マガジン

  • 東京フォトジェニック

    東京ってなんだ。それは様々な時代がカオスする場所。それはミクロでもマクロでも楽しめる、日本最大のアミューズメントパーク。知れば知るほどへんてこな街の、へんてこフォトジェニックへようこそ。

  • 悲劇のヒロイン

    生活、虚無、性悪説 傷ついた過去ばかり思い出して、呼吸をする。 前を向けない20代の半分実話、創作ショートストーリー

  • クソブログ

    2018年秋。 日常の"クソ"をぶちまけるWebマガジン、ここに誕生。

最近の記事

無題

縁っていうのは酷なもので、どんなに時間をかけて育んだものでも、別れの時が来れば振り出しに戻る、もう二度と会えなくなる場合もある、その繰り返しだ。 僕はそういった切れ目が生傷になって、ふとした時、例えば何となくバス待ちをしている、喫煙所でタバコをふかしている、そんなときにはっきりした記憶でグサッと刺される。 その度に「もうやめてくれ。俺が悪かった。やめてくれ」って、バス停の時刻表、喫煙所向かいのネオンに意味もなくお祈りするのである。 縁の切れ目は突然にやってくる。長く付き

    • トゥエンティーンエイジャー(1)

      20〇〇年2月16日 7時12分 東京都新宿区 都内は初雪の予報だった。 急行電車が都心に近付くにつれ霧雨は粉雪に変わって、街は薄い膜を張ったみたいに白くぼやけている。 改札を抜けると、新宿は静寂していた。 まるで雪の一粒一粒が音を吸い込んでしまったみたいに。 駅前の歩道を渡った角地のコーヒーショップに入ってカフェラテを注文する。 実は今日、私のスケジュールは空白だった。 この肌寒さを感じながら一人で過ごすにはあまりにも窮屈だから、街に出た。 カウンターから交差点を眺め

      • アフターストーリー

        『4月上旬・アフターストーリー』 あの人がいつも通り生活を続けているのがムカつく。 私より不幸になればいいのに。 死んじゃえ。 インスタのストーリーは非表示にしているけど、ついつい開いては勝手に傷ついてしまう、なんの進捗もない毎日で。 駅前の家電量販店の前を通れば、「新生活応援キャンペーン」だの。うるせー。 お前らに生活応援されるほど人生頑張ってないしね。 4月の新宿駅は一年を通じて一番色気がない。春先に漬け込まれてる空気が嫌い。 街は少し小躍りしている(よ

        • 珈琲と恋愛

          『9月中旬・雨』 彼女を振った。 その日は夏の熱気と冬の肌感を雑に混ぜ込んだような雨模様で、街全体がジトッと湿っている。昼にも関わらず黒いコンクリートに反射する車のテールがよく映えた。 僕たちは12時ちょうどにA5出口で待ち合わせをして、いつもの喫茶店に入る。 ビニール傘を畳んでドアチャイムを鳴らす。 暖黄光に照らされた店内は外の空気のせいか、いつもより薄暗い。 お客さんは僕たちを含めて2組。(この店はランチを出さないから昼時が空くのだ) 古いJBLから、ボブディラン

        無題

        マガジン

        • 東京フォトジェニック
          21本
        • 悲劇のヒロイン
          5本
        • クソブログ
          1本

        記事

          線路上の羊

          『5月上旬・夕刻』 18時、新橋駅烏森口で待ち合わせをした。 デーティングアプリで知り合った子だ。 大学の教授室に寄ってきたとかなんとかで、15分遅れてくるという。 特にどうということもなく、とりあえず一服する。 喫煙所では団塊がひたすらに煙を浴びていた。無言。 新橋の喫煙所はとりわけ異空間だ。 張り詰めた空気に残る余白を山手線のフランジが埋めていく。 彼らは何を考えているのだろう。 斜に構えた人間観察を続けながら、自分はといえばリクスー。 今日の三次面接は、暖簾に腕

