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良かった小説

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小説や漫画の中で話が長いものを読むのが苦手。 そんな私が夢中で読めた小説を載せていきます。 最高でした。もっと気持ちは熱くなっているのですが、表現が上手くできません。つまり、とに…
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2024年1月の記事一覧

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346

「69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 …」

ラップタイムを大声で読み上げる彼女はしかし、ジャージが似合わない。スラリと背が高く、艶々したショートボブで、風になびく髪をサラッとかきあげる様は、私がカメラマンなら夢中でシャッターをきっている。

そんなモデルのような陸上部のマネージャーに一目惚れをした。中学からやっていたバスケ(膝をオスグッドにしてまでのめ

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小説 | ならわし (①)

小説 | ならわし (①)



たとえば、こういうことがまかり通る世の中であったとして──。

子供を生むことができない妻は、夫の子を宿した侍女の出産に立ち会うのだが、陣痛が始まった侍女を、自分の股の間に挟むようにして座るのだ。そして子が生まれるまで、まるで侍女と一体化したように苦しむ演技をする。
医療に頼らず、祈りで生む。
しかし祈りは届かず、母体の不運な命が尽きる時、運ばれて介抱されるのはなんと、演技をしていた妻の方なの

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短編小説 | Message~私はあなたを許す~

短編小説 | Message~私はあなたを許す~

どこかの、やさしい、だれかは
わかっているよ。

あなたが、こどもをあいせなくて
くるしんだこと。
そのことを、だれにも、うちあけられずに
くるしんだこと。

こどもから、にげるように
トイレにこもったこと。
SNSにいぞんして、げんじつから
にげていたこと。

ゆうがた、なきさけぶ、こどものこえに
みみをふさいで、ないたこと。

こどもの、ねがおに
なきながらあやまった、ひび。

どこかの、だれ

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未練の先に。

未練の先に。

1章:朝「じゃあ、母さん行ってくるね」

「・・・」

静かな朝。何も言わない母さんを背に俺は玄関を出た。





“ジリリリリ…”

「ん〜…もう朝かあ」

目覚ましのアラームで15歳の俺は目を覚ました。

またあの夢…。最近よく見るな…。

寝起きで頭が働かない中、1階から母さんの呼ぶ声が響く。

「満(ミチル)ー!いつまで寝てるの!朝ご飯出来たわよ!」

俺は慌ててベットから出ると支度

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