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繰り返し読みたい現代の話

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時事問題として取り上げましたが、現代の問題の基礎知識等を書いています。
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記事一覧

世界史編のあとがき

来し方を振り返る
さてこれまで「歴史の重み」として古代から現代まで世界史をお話してきました。読者の皆さんには何が教訓として心に残っているでしょうか?

例えば、通常の世界史の本には書かれていない以下などは、いかがでしょうか。
・覇権は儲からない(維持費が大変)
・西欧がアジアよりも経済力をつけたのは、1815年以降
 (西欧がアジアにずっと憧れていたのです。ゆえに、シノワズリ(中国趣味)、ジャポニ

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不安定な韓半島 北朝鮮の核ゲーム

つい先日北朝鮮による「人工衛星打ち上げ」の失敗が話題となりましたが、今回は朝鮮戦争後からそこに至るまでのお話です。

北朝鮮経済は破綻
李承晩政権から朴正煕政権に代わり、それまでの輸入代替工業化戦略から輸出主導型工業化戦略へと舵を切り、さらに日本と国交正常化し、賠償金及び政府開発援助(ODA)の流入もあり、韓国経済は最貧国から高度経済成長期へと移行し、いわゆる「漢江の奇跡」が1960年代後半から言

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不安定な韓半島 朝鮮戦争まで

金日成総書記の勝算①日本の遺産
アメリカとの取り決め通り、ソ連軍は38度線以北まで軍政を敷きました。当初東ドイツと同様、日本が残した工場設備や社会インフラ等を解体し本国へ輸送しましたが、すぐにやめ、スターリン書記長の眼鏡にかなった金日成を1945年9月に北朝鮮に送り込みました。(北朝鮮の歴史的には、金日成が抗日運動を指揮したことになっていますが、ソ連や中国が異なる史料を公開しています)

ここで、

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不安定な韓半島 太平洋戦争終結まで

隣国は強すぎても、弱すぎても困る
日本は、何のために韓半島を併合したのでしょう?植民地化し、その富を収奪することが目的だったのでしょうか?そのように誤解されがちですが、そうであれば1905年日露戦争の直後に併合しそうなものですが、足掛け6年かけて併合に至っています。また、李朝政府へ、日本政府が無利子・返済期限なしの貸付を行う必要もありません。併合後も総督府や日本軍の駐留費等は、全て日本政府持ち、租

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不安定な韓半島 日韓併合まで

2024年1月に北朝鮮は半島統一という従来の目標を放棄し、韓国を同胞ではなく外国、しかも主敵とみなすと宣言しました。もちろん、韓国の尹錫悦政権にとっての中間選挙と位置付けられる、同年4月の韓国総選挙に影響を与え、親日・米姿勢を打ち出す現政権へ打撃を与えようという意図はあるでしょう。しかし、それだけなら何もせっかく父・金正日総書記が建てた祖国統一三大憲章記念塔まで破壊する必要はありません。金正恩政権

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すれ違いの米中関係 その1

絶妙な2024年台湾総選挙
2024年1月台湾での総統選挙は与党・民進党、第一野党・国民党、第二野党・台湾大衆党の党首による三つ巴でしたが、反中派と呼ばれる中国警戒派、親中派、とその中間としてよく政策の違いを説明されていました。親中派とその中間が、野党として統一候補に絞ることができれば、政権交代もあり得ましたが、統一できずに与党が総統選を制しました。その一方、立法院では与党が過半数席を失い、いわゆ

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アメリカ単独覇権から激動のリバランス時代へ

ロシアに降り立つシカゴ・ボーイズ
以前ラテンアメリカ諸国のお話で、シカゴ学派(シカゴ・ボーイズ)の指導の下、いかに国家資産が欧米企業の餌食になったかをお話しました。そのシカゴ・ボーイズが次に向かった先は、ソ連崩壊直後のロシアでした。全ての企業が国営企業であるため、得意の民営化を進めるにはあまりにも莫大な量(そして欧米企業にとっての利潤)があることは明らかでした。

ソ連崩壊直後の混沌の中、シカゴ・

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パレスチナ・ハマスの勝算

今年10月9日より、パレスチナの武装集団ハマスがイスラエルへ攻撃を仕掛け、1000名強を殺害し、200名余りを人質に取りました。これに対し、イスラエルはハマス殲滅を掲げ、大規模な空爆を中心に既に9倍以上のパレスチナ人を殺害し、パレスチナでの電気・水道等の社会インフラを止め、外国からの人道支援物資搬入ルートもほぼ閉鎖し、200万人ともいわれるパレスチナ人への報復措置を続けています。(十分国際法違反で

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イスラム・現代 後編 イスラエル・パレスチナ

パレスチナ問題の起源
パレスチナ問題のそもそもの発端は、第一次世界大戦中のイギリスの三枚舌外交のせい、と言われます。3枚の舌の1枚目は、イギリスはフランスとオスマン・トルコ帝国解体後の領土分割を協議し結んだ、サイクス・ピコ協定です。以前お話しました通り、英仏の資本の集中投下場所に応じて、中東の南部をイギリスが、北部をフランスが、その勢力下に持つことになりました。その一方、パレスチナは国際委任統治と

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BRICSサミット2023:加速するドル離れ

今年8月22-24日の間というジャクソンホール会議の直前、BRICSサミットが開かれました。ジャクソンホール会議の方は日本でもよく報じられていますので、こちらではBRICSサミットについて考えていきたいと思います。

それでもドル離れは変わらない
以前中国が金地金を大量に生産かつ購入しているというお話をしました。その流れか、サミット開催前の4月、ブラジル大統領がBRICS共通通貨を作りたいと発言し

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正しく「戦争」を語り継ぐとは

原爆投下日や終戦記念日が近づくと、太平洋戦争中、戦争直後のドラマや映画がよく放映されます。しかし、常に不思議なのは、決まって日米間の戦闘か日本本土での話に限られることです。それでいて、戦争を語り継ぐと言います。かなり偏った「戦争」なのです。

日中戦争と太平洋戦争を正しく理解するなら、満州を含めた中国大陸、かつて日本の一部であった台湾や朝鮮半島、東南アジア等を主舞台とした話があったとしてもいいと思

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「ワグネルの乱」のメッセージ

不可解な「ワグネルの乱」
2023年6月23日、「ワグネルの乱」が発生しました。それまでウクライナ戦争で活躍していた、ロシアの民間軍事会社、ワグネル社の一部が戦線を離脱し、モスクワに向かいましたが、ベラルーシ大統領の仲裁により一日で解散したという、何とも不可解な事件です。

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つっこみどころ満載の防衛三文書(2022年12月執筆)

2022年12月に日本政府は、いわゆる防衛三文書、すなわち「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」を策定しました。時代に即して戦略を改定することは悪いことではありません。

意図としては、同盟国アメリカの力の衰退を鑑み、国際情勢が「複雑」になってきたので、日本も自力で防衛力を高めたいとあります。もっとはっきり言えば、アメリカが相対的に衰えている一方、中国、ロシア等が米欧中心の国際

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静かに進行するBRICS+

中ロの世界構想:BRICS+
先日、岸田首相がウクライナを電撃訪問する同タイミングで、中国の習近平総書記がロシアを訪問しました。世界の注目が岸田首相に逸れてしまった感がありますが、世界全体からすれば、中ロのこれからの意図を読み解く方が重要です。その声明には、彼らの新しい世界構想がおぼろげながら表現されているからです。

中ロの世界構想に関する指針*は、以下の通りです。
・国際法を遵守し、機能不全の

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