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エッセイ・コラム

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2023年2月の記事一覧

変わりゆく日常への一瞥は

変わりゆく日常への一瞥は

新型コロナで世の中が大きく変化したとはよく言われているが、振り返ってみるともう3年くらいすったもんだを続けながらいろんなものが定着したと思う。

多くの企業で自宅勤務やオンライン会議が導入されて久しい。
企業の上役はああでもないこうでもないとそれらしい理由を並び立ててオンラインミーティングや時差出勤などに抵抗を示してきたわけだが、コロナになってからあれよあれよという間に導入した。今や仕事の風景が変

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意志もなく時間が過ぎる日々たちに

意志もなく時間が過ぎる日々たちに

サラリーマンにとっての仕事とは、究極的にいうと「人の言うことを聞くこと」に尽きる。
仕事はどこからともなく上から降ってきて、そしてそれをいかに効率的に処理するかが問われる。その処理の過程で生産性の高さや能率的なやり方なんかを自分なりに(時には会社をあげて)編み出すことによって、組織全体の生産性が高まったりしていく、という話である。

それだけに、サラリーマンとしての人生とは、意志を介在させなくとも

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ハンドボールくらいの大きさのおにぎりを放課後まで食べ続けていた同級生の話

ハンドボールくらいの大きさのおにぎりを放課後まで食べ続けていた同級生の話

学校は面白い。
公立であれば、ただ「そのへんに住んでいる」という理由だけで同じ年の人間が集まってくる。名前や性格はもちろんだが、家庭環境から何から何まで違うやつもいたりする。
高校になると学力という区切りは出てくるが、そうはいっても大体同じような地域に住んでいる人間が高校にも集まるものだ。

そのなかでも、なんかミステリアスなやつというのは学年にひとりふたりくらいいるものである。

私の高校の時の

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光が当たらぬ世界に思いが至る感性でありたい

人間は弱いもので、自分が頑張っているととかく「すごいだろう、おれはこんなにやっている」とマウントを取りたがるものである。
そして、どうしようもないやつだと「自分がやってきたもの以外は評価に値しない」と言わんばかりの偏狭な世界観を持ち、そして実際に口にする人間もいる。
さらにそれを悪気なくいっている人間もいたりして、そばにいるときにはきまって「いやあそこまでやられているのはさすがですね」などと口にし

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20年ぶりくらいに「かわいそうなぞう」を読んだ

20年ぶりくらいに「かわいそうなぞう」を読んだ

知り合いに本の読み聞かせをしている人がいる。
絵本なんかを読み聞かせるらしく「何かおすすめはあるか」と聞いたら「『かわいそうなぞう』とかいいですよ」と言われた。

「かわいそうなぞう」は非常に有名な作品である。簡単なあらすじ(というかネタバレ)だが、以下の通りだ。
第二次世界大戦期、空襲などで上野動物園の動物たちが逃亡して人に危害を加えぬよう殺処分され、最後に三頭の象が残る。象を殺すために毒入りの

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ドスのきいた大人が少ない

ドスのきいた大人が少ない

祖父が亡くなった時だったか、遺品の整理をしていた時に祖父の若い頃の写真を見つけたことがあった。

孫からすれば祖父など甚だ与し易い対象の1人であり、およそ畏怖の念など持っていなかった。

ただ、写真に写る若かりし頃の祖父の目つきは極めて鋭く、少しでも目があったら殴られそうなくらいの迫力があった。冗談抜きで「なんだてめえ殺すぞ」みたいな目でカメラを睨みつけているのだ。とにもかくにも目つきが現代では見

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身のほどを知ること〜私たちは何者でもない〜

身のほどを知ること〜私たちは何者でもない〜

SNSをみていたりすると、有名人のツイートが勝手に炎上したりしてワイワイとにぎやかになっていたりすることがある。
そのなかに批判じみたものなんかがあったりして、読んでいて「ふーん」と思いながらふと、SNSというのはこれまで会うこと・話すことすらままならなかったような有名人に対して批判をかませる空間であるということに気づいたのである。

その権利を大いに利用して批判をしている人間は星の数ほどいる。

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書くこと #とは

書くこと #とは

書くこととは自分にとって、何なのだろう。そんな疑問に向き合うきっかけになる文章に出会った。
講談社の「野間文芸新人賞」を受賞した町屋良平さんが、同賞の受賞を受けてしたためた文章だ。(……は中略)

そもそも新聞記事など、小説とは世界は異なるし、文量と質ともに比肩しうるところなどまずない。
ただ、曲がりなりにも「文章を書く」ということを仕事にしている身として、非常に考えさせられることばたちである。

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退屈を享受できないわたしたち

退屈を享受できないわたしたち

スマホが人口に膾炙してしばらくになるが、最近「何もしていないひと」がすっかり少なくなったなと思う。

私はスマホの楽しいアプリやゲームを一切やらないので電車でやることがなければぼーっとしているか本を読んでいるかなのだが、近くをちらちらみるとみなスマホに没入して動画を見たりゲームをしたりしている。
小さなころ、電車に乗っていた時を思い返してみる。当然本を読んだり新聞を読んだりしているひともいたけれど

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