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花 hana

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〈花〉
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『行ってみたい』

『行ってみたい』



『行ってみたい』

行ってみたい

全てをかけて

明日など知らない

明後日も

その先も

知らない

だから

駆けてどこまでも

行ってみたい

知らないから

知りたい

笑われても

そんなの

知るもんか

走ってみたい

どこまでも

走って

どこまでも見たいんだ

君も

僕も

知らない場所へ

そうやって

生きてたいんだ

(神戸市 波止場町 /メリケンパーク)

『海の中を』

『海の中を』

『海の中を』

私たちが海を見るとき、だいたいの人は水面しか見えていないのに、海は広いって言う。

たぶん海の中は、死んだ魚の身の一部や地上の塵屑でいっぱいなのに、青い。

色が青いってことは、海中の奥深くまで太陽の光が差していて、それがずっとずっと海底のほうまで進んで行けるくらい、遮るものがないんだろう。そういう感じのことを、理科の本で読んだ。

じゃあ海ってやっぱり、水だらけなのかな。

塩辛

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『夜のデザートを、ひとくち。』

『夜のデザートを、ひとくち。』



『夜のデザートを、ひとくち。』

その世界はない。存在しない。けれども、わたしの中にはある。あんなキラキラした写真に映るあれが現実にあるわけない。この世界のどこにだってない。ないのに、あの人もあの人もあの人も、わかってくれる。その世界はないはずなのに、たしかにここに存在している。ふれることのできないデザート。ひとくち。それは思い描くだけで、ふわふわしていたってあまったるくたっていい。レモンピー

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『誰かの雨粒』

『誰かの雨粒』

『誰かの雨粒』

誰かの涙を飲み込むような心地で
唇にあたった雨粒を噛む
額に一粒ぶつかると
そっと
ここにいるよと触れられた気持ちになる

わたしは此処に一人だけだって
泣いていた

あぁ一人じゃないんだって
教えてくれた

鋭く滑り込むように雪崩れてくる
雨の気配
実は大好きで
かなり恐ろしい
豪雨の気配

私ここに一人じゃなかった

『運転中』

『運転中』



『運転中』

君が僕を知ることはない
すやすや眠る頃
思い出したりするのです
雀の涙ほどの

安心したように羽を下ろして
出した足こそ使うべきでした
はじめから

いつか繰り返す頃に
解き明かしてみよう
それまで不透明なままで

何もわかってない
何もわかってないよ
だからまだ
運転中

その目から見る景色
奪って
持ち去って行ってあげよう
その代わりに肩を貸してね
歩く旅に出掛けられるように

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『初夏になりきらない』

『初夏になりきらない』

『初夏になりきらない』

黒に蛍光色の模様
スニーカーの柄にしたら可愛いだろうな
そんなことを思いながら見つめていたら
横転してひとりでひっくり返った
少し太った芋虫を目撃した

4月
花が散っても春は終わっていない
夏に変わろうとしている春を
そのちっちゃな芋虫に教えてもらった

初夏になりきらない
みどり色の春を
私は芋虫と一緒に見つけた

『夜が歩くなら』

『夜が歩くなら』



『夜が歩くなら』

夜が歩くなら
もし足が生えていて
ぺたぺたと裸足で動き回っているなら

僕のところには一生来ないね

鼻があって匂いの違いが分かる
そんな奴だったなら
僕のことなんて嗅ぎ分けて
避けていってしまうんだろう

明日のことがだいすきだ
なんて魅力的な響きなんだ
けど僕には夜が来てくれないから
理論上はあるけど存在しない星みたいに
ロマンと化して
僕の人生を彩りつづけるだろう

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『分かったよ』

『分かったよ』

君の言いたいことは分かったよ
分かったから
もう僕を壊さないで
君は
口が上手いんだ
なんだって伝えられる
それはすごいよ
それでも君は
君の手で君のやりたいことを
やってくれないかな
僕は
君の手になるために
生まれてきたわけじゃない
なんのために
口を使うなんて
きっと自由だ
だから
だから
僕はもう君を
一回たりとも呼びたくないよ
君を君という言葉で代用することすら
嫌だ

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『君がいなきゃ困る、』

『君がいなきゃ困る、』

『君がいなきゃ困る、』

 君がいなきゃ困る、それは大山の天然水。

 照りつける太陽の日差しを存分に駅まで浴びて、からからに渇く。今日は珍しく空が高い。羊雲が上のほうでたくさん並んでる。神さまは手抜きすることに飽きたのかな。ずっと続いてたスクリーンみたいな真っ平らな空は。忘れた。朝の用意が何年経ってもうまくいかない。バタバタと物を探しているうちに、積みに積まれたやり残しが目に入ってきて、今日も報

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『コーヒーカップ』

『コーヒーカップ』



『コーヒーカップ』

君のコーヒー1杯に魔法をかけた
誰にも気づかれない魔法さ

君が

一人で作業している間にトラックのドアに挟まれないように
バイクの曲がり角で重い荷物がバランスを崩さないように
これから沢山の思い出を一緒に作っていけるような帽子と出会えるように
街道で出会ったポットの花がこの先1日でも長く君と笑い合えるように
友達との再会が彩り豊かでいっぱいの果実になるように
書いている

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『自由』

『自由』

『自由』

唐突に解放された
それが悲しい
何もできない自由なら
いらないのに

だってほしいから

可愛い服が欲しいし
パンも買いたい
友達と遊びたいし
家族と旅行にも行きたい

遠くへ遠くへ
もっと遠くへ行きたいから

だから
今 自由になっても
ちょっと困るんだ

今日も日が沈む
それを見届けられなかった
代わりにありがとうと
言ってもらえた

でも突然
もういらないと言われた

自由になり

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『髪を切れば』

『髪を切れば』



『髪を切れば』

俯く

いつもの足先が見える

と同時に

伸びてきた髪が

顔を包むように

下を向く

いつも隠れるようにしていた

あたかも守られているような

錯覚

そんなの

主観的な感覚でしかないことは

知っている

この細くて

すぐ燃えてしまうような装飾が

衝撃からも悪意からも

何でも防いでくれる

なんてことがあり得ないことくらいは

分かっている

それでも

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