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巨匠・新藤兼人~鬼と出会った夏
日本映画界の巨匠・新藤兼人監督が鬼籍に入られてから、今年5月で11年になる。
早い。もうそんなに経つのか・・・。
私はたった一度だけ、ご本人にお目にかかったことがある。
四半世紀ほど前、中国地方の小さな島で。
町おこしの一環で公募したテレビドラマ脚本コンテストに入選し、表彰式へ招待されたのだ。
当時私は20代後半、関西で脚本家を目指し勉強していた。
初の最優秀賞受賞。作品はドラマ化されるという
「イタタ・・・」の映画館
子どもの頃、私の地元には3つの映画館があった。
ABCにわけるとA館は邦画専門、B館は洋画、C館はアダルト向け。(当時は「エッチな映画館」と呼んでいた。駅前やアーケードの立て看板には過激なタイトルとなまめかしく悶える女体が描かれ、私たち子どもはうつむいて通り過ぎたものだ)
なので人生初の劇場映画もA館かB館で観たはずだが――家のテレビで放映された作品とごっちゃになり、どれだかわからない。
ただB
📙珠玉の本とワールドカップ⚽
中東カタールで熱戦が繰り広げられているサッカーワールドカップ。テレビやネットでも盛んに取り上げられ、日本チームの奮闘ぶりもさることながら、スタジアム席のゴミ拾いをする日本人サポーターの話題など「エライなあ」と感心させられる。
が、せいぜいその程度で、私自身はテレビ観戦はしない。あとで結果を知り、「よく頑張ったね」「惜しかったね」と思うくらい。
ワールドカップの舞台に立てるだけで大したことだか
【本の話】名作は色褪せない
先日某見逃し番組サイトで、昭和のテレビドラマを観た。
主役はとうに還暦を過ぎたベテラン女優で、当時二十代前半だろうか。その瑞々しい美しさもだが、脚本、台詞まわし、カメラアングル、役者たちの演技……どれをとっても素晴らしく、現代ドラマにはない迫力に圧倒された。
――本物の名作は、どれほど時間が経っても色褪せないのだな……。
しみじみ感服したのだが、同じ感想をこの小説にも。
『飢餓海峡』(水上勉著
【本の話】おそるべき子どもだまし
人も本も、めぐり合わせには”きっかけ„がある。
この『お江戸の百太郎』(岩崎書店)の場合、昨年夏の著者の訃報だった。
『ズッコケ三人組シリーズ』で知られる児童文学作家・那須正幹氏。
原爆(戦争)を題材にした作品も含め、その筆力に感服し、これまで多数目を通してきた。
だが時代物だけは別で……子どもだましの内容にガッカリしたくない。
その思い込みで長年スルーしてきたこの作品。
今回、著者を悼む意味で
【本の話】〈木曜殺人クラブ〉へようこそ!
ミステリー小説を選ぶのは、博打に似ている。
「この人なら大丈夫!」と、作家名だけで安心して手にとる作品もあるが、よく知らない作家――しかも海外の翻訳本となると、脳内で警戒アラームが作動する。
ピピッ。
「タイトルは魅力的だけど、中身はどうよ?」
ピピッ。
「残虐シーンが多いだけで、結末はあっけないのでは?」
ピピッ。
「登場人物が多すぎて混乱するかも」
などとアレコレ疑い、即買いを躊躇するのだ。
K子が遺してくれたもの
体の奥で振動がする。
ブル、ブルルル……
小さく、かすかなエンジン音。
でも、たしかに聞こえるのだ。
心臓の鼓動に伴走するかのように――。
「こんばんは。今ええん?」
10月初め、友人から電話があった。時刻は夜の8時過ぎ。
「ええよ。どしたん?」
彼女は関西在住で私は九州。なのに会話は広島弁。34年前広島の大学で出会い、現在に至るからだ。コロナ禍で数年会っていないが、電話やラインで
【本の話】先生・たこ焼き・ズッコケ三人組
世の中には、不思議なめぐり合わせがある。私にとって『それいけズッコケ三人組』がそうだ。
最初に手にしたのは、四半世紀以上も昔。当時広島の放送局でインタビュー番組を担当していて、児童文学作家の那須正幹先生に出演を依頼した。
入社二年目か三年目のペーペーディレクター。読書は好きだが、児童書なんて子どもの頃以来。慌てて『ズッコケシリーズ』を数冊読み飛ばし、打合せに備えた。
山口県内のご自宅
【本の話】世界でいちばん幸せになる方法
最初にこの本を手に取ったとき、いわゆる〈ハウツー本〉かと思った。チャーミングなほほえみを浮かべるおじいちゃんと、軽やかな朱文字のタイトル『世界でいちばん幸せな男』。
ああ、これはきっと〈祖父から孫へ贈る人生の秘訣〉的ブックで、「幸せはキミの足元にある」なんて月並みなアドバイスが書かれていそう。棚へ戻しかけ、中央の小さな文字に目が留まった。『101歳、アウシュヴィッツ生存者』――えっ⁉
改めて
ごめんね、NARITA
昨年二月、カナダを旅した。学生時代からの友人とオーロラを観に出かけたのである。
その旅に向けて購入したのが、このデジタルカメラ。
「コンパクトで性能が良くて、素人でもオーロラ撮影ができるやつ下さい!」
家電ショップのお兄さんにあれこれ要望を伝え、最終的に決め手となったのは、女子好みの小洒落たデザイン。価格は五万円弱だった。
「いつか本物のオーロラを観たいねえ」
友人とそんな話をしたのが、