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ただの毎日

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プラスでもマイナスでもない、たんなる日々のこと。
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7月19日編集者日誌:レシピ本のメニュー決め

7月19日編集者日誌:レシピ本のメニュー決め

レシピ本を作ることと座組を決めた後、いちばんにしなくてはならないことは、何よりもメニュー決めです。

【メニュー決め】
本の企画に沿って、料理家さんにメニュー案をオーダー。「おかず50品」などではなく、「10分以内でできそうなもの10品、ごはんが進みそうなおかず10品、おつまみにもなりそうな軽いもの10品」のように細かく伝え、それよりも少し多めに出してもらいます。その後は相談しながら取捨選択。

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泳ぐ、自傷行為のような①

泳ぐ、自傷行為のような①

 静かに、でも力強く姿勢を低くして水の中に全身が浸かると、途端に世界が変わる。音がくぐもり、わたしは透明の水色の中にいる。思いきり壁を蹴って、底にうつるきらきらした光を辿りながら向こう岸を目指した。

不意に誰かの足、知らない人の足が斜め前に見え、その骨ばった足の甲を見ながら、こんなふうに知らない人の体の一部を、ふだんは靴や靴下に覆われて見えないようなところを間近に見てしまうことに恥ずかしさを覚え

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5月7日編集者日誌:校正

5月7日編集者日誌:校正

本日5月7日発売。
『今年からは手作り派 やさしい梅しごと』(福光佳奈子・合同出版 食べもの通信社)

わたしは今回校正を担当しました。

実は「校正のみ」を担当するのは2冊目。普段は編集かライターとして参加しているので、とても貴重ないい経験になりました。

【校正】こう・せい
ゲラ刷りなど、作業の中間段階で印刷や画面表示したものを、原稿と比べながら、種々の誤りや不備を正すこと。

校正の仕方は、

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5月6日編集者日誌:レシピ本の座組

5月6日編集者日誌:レシピ本の座組

連休が終わる。
と同時に、夏に向けてやらなくてはならないことが音を立てて近づいてくる。

今年の夏、わたしは大切なレシピ本の撮影をひとつ抱えている。いや、どの本も比較できないくらい大切なのだけど、自分が考えた企画はやっぱり大切さが少し上で、不安も大きい。

版元さんが企画にのってくれたからといって、わたしが考えた本に何百万もかけてくれるのだ。もし売れなかったらどうしよう、思い通りに作れなかったらど

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5月2日、編集者日誌:企画持ち込み

5月2日、編集者日誌:企画持ち込み

むかしわたしは役者の仕事をしていた。小さいころはただ言われた通りオーディションに行く毎日だったけど、大きくなってプロダクションに入ってからは、いわゆる「営業」というのをさせられた。

自分のプロフィール用紙を持ってマネージャーとテレビ局やらに行き、「お願いします!」みたいなことを言う。そのほかにマネージャーや事務所のつきあいで「わたしを見てくれる人」がつかまると、その人に自分をアピールする時間がも

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4月30日、編集者日誌:入稿

4月30日、編集者日誌:入稿

この連休の合間3日を休んで10連休にするアイデアもあるらしいが、そんなに休んだら後が怖い。と思うのはわたしがワーカーホリックだからだろうか。年中仕事を優先していることをそう呼ぶならわたしは無事立派な仕事中毒だが、ゲーム好きがゲームをいちばんにする程度のことだ。

さて、わたしはこの中3日で、なんと一年も制作してきた書籍を入稿する。入稿とは、ぜんぶのページがきちんとできあがり、もうこれ以上直すところ

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3月24日、目玉焼きごはんと全敗の将棋大会

3月24日、目玉焼きごはんと全敗の将棋大会

8歳の将棋大会があった。大会への出場は初めてで優勝する気もまんまんだったが、なんと最初から最後まで一度も勝てなかった。

実は最近負け続きだ。教室から出てくる息子の顔がこのごろいつも暗い。通いはじめたばかりのころは勝ちを数えるのが楽しかったのに、ここ数ヶ月は負けることのほうが多い。勝てないと級が上がらないのに、その間に下の級にいた友だちがぐいぐいと迫ってきて、焦りも見えた。