          線路上の羊

          倦怠と八畳

          『2月某日・曇り』 遮光カーテンのせいで僕たちの夜明けは遅かった。 冷たい外気が窓の隙間を伝って漏れ込んでくるけど、その鋭さは昼だろうが夜だろうが変わらない。 おそらく、そのせいなのだろう。 布団のシワをたぐり寄せながらもう一度だけキスを交わすと、彼女は上半身を起こしてタバコに火をつけた。 煙が部屋のなかをゆっくりと渦巻くのを、僕は天井を見上げ眺めていた。 「なー。、、、電気代の支払い何日までだっけ」 「知らないよ。キミの家でしょ」 そうなんだけど、思い出せないモノは

          倦怠と八畳

          メタボリズムの時代(静岡新聞・静岡放送東京支社ビル)【東京フォトジェニック】

          静岡新聞・静岡放送東京支社ビル 竣工:1967年10月 設計:丹下健三 新橋駅銀座口を降りて左手、東京方面へ向かう山手線が緩やかなカーブに差し掛かるあたり。 まるで幹と枝、大樹を連想させる構造体がある。 オフィス街の無機質なビルヂングの中で一際目立つこの建物は、かつての日本人が夢見た来るべき建築の遺産であった。 メタボリズム。 名の通り、膨張する建築。 1960年代の初期、戦後日本は高度経済成長に差しかかり、急速に都市化が進む。 成長し続ける都市。リアルタイムで

          メタボリズムの時代(静岡新聞・静岡放送東京支社ビル)【東京フォトジェニック】

          取り残された曲線(晴海橋梁)【東京フォトジェニック】

          東京都港湾局専用線 晴海橋梁 (江東区晴海) 東京臨海副都心計画によって大規模な再開発が行われた江東区・晴海。 立方体オブジェクトに佇む曲線。 東京都港湾局専用線 晴海橋梁である。 かつて石炭を主に貨物輸送を行っていた専用線は、モータリゼーションに飲まれ89年に廃線。 晴海橋梁はその数少ない遺構だ。 単線の線路やアーチがそのまま残っており、周りの景色とのコントラストが高い。 まるで廃線当日を境に空間が閉ざされてしまったように。 遊歩道として整備される予定であったが進

          取り残された曲線(晴海橋梁)【東京フォトジェニック】

          『ドッキリ!検尿カップ』で仕掛け人がドッキリ食らう件【クソブログ】

          『ドッキリ!検尿カップ』で仕掛け人がドッキリ食らう件 そりゃビビったよ。 ドッキリした。 やられた。 先日、iPhoneの保護フィルムが欲しくてDAISOに行った。 DAISOといえば、コモディティの代名詞ともいえる100均ショップである。 事は保護フィルムを手に取って、さあレジに向かおうって時に起きた。 向かいの棚のパーティグッズコーナーに、何か、在る。 『ドッキリ!検尿カップ』また随分と悪ふざけなパーティグッズが置いているな。こんなカップに緑茶でも入れら ※本品は

          『ドッキリ!検尿カップ』で仕掛け人がドッキリ食らう件【クソブログ】

          高級マンションを育てた時代(渋谷 代官山コーポラス) 【東京フォトジェニック】

          2017年9月に四谷コーポラスの解体が始まったことは、フリークにとってビッグニュースだった。 四谷コーポラスは日本初の民間分譲マンションであり、高級マンション"コーポラス シリーズ"の先駆けとして1956年に竣工された。 いわば ・来たる核家族時代の象徴 ・高級物件としての集合住宅のモチーフ であった。 代官山コーポラスはその翌年に竣工され、四谷の血筋を引く貴重な文化遺産である。 メゾネット、洋式トイレ、核家族型の間取り、高度経済成長期の憧れが集約されている。 道路に

          高級マンションを育てた時代(渋谷 代官山コーポラス) 【東京フォトジェニック】

          Tokyo Subcultecture(北千住『昭和サロン 小柳』) 【東京フォトジェニック】

          以前、noteで北千住の長屋建築群を扱ったことがある。 この長屋建築群・表側の通りに一際DOPEな建物がある。 昭和サロン 小柳(北千住) ベースはよくある二階建て店舗住宅ではあるが、壁一面に展覧会のパンフレット。 岡本太郎・藤田嗣治・草間彌生,,日本の近代美術を彩った芸術家の名が目に付く。 しかも展覧会のスケジュールは比較的新しく、この居酒屋、未だに呼吸をしている。 (webに潜入記事があるので興味のある人は探してみてほしい) 面白いことに、こういった建物に出会った時

