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エッセイ・コラム

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2023年7月の記事一覧

言葉を捨てられる成長を

言葉を捨てられる成長を

大学の時分、「本を読まない文系は死んだ方が良い」という言葉を残した中国文学の先生がいた話を以前したことがあった。
個人的にその先生は結構好きでちゃんと講義にも通っていたのだが、講義中にある漢詩を紹介してくれた。

作者もタイトルも忘れてしまったのだが、内容としては「若い頃に書いた文章は年を重ねるとその未熟さを感じ、全て捨ててしまう。だから手元には何の文章も残ってはいないのだ」みたいな内容だった。

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「君たちはどう生きるか」をみてきた

「君たちはどう生きるか」をみてきた

【※ネタバレがふんだんにあります】

最近話題の映画「君たちはどう生きるか」を見てきた。
ジブリ映画には幼年期から多く触れてきた。「となりのトトロ」「平成狸合戦ぽんぽこ」「おもひでぽろぽろ」「火垂るの墓」「魔女の宅急便」「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」など、あげればキリがない。

「君たちはどう生きるか」を見ても思うが、ジブリ作品は「現実に限りなく近く、しかし現実から遊離した世界」を描くこと

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「バイビー」は生きていた

「バイビー」は生きていた

この世の中には、かつて使われていたにも関わらず時とともに使われなくなった「死語」がたくさんある。

いま「死語」となっているものは、バブルの時代なんかに多く生まれたものが多い。「チョベリグ(超ベリーグッド)・チョベリバ(超ベリーバッド)」とか、「許してちょんまげ(フランクな『許してください』『見逃してください』)」とか、「ナウなヤングにバカウケ!(若者の間で流行っている)」とか、一事が万事こんな調

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「ありのままに描く」って意外と難しい

「ありのままに描く」って意外と難しい

「なんか上手に文章を書けなくて…」というひとは少なくない。
曲がりなりにも文章を書く仕事をしているわたしも「どうやったら文章を書けるようになるか」と聞かれることもある。

別に私もリルケよろしく流麗な言葉を紡げるわけではなく、文章がうまいと自負しているわけでもない。でもそんな問いを投げられたら「知らねえよ」というわけにもいかず、「うーん、こんな風にやったらいいんじゃないんですかねえ」などと自分でも

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自立と自律が大人の条件

自立と自律が大人の条件

子どもから大人になる過程は、依存から自立に向かう過程である。

小さな頃は食事から排泄から何から何まで親に依存していたわけだが、時間とともに食事や排泄を自らやってみたり(失敗もするが)、逆にすすんで手伝いはじめたりもする。そして次第にお金を稼いで、勝手に家を出て行って一人で暮らすようになる。
こんな風に具体的な行為について、ひとり立ちをすることは「自立」と呼ばれる。

自立を究極的に追求すると自給

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若さの価値を知るのは年を重ねてから

若さの価値を知るのは年を重ねてから

小学生や中学生だった頃、どこかに訪問すると必ず年を取った人が「キミたちのように若い子たちにあって元気をもらいました」といったことを言っていたものだ。

当時、「子どもにあって元気になるなら苦労ないだろ」と極めて冷淡な感想を抱いていた私だったが、30代に入ったときにふと「若い子のエネルギー」を感じることが増えた。

会社などで20代前半の社会人との関わりを持つとき、彼ら・彼女らが酒の場なんかでわいわ

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おめでたさと思考停止

おめでたさと思考停止

朝井リョウが「正欲」という本で

というひと言を残している。

現在のメディアを巡る環境は多様化・多元化している。大手メディアの言っていることであれば正しいという認識もいまや薄れ、絶対的な規範のようなものはもうない。

こういう環境のなかで、言うなれば「おめでたい思想」みたいなものをよく見るようになった。
陰謀論とか都市伝説とか政治や経済に関するトンデモ理論など、どこから見ても「そんなわけないだろ

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