マガジンのカバー画像

よすけの短編小説まとめ

75
書いた小説を投稿した順にまとめています。短いのから長いの。暗いものから明るいものまで。ほっと一息つけるように。
運営しているクリエイター

#ほろ酔い文学

【短編小説】帰ってきた

【短編小説】帰ってきた

780文字/目安1分

 非日常と日常の狭間でふわふわしている。

 毎日ただ過ごしているだけでは味わえないそれは、たとえ大雨が降ろうと、大渋滞が起ころうと関係なかった。時間通りに起きないといけない。決まった時間の電車に乗らないといけない。定刻に働き始めないといけない。そういうのも、その時は気にしないでよかった。自分の心が一番自由になれた瞬間の連続だったと思う。

 そういえば、先週からの終わって

もっとみる
【短編小説】焼き鳥屋の煙―店じまい―

【短編小説】焼き鳥屋の煙―店じまい―

3,087文字/目安6分

 こんな時間まで飲んでしまった。
 俺の他にも人はいたが、すでにみんな帰っている。隣のスーツを着た男も、家族の愚痴やら仕事の愚痴やら今の日本がどうだとか話している座敷の二人も、いつの間にかいない。スーツ姿の女の人は少し飲むなり出ていってしまったし、その後に来た大学生も散々泣いた後に帰っていった。

 いつもわりと静かな店の中だが、一人になると本当に静かになる。他には大将

もっとみる
【短編小説】晩酌

【短編小説】晩酌

1,387文字/目安2分

 今週は特に疲れた。
 毎週毎週思うことだけど、毎週毎週それが更新されていっている気がする。月曜日から金曜日まで、一日の時間を全部使うわけじゃないのに、それがすべてのことのように追われている。
 今の仕事が嫌いなわけじゃない。むしろ好き。会社の人たちだってみんないい人。嫌な人なんてほとんどいない。わたしなりに、会社を大きくするためにどうしようか。どうしたら今よりよくなる

もっとみる
【短編小説】焼き鳥屋の煙―閉店前―

【短編小説】焼き鳥屋の煙―閉店前―

2,051文字/目安4分

 一人で焼き鳥屋に来ている。
 いつもはこういうことをしないのに、なんとなく思いついて立ち寄った。家にいたくない。一人になりたい。頭を冷やしたい。そういう思いで、ふらふらとどこに行くでもなく外を歩いていたら、この店を見つけた。

 飲み屋はチェーンの居酒屋しか行ったことがない。こういう感じなんだ、と思った。入ってすぐの左側にカウンター席が四つ、右側に座敷のテーブル席が二

もっとみる

【短編小説】焼き鳥屋の煙

1,024文字/目安2分

 俺の家の近くには、小さな焼き鳥屋がある。
 大将が一人でやっているようなこじんまりとしたところで、駅から離れた場所にあるから客も少ない。大将は最低限の接客をして、あとは黙々と焼き鳥を焼くタイプらしい。だから店内はわりと静かになっていて、落ち着いて飲みたい時によく使う。味は普通だが、なかなか気に入っている。

 ここが会社帰りに寄れるところでよかった。一人で飲むなら、う

もっとみる