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良質な解決策よりも大切なこととは? 何を考えるかを考える

「アイデアを考えたもののピンと来ないなぁ…」

自分なりにアイデアを考えているつもりでも、出したアイデアがしっくりこない。そんな時が過去何度かありました。

また、誰かから提案を受けた時も、何とも言えない違和感を感じる時があります。「そこじゃない感」「それじゃない感」。

こうした、しっくりこない感じはなぜおこるのでしょうか。

その一つの原因として、考える「問い」のピントがズレているケースがあります。そもそも考えるテーマを間違えている。これではいくら労力を割いても、テーマがズレたままでは出口は見えて来ません。

考えるべき事を適切に考えるための工夫を見てみます。

そもそも「考える」とは何か

考えるテーマを見極める前に、そもそも考えるとは何かという事をはっきりしておきたいです。

そのヒントはYahooのCSOの安宅和人さんの言葉にあります。安宅さんはデーターサイエンティストでありながら脳神経科学の権威。知の巨人です。

その安宅さんは「思考とは、入力を出力に繋げること」説明しています。生物であれ、コンピューターであれ、情報処理システムというのは基本的に3ステップであり、入力→処理→出力だと言います。

さらにこの「処理」は「知覚」と「認知」に分かれます。中でも重要なのが「知覚」。知覚は複数の情報を統合して対象の意味を理解することです。

安宅さんは「思考の核心とは何か?」という問いに対して「知覚である」と語っています。そして2つ以上のインプット(知覚できる情報)につながりが生まれる事を「学習」や「理解」であると説きます。

つまり、考えるとはインプットからアウトプットするプロセスであり、その過程では複数の情報を繋げる知覚という処理を経るということです。

情報の繋げ方で変わるアウトプット

知覚とは、いろいろな情報を統合して「意味を理解する」ということですが、その「情報を統合する」という点で面白い実験があります。

キヤノンが作成したもので、6人の写真家を呼んで、ある同じ人物について違うバックグラウンドを伝えて撮影してもらいます。

1人には「この人はミリオネアです」と伝え、別の人には「ライフセーバーです」、また別の人には「先日まで監獄にいた人です」、さらに「漁師です」、「サイキックで危険な力を持っている人」、「アル中です」など。

こうして異なるインプットを与えて写真を撮らせると、同じ人を同じ部屋で撮影しても、こんなに違って撮られるのかという動画です。

知覚は単なる入力ではなく、情報を統合して「意味を理解する」ということ。つまり、インプットの質がアウトプットの質を左右すると言えます。となると、何を知っているのかがアウトプットを変えます。知識や経験が重要となります。

「考える」ということは理解できました。次に大切なのは「何を考えるのか?」です。実はこっちの方が重要です。

何を考えるか?

冒頭の考えるテーマがズレている事を問題とした時に、「そもそも何を考えるべきか?」が最も重要な問いとなります。

この問いについて、安宅さんの著書「イシューからはじめよ」にヒントがあります。

この本で一貫して貫かれている考え方は、「問題を解決する前に、まずその問題が本当に解くべき問題なのかを考えましょう」ということ。

この本の中で一番衝撃を受けたのがこの一節。

イシューのように見える問題が100あったとしても、「今、本当に答えを出すべき問題」は2,3しかない。そのなかで「今の段階で答えを出す手段がある問題」はさらにその半数程度だ。つまり、「今、本当に答えを出すべき問題であり、かつ答えを出せる問題=イシュー」は、僕らが問題だと思う対象の1%ほどに過ぎない。

真に扱うべきかつ解を導ける問題はたったの1%程度。つまり、ほとんどが扱うべき問いではない、言い換えれば99%は問いがズレているということです。冒頭に書いた違和感は正にこの99%の中の問いだったということです。

大半の仕事の目的は「問題解決」とするなら、それは大きく二つの要素に分解できます。

問題解決= 問題(イシュー)× 解決策

シンプルですが、とても重要な点です。なぜなら、我々は往々にして解決策ばかり考えがちだからです。アイデアを考えるのは「解決策を考える」に他なりません。その前に大切なのは解くべき問題(イシュー)に解く価値があるのかということです。

そして「問題解決力」というスキルの側面で見た場合はこうなります。

問題解決力 = イシューを立てる力 × 解決する力

問題解決スキルを身につける場合、発想法や、ブレーンストーミングのテクニック、KJ法やその他の思考スキルといった解決能力を高めることばかりに注力しています。しかし、それよりも大切なのはイシューを立てる力を高めることと言えます。

また、本書では価値ある仕事の構造も同じ視点で語られています。

バリューのある仕事 = イシュー度 × 解の質

この式の通り、いくら解の質を上げても、イシュー度が低ければ、バリューのある仕事にはならないと言えます。

解くべき課題を見極めること。それこそが仕事においてなによりも重要なポイントです。言い換えれば、何を考えるかを考えるということです。

問いが良質なアウトプットを生む

問いがいかに大切かを物語るケーススタディがあります。世界ナンバーワンのコーチと呼ばれる、アンソニー・ロビンスという人がいます。
ビル・クリントン元大統領や、俳優のアンソニー・ホプキンス、 テニスのアンドレ・アガシなど、多くの著名人が彼のコーチングを受けています。

彼が「問い」ついてこう説明しています。

「私たちが得る答えは、私たちが何を質問するかによって決まります。つまり、どれだけ素晴らしい答えを得る質問をするかどうかなのです」

この言葉は、正に先に記した問題解決= 問題(イシュー)× 解決策 の関係を経験則から語っている言葉です。

例えばテニスの指導の中で「球をよく見ろ」と言いがちですが、その代わに「ネットを越える瞬間、ボールの回転はどうなっている?」といった問いを選手に投げかける。

これは選手にボールに集中する様に促した秀逸な問いです。実際に回転がどうなっているのかに集中し、自発的に練習に取り組むようになったケースがあります。一つの秀逸な「問い」が、態度変容を促す最高のアウトプットを引き出したケースです。

世界の発明王エジソンは、子供の頃から「なぜ? どうして?」を繰り返していたと言います。日本でも「禅問答」はまさに「問い」の連続によって成り立っています。

アウトプットの質を上げるためには「問い」をどう置くか、つまりは何を考えるのかを考えるチカラが欠かせないということです。

まとめ

仕事とは問題解決の連続です。仕事の精度を高めるために我々は得てして「解決策」に注視しがちです。

しかし、本当に大切なのはどんな問題を解くべきなのか、その問題に解く価値があるのかを考えることかもしれません。

そして、今は情報に溢れた世の中です。「検索」すればある程度の情報は誰でも入手できます。これは解決策のコモディティ化が進む世の中とも言えます。そうなるとますます、解決策以上にどんな問題を解決するのか、という「問う力」が問われる時代と言えます。

盲目的に解決策を考え始めるのではなく、そもそもこの問いで良いのか?という視点で何を考えるのかを考える思考を持ちましょう。

そうすることでバリューのある仕事につながります。「なぜ?」「そもそも?」という、本質に迫る問いを意識的に使い、問う力を磨いていきたいですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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