マガジンのカバー画像

言わんでもええがなエッセイ 好きだの嫌いだの

11
身の回りのものについて、好きだの嫌いだの書いたものを掲載していきます。各noteごとのテーマは、連想的につないで決めていきます。「好き」の中に「嫌い」を、「嫌い」の中に「好き」を…
運営しているクリエイター

記事一覧

シュークリームの食べ方が分からない

シュークリームの食べ方が分からない

 シュークリームは好きやけど、食べるのが難しい。難しいと言っても、手を付けられない程ではない。手に取って食べる物やから。
 なんでも、シュークリームには爆弾処理みたいな心得が必要で、食べるときはいつも、味に関係のない計算をさせられる。

 クリームは内側に圧を掛けすぎると飛び出すし、中盤には脇からクリームが落ちようとするし、クリームが手に付くとなんか焦るし。シュークリームは人を慎重にさせたり、焦ら

もっとみる
新しい靴、嫌い。

新しい靴、嫌い。

 靴はどちらかと言うと嫌いだ。新しい靴を履くと、足の居心地が分からなくなる。なんとなく試着した時には気づかない。新しさに気を取られ、本当に合っているかどうかの判断を忘れる。しばらく新しい靴で歩いていると、じわじわと違和感に気づく。
 ひとたび気がつくと違和感が頭の中で増殖し、身体のあちこちに転移する。見るもの聞くもの匂うもの、すべてが靴の感覚の後ろに隠れる。おぼろな感覚で町を漂う靴に支配された私。

もっとみる
靴下プレゼントは喜ばれる

靴下プレゼントは喜ばれる

 靴下はどちらかと言うと好き。

 年間を通して振り返ると、外に出る直前に履くことが多い。どこかへ行くためのルーティーンの最終段階。靴下を履くと屋外仕様の私が完成する。靴下を履くわずかな時間、気持ちにちょっとだけハリが生まれる。これから行くべきところがある程度、決まっているからかもしれない。
 靴下を履くと、井上陽水の「傘がない」を口ずさむ。「行かな〜くちゃ、君に〜逢いに行かなくちゃ」ってところ。

もっとみる
「自分とは何か?」「他人のつぎはぎだ。」

「自分とは何か?」「他人のつぎはぎだ。」

 自我に対しては好きとか嫌いとかない。お風呂が好きとかそういう感じで「自我が好き」とは言えない。それは、自我という言葉のイメージが人それぞれで、はっきりコレと言えないからだろう。よく分からない概念だ。
 でも、「自我」という言葉は、どちらかと言うと嫌い。と言うのも、「自我」はアイデンティティとか人格という言葉と似たような感じで使われることがある。そこから、「自我」と言うと何か単一の素材でできた塊を

もっとみる
道具を使うと身体が変わる

道具を使うと身体が変わる

 道具は好き。道具にもよるが、好き。便利やし。ないと困るし。なんか、道具の意志に合わせなあかん不気味さもいいし。

 三年前、30歳で初めてカレーを作った。簡単だと聞いていたけど、疲れた。できたという達成感に満たされて、食欲はあまり湧かなかった。
 初めてのことは疲れる。慣れない包丁、慣れない火加減、慣れないピーラー、慣れないジャガイモ。身体の動きがチグハグになる。ジャガイモの持ち方も、ピーラーの

もっとみる
 皮膚は敏感に快不快を発生させる

 皮膚は敏感に快不快を発生させる

 皮膚はどちらかと言うと好きだ。

 皮膚は目に見えるものだけでなく、周囲の人間の熱気や気まずさなど、目に見えないものも感じている。皮膚が荒れて敏感なときは外界の情報量が多くて疲れる。ひどいときは誰に会う気もしないし、仕事などで人と会っていても「早く帰って風呂に入りたい」と思っている。皮膚が荒れているときは風呂に入ると落ち着く。スッキリする。肌にくっついた不要な情報を洗い流すような気分でサッパリ。

もっとみる
脱力しながら推進する身体

脱力しながら推進する身体

 泳ぐのはどちらかと言うと好き。泳ぎに行くのは面倒くさいけど、まあ好き。去年の夏は水の中でバチャバチャやりたくてプールに通った。水の中の感覚が恋しくなって。
 でも、広い水の中は静かで得体知れず異質で不気味で気色悪い。気色悪いからバチャバチャやっつけたくなる。やっつけると、自分のパワーが水にはっきり痕跡を残しながら伝わるのが見える。ほわわなエネルギー流体。アレを見ると、こんなパワーを持っていたのか

もっとみる
喫煙者はプールに通うといい

喫煙者はプールに通うといい

 スポーツをやるのは嫌いな方だ。「健康のために」って感じが良くない。そこには後ろめたさがない。「健康のために」というのは、光に満ちた公道で胸を張っているようで、馬鹿正直な感じがする。良いことで、正しいことではあるが、眩しすぎて影がない。どこか嘘くさい気がする。「健康のためにスポーツを始めた」というのは、当たり前すぎてなんだか恥ずかしい。

 しかしこの夏、私は市民プールに通っていた。水の中でバチャ

もっとみる
排泄系スポーツ「排便」

排泄系スポーツ「排便」

 排便はどちらかと言うと好きだ。嫌いと言ってもやめられないが、ちょっとしたスポーツみたいな所がいい。「今、来てるな」という便意を合図に試合が始まるわけだ。緊張感がある。緊張感の大小によって、「やばい」「まだまだいける」などの程度がわかる。私は「まだまだいける」の状態なら、便意を遊ばしておくことが多い。

 トイレに行くまでの間、便の動きを読み切り、遊ばせる。これはもう、頭脳戦だ。便意は遊ばせる程に

もっとみる
青春けむり健康法

青春けむり健康法

 タバコは好きだ。習慣的に吸い始めたのは二十三の頃からだから、喫煙者としては遅咲きだ。その頃私は「なんで死ぬのに生きなあかんねん」という青春の暗い悩みに真剣だった。生きる意味の無さに絶望し、学業を捨て、留年した。哲学書に手を出した。読み漁っては分かったような分からないような気分を得、コクヨの「LEVEL BOOK」に日夜、自分とは?、生きるとは?、死ぬとは?、などの良からぬ問答を書き殴っていた。出

もっとみる
洟垂れの三十二歳

洟垂れの三十二歳

 鼻水はどちらかと言うと嫌いだ。冬は鼻風邪、春は花粉症。今年の夏は市民プールに通ってみたので、プール後にも洟が垂れていた。その上、秋に花粉症も加わった。十代の頃は鼻水と言えば春だったが、もう鼻水で季節を感じる体ではなくなったらしい。一年を通して相当の鼻水を出す。洟垂れの三十二歳。嫌な言葉だ。鼻水は落ちる兆しもなく落ちるから気に食わない。外出先で止まらないのも憂鬱だ。しかし幸い、「パブロン鼻炎カプセ

もっとみる