          Tokyo Subcultecture(北千住『昭和サロン 小柳』) 【東京フォトジェニック】

          キープアウト・アンダーグラウンド(東京メトロ 上野検車区 踏切)【東京フォトジェニック】

          東京メトロ 銀座線 上野検車区 踏切 銀座線の車両基地に在る踏切。 銀座線は通常の電車と異なり、3本目のレールから集電する第三軌条方式を採用している。 そのため、線路内に人が立ち入り感電しないよう、策で線路が塞がれている。 車庫から地下に伸びる線路は単線で、都会にしては珍しい。 たった一本の線路が地下に潜り行く様はどこか心細い。 独特度 ★★★☆☆ モグラ度 ★★★☆☆ 心細さ ★★★☆☆ 編集:望月怜史 【Alica ギター担当】 Twitter:@alic

          キープアウト・アンダーグラウンド(東京メトロ 上野検車区 踏切)【東京フォトジェニック】

          吉原カフェー探訪 その壱(千束四丁目 『ゆうらく』)【東京フォトジェニック】

          千束四丁目 カフェー建築 『ゆうらく』 関東最大の色街・新吉原 明暦の大火により千束に移って三世紀半。 日本の一つのカルチャーを支えてきた。 江戸幕府から続く吉原遊郭は赤線(警察公認の売春地帯)として栄えた。 しかし戦後、GHQの指導により規制が強まり、1958年、売春防止法の施行に併せて赤線は廃止となる。 現在も新吉原には数多くの風俗店が有るが、 赤線時代の風俗店はカフェー建築と呼ばれる飲食店(カフェ)を模した構造物が多く、独特の装いである。 今回の建物もその一つ

          吉原カフェー探訪 その壱(千束四丁目 『ゆうらく』)【東京フォトジェニック】

          脈を打つ地下空間(東京メトロ 四谷三丁目駅)【東京フォトジェニック】

          東京メトロ 四谷三丁目駅 開業 1959年3月15日 大友克洋の"AKIRA"で印象深いシーンがある。 ネオ東京の地下深くに冷凍されているアキラが復活する瞬間だ。 あの、アキラの封印されているドームは配管が血管のように張り巡らされている。 さながら臓器のようだ。 東京の地下鉄は使用できる地下の体積が狭いために、よく配管が天井に溢れている。 この光景に出会う度、僕はAKIRAのあのシーンを重ね、鳥肌が立つほどの生命感を真近に感じてしまう。 毛細血管のごとく敷かれた配管。

          脈を打つ地下空間(東京メトロ 四谷三丁目駅)【東京フォトジェニック】

          新宿サクラダファミリア(新宿 東京都庁第一本庁舎)【東京フォトジェニック】

          東京都庁 第一本庁舎 竣工 1991年 東京都庁は工事現場界隈では「サクラダファミリア」と呼ばれるらしい。 その複雑な構造から、半永久的に補修が続けられている未完成の構造物なのだ。 数年前に出逢った工事担当者はこう呟いていた。 「シンプルなデザインにすれば良かったものを、毎年修繕費が嵩んで仕方ないらしい。まあ、俺らにとっちゃ有難いんだけれども」 1991年の竣工から間もなく30年を迎える。 日本近代建築巨匠、丹下健三氏が描いた新しい東京のモチーフ。しかしこの建物が遺

          新宿サクラダファミリア(新宿 東京都庁第一本庁舎)【東京フォトジェニック】

          哀愁の鉄仮面(八重洲 新槇町ビルヂング)【東京フォトジェニック】

          新槇町ビルヂング 竣工 1974年6月 東京駅八重洲北口を出て正面、鈍く光る構造物が在る。 あからさまに70sスペーシーを醸し出すこのビル、グランドピアノをモチーフにしたらしい。 確かに緩やかな側面のカーブはメロディを奏でているが、その音は冷たく、エッジの効いた印象を受ける。 小学生の頃、江戸川乱歩の「鉄仮面」を読んだ時の感覚に近い。 スペーシー。 1969年のアポロの月面着陸。そして、1970年の大阪万博。人々は宇宙との距離を狭め、未来を実感したのだろう。 そうし

          哀愁の鉄仮面(八重洲 新槇町ビルヂング)【東京フォトジェニック】