住の長屋建築群を扱ったことがある。
この長屋建築群・表側の通りに一際DOPEな建物がある。

昭和サロン 小柳(北千住)

ベースはよくある二階建て店舗住宅ではあるが、壁一面に展覧会のパンフレット。
岡本太郎・藤田嗣治・草間彌生,,日本の近代美術を彩った芸術家の名が目に付く。
しかも展覧会のスケジュールは比較的新しく、この居酒屋、未だに呼吸をしている。
(webに潜入記事がある

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キープアウト・アンダーグラウンド(東京メトロ 上野検車区 踏切)【東京フォトジェニック】

キープアウト・アンダーグラウンド(東京メトロ 上野検車区 踏切)【東京フォトジェニック】



東京メトロ 銀座線 上野検車区 踏切

銀座線の車両基地に在る踏切。
銀座線は通常の電車と異なり、3本目のレールから集電する第三軌条方式を採用している。
そのため、線路内に人が立ち入り感電しないよう、策で線路が塞がれている。

車庫から地下に伸びる線路は単線で、都会にしては珍しい。
たった一本の線路が地下に潜り行く様はどこか心細い。

独特度 ★★★☆☆
モグラ度 ★★★☆☆
心細さ ★★

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吉原カフェー探訪 その壱(千束四丁目 『ゆうらく』)【東京フォトジェニック】

吉原カフェー探訪 その壱(千束四丁目 『ゆうらく』)【東京フォトジェニック】



千束四丁目 カフェー建築 『ゆうらく』

関東最大の色街・新吉原
明暦の大火により千束に移って三世紀半。
日本の一つのカルチャーを支えてきた。

江戸幕府から続く吉原遊郭は赤線(警察公認の売春地帯)として栄えた。
しかし戦後、GHQの指導により規制が強まり、1958年、売春防止法の施行に併せて赤線は廃止となる。

現在も新吉原には数多くの風俗店が有るが、
赤線時代の風俗店はカフェー建築と呼ばれ

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脈を打つ地下空間(東京メトロ 四谷三丁目駅)【東京フォトジェニック】

脈を打つ地下空間(東京メトロ 四谷三丁目駅)【東京フォトジェニック】



東京メトロ 四谷三丁目駅
開業 1959年3月15日

大友克洋の"AKIRA"で印象深いシーンがある。
ネオ東京の地下深くに冷凍されているアキラが復活する瞬間だ。
あの、アキラの封印されているドームは配管が血管のように張り巡らされている。
さながら臓器のようだ。

東京の地下鉄は使用できる地下の体積が狭いために、よく配管が天井に溢れている。
この光景に出会う度、僕はAKIRAのあのシーンを重

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新宿サクラダファミリア(新宿 東京都庁第一本庁舎)【東京フォトジェニック】

新宿サクラダファミリア(新宿 東京都庁第一本庁舎)【東京フォトジェニック】



東京都庁 第一本庁舎
竣工 1991年

東京都庁は工事現場界隈では「サクラダファミリア」と呼ばれるらしい。
その複雑な構造から、半永久的に補修が続けられている未完成の構造物なのだ。

数年前に出逢った工事担当者はこう呟いていた。
「シンプルなデザインにすれば良かったものを、毎年修繕費が嵩んで仕方ないらしい。まあ、俺らにとっちゃ有難いんだけれども」

1991年の竣工から間もなく30年を迎える

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哀愁の鉄仮面(八重洲 新槇町ビルヂング)【東京フォトジェニック】

哀愁の鉄仮面(八重洲 新槇町ビルヂング)【東京フォトジェニック】



新槇町ビルヂング
竣工 1974年6月

東京駅八重洲北口を出て正面、鈍く光る構造物が在る。

あからさまに70sスペーシーを醸し出すこのビル、グランドピアノをモチーフにしたらしい。
確かに緩やかな側面のカーブはメロディを奏でているが、その音は冷たく、エッジの効いた印象を受ける。
小学生の頃、江戸川乱歩の「鉄仮面」を読んだ時の感覚に近い。

スペーシー。
1969年のアポロの月面着陸。そして、

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戦前、コンクリ、ハードボイルド (岩本町 北原ビル)【東京フォトジェニック】

戦前、コンクリ、ハードボイルド (岩本町 北原ビル)【東京フォトジェニック】



岩本町 北原ビル
竣工 1927年

サブカルチャーの聖地、秋葉原。JRの中央改札を抜け、昭和通りに沿って神田川を渡ると、一角の空気は変わる。
戦前生まれ、鉄筋コンクリート、スクラッチタイル張りのビルヂング。

1927年。竣工と同時に金融恐慌が勃発。
阿鼻叫喚である。
その後すぐに戦争に巻き込まれながらも、戦後70年を生き抜いた。

剥き出し、傷だらけのコンクリートがハードボイルドに語る、昭

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青山。公団ビルヂング。(表参道 青山第一ビル)【東京フォトジェニック】

青山。公団ビルヂング。(表参道 青山第一ビル)【東京フォトジェニック】



青山第一ビル
竣工 1963年

都心の一等地、北青山に堂々と構える公団アパート。

1955年。戦後の住宅不足に伴い、大量な住宅供給供給を使命として、日本住宅公団が発足。
以降2004年のUR再編に至るまで、住宅インフラを支えてきた。

こうして産まれたシンプルで無機質な公団住宅が、現在になって存在感を増している。
本来画一的で無個性だった構造物が、歳をとり、時代という個性を帯びてきたの

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東京ファッショニスタ(秋葉原 中央改札口)【東京フォトジェニック】

東京ファッショニスタ(秋葉原 中央改札口)【東京フォトジェニック】



東京。様々な時代・カルチャーがカオスする街。
時代・カルチャーへの理解者が集う街。

そして、最高の20代に出逢う。

良質なプロダクト、良質なカルチャーを求め続け、自分の生き方を示していく。
そんな人生を全て受け止める場所をこの街は備える。

思い描いていた"東京フォトジェニック"を、ファッションで教えてくれた。
20代は、カッコいい。

東京フォトジェニック ★★★★★
カルチャー

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消えた動脈(岩本町 内環状線岩本町ジャンクション跡)【東京フォトジェニック】

消えた動脈(岩本町 内環状線岩本町ジャンクション跡)【東京フォトジェニック】



岩本町交差点 1号上野線
開業 1969年

「都心の大動脈」などというように、交通インフラは血液に例えられる。
血液の流れが変われば街も変わる。

岩本町交差点直上、首都高上野線に残る突き出した構造体がある。高速道路をぶった切ったような断面。「首都高内環状線計画」の遺構だ。

内環状線は錦糸町を起点とし、岩本町、飯田橋を結び中野坂上へ。そのまま首都高練馬線(中止)に接続し練馬へ向かう計画

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重厚なフランジを聴く(東武浅草駅大カーブ)【東京フォトジェニック】

重厚なフランジを聴く(東武浅草駅大カーブ)【東京フォトジェニック】



東武浅草駅
開業 1931年

半径100m、直角に折れる大カーブ。

昭和6年、銀座線への接続を図るために隣駅から線路を伸ばしたが、横向きの土地しか確保できず、このカーブが生まれた。

線路と台車がゆっくりと軋轢あい、耐え切れず溢れるフランジ音。

そして、モスグリーンの鉄骨で組まれた重厚な高架を見上げると、改めて気づくことになる。
ターミナル。
誰かの出発地であり、到着地であること。
重厚

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