それでも将棋が好きだ

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3月17日、蕗のおひたし

3月17日、蕗のおひたし

蕗の皮をむいていると、思いだすことがある。小学校低学年のころよくとおっていた通学路に、蕗のようなストロー型の植物が生えていて、その皮をむいて齧りながら帰った。

母が教えてくれた。まだひとりで家まで帰れなかったころだから、小学校にあがってすぐだったんだろう。これ食べられるんだよと皮をむいてむしゃむしゃと食べはじめ、ぎょっとして母を見ると、太いほうがおいしいよとその茎を渡された。

ならって皮をむく

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3月16日、食パン

3月16日、食パン

掃除機が壊れた。
もう3ヶ月は前のことだ。なんか調子悪いなあ、というタームも挟まず、ある日突然唸るだけになってしまった。フィルターの掃除をして、全部取り外して調べたけれど、どこの調子がどう悪いのかまったくわからない。フィルターのふたが半開きになっていることさえ教えてくれる最新機器なのに、予定にないエラーについてはなんの表示もされない。

さんざん格闘したがようすが変わらないのでそのまま置物と化し、

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フリーランスは誰かに守られている(のかもしれない)

フリーランスは誰かに守られている(のかもしれない)

はじめて会社というところで働いたとき、わたしは編集の仕事についた。「会社」どころか「世の中」の仕組みもたいしてわかっていなかった19歳、おとなになるために必要なほとんどのことは、そのときの上司が教えてくれた。

その日わたしは、デザイナーから上がってきた修正後の原稿を見ながら、自分が入れた原稿の朱字がきちんと直っているかどうか確認していた。そして何ページか読んで、全然直っていないことに怒っていた。

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うまく言えないけど

うまく言えないけど

ある方にご依頼をいただいて、
3年前にエッセイを一本書きました。
いまは亡き恋人に出会ったばかりのころの、わたしのことを書きました。

ご依頼がなかったら、わたしはきっとこのことを書かなかったと思う。

書く機会をくださり、ありがとうございました。

当時、有料での公開だったので、あらためてシェアしました。

あるフリーライターおよびフードコーディネーターの一年(2022年お仕事ふりかえり)

あるフリーライターおよびフードコーディネーターの一年(2022年お仕事ふりかえり)

昨年に引き続きまして、一年のお仕事を振り返るnote。ひとつひとつのお仕事に思い入れがあるため、プロフィールのようにはまとめきれず、大変長いです。また、フードコーディネーターのお仕事は、契約上名前が出せないものが多いので掲載しておりません。詳しくはお問い合わせくださいませ。

さて。
今年は、とてもとてもたくさんの本をつくりました。一冊まるっと関わることが多く、責任重大ではあったけれどそのぶんやり

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いつからお母さんになったのか

いつからお母さんになったのか

いつからお母さんになったのか思いだしてみたけどわからなかった。

少なくともあの子を産んだ15年前の今日、わたしはただの女の子だったと思う。欽ちゃんの仮装大賞の得点みたいに毎年お母さん度が上がっていったのかな。なんとなくそんな気がしている。

ということは紛れもなくわたしはいま、
お母さんだと自分のことを思っている。

爪に色を塗ったりしない。
派手なメイクをしたりしない。
ヒールを履いたり、赤ち

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あの子が学校に行けなくなったときのこと

あの子が学校に行けなくなったときのこと

はじめて学校に行きたくないと言われたとき、いやいやまさか、と思った。学校で起こっていた事態は把握していたが、わたしはどこかで、そこまでのことじゃない、と思っていた。

そもそも娘はびっくりするほど楽観的でポジティブで我が道をいく性格なので、そんなこと気にしなくても大丈夫でしょうよと思ったし、一度休んだら余計に行くのが難しくなるだろうと思った。

ただめんどくさいから今日は休みたい、というのとは違う

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