マガジンのカバー画像

春と私の小さな宇宙

73
少し不思議で哲学チックな物語です。自分でも何故こんな話を書いたのかわかりません。
運営しているクリエイター

2023年5月の記事一覧

『春と私の小さな宇宙』 その27

『春と私の小さな宇宙』 その27

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『君の目的を知りたい』

ミハエルはハルの脳内に直接、語りかけてきた。言語は日本語で、 この国に敬意を表しているようであった。

ハルは警戒していた。恐らく、ずっと隠していたものは明らかになると悟ったからだ。

開いては

もっとみる
『春と私の小さな宇宙』 その26

『春と私の小さな宇宙』 その26

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

修羅場を見守っていたカラスが、黒い翼を広げ、飛び立った。

それを合図に飢えた怪物は雄叫びをあげてハルに襲いかかる。ハルは身構えて相手の動きを予測する。

刹那、周囲がスローモーションに見えた。ひどく、ゆっくり時が動く。熊の開

もっとみる
『春と私の小さな宇宙』 その25

『春と私の小さな宇宙』 その25

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

参拝が終わり、階段に向かう。

その途中、アキが何かを発見した。神社の右奥にうっすら道が見えたらしかった。

探検してみよう。
アキの提案に半ば強制的に付き合わされたハルは、仕方なく神社の裏側に向かった。

その道は参道と同じ

もっとみる
『春と私の小さな宇宙』 その24

『春と私の小さな宇宙』 その24

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



定期を見せ、バスを下りると人通りは少なく、出発前に晴れていた空が今は薄暗い雲に覆われていた。

かすかな光に当てられた山が暗く、黒い塊のようであった。その山に目的のR神社がある。

ハルたちが目指していたR神社は安産祈願

もっとみる
『春と私の小さな宇宙』 その23

『春と私の小さな宇宙』 その23

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



○ 小さな宇宙

調査を開始して二ヶ月の月日が過ぎた。

漆黒の世界から抜け出すために様々な情報を知った。

外の様子、ニンゲンの存在、世界 のルール、そして、言葉……。

それらは私にとって未知で壮大なものだった。知ら

もっとみる
『春と私の小さな宇宙』 その22

『春と私の小さな宇宙』 その22

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

脱出に成功したハルとミハエルは山を下った。

研究所を出ると外はすでに夜だった。 幼い身体で夜の山を走り抜ける。

「これでやっと故郷に帰れる。ありがとう」

「別に私も出たかったからいいわよ。この後だけど、私も一緒に・・・」

もっとみる
『春と私の小さな宇宙』 その21

『春と私の小さな宇宙』 その21

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

機関では一か月に一度、研究成果の集合会議がある。

その日に限り、機関の全研究員が集まる。その間、実験体のハルとミハエルは別々の部屋で待機していた。

ハルは実験室の扉にある電子錠に近づくと、暗証番号を打ち込む。研究員が打ち込

もっとみる
『春と私の小さな宇宙』 その20

『春と私の小さな宇宙』 その20

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

彼の名前はミハイルというらしい。

年齢はハルより二つ上の六歳。生まれた時から言葉をしゃべり、走り回れたため、故郷ではかなり有名だったそうだ。

ここに来たのは自分のことを知るためだと彼は言った。当然、頭の中に直接、語りかけて

もっとみる
『春と私の小さな宇宙』 その19

『春と私の小さな宇宙』 その19

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

久しぶりの我が家へ戻った。

ハルの小さな胸は軽く、上昇した心拍がほんのりとした温かさを身体中へ送り出している。

最初に出迎えたのは「母」の悲鳴だった。ハルを見た瞬間、「母」は目を見開き、絶叫したのだ。

バケモノが帰ってき

もっとみる
『春と私の小さな宇宙』 その18

『春と私の小さな宇宙』 その18

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ハルが初めて人間を処分したのは五歳になった時だった。

「父」と「母」と呼ばれるもの だった。

三歳で既にハルは地元の有名人だった。新聞記者が詰め掛け、様々な地方の新聞に彼女の天才ぶりが大きく取り上げられていた。

そんな時

もっとみる
『春と私の小さな宇宙』 その17

『春と私の小さな宇宙』 その17

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



その日は珍しく気温が高く、肌を撫でる風が暖かく吹いていた。まだ弱い冬の日光が町に降り注ぎ、冷えたコンクリートの道路を健気に温めている。外に出歩く者は多く、様々な人が行き交っていた。

日曜日。
ハルとアキはバス停の前に立

もっとみる
『春と私の小さな宇宙』 その16

『春と私の小さな宇宙』 その16

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ふ、ふ、ふ、そういうと思った。だけど残念! あたしはその難題を考えに考え抜き、 ついに! 導きだしてやったわ!」

ハルはアキの顔を見る。思わぬ返答だった。彼女はあの議題の解答を発見したというのだ。

興味をそそわれた。おそ

もっとみる
『春と私の小さな宇宙』 その15

『春と私の小さな宇宙』 その15

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第二章



ハルが家に帰宅すると、玄関でアキが出迎えた。腰に掛けていたエプロンを外しているのを見て、ハルは料理が完成したことを知る。

廊下の奥からカレーのにおいがした。ある程度の予想はついていた。アキが料理当番の時は八十

もっとみる
『春と私の小さな宇宙』 その14

『春と私の小さな宇宙』 その14

※ジャンル別不能の不思議な物語です。少し暗め。
※一人称と神視点が交互に切り替わります。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次に数字を知った。これも言葉の一種のようだった。物を数えるための記号だと学んだ。

いままで私は数の概念が無かった。漠然に物を数える考え自体はあったが、表現できるとは知らなかった。

以前、私はニンゲンの数を一人、二人と数えて

もっとみる