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夕遊の映画座

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マガジン機能の練習中。見て良かった映画の感想をまとめています。おすすめを紹介していただけると、喜び踊ります。
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2022年3月の記事一覧

社会主義の崩壊と母への愛と理不尽な世界。映画『グッバイ、レーニン!』ドイツ、2003年

社会主義の崩壊と母への愛と理不尽な世界。映画『グッバイ、レーニン!』ドイツ、2003年

知り合いに勧めてもらった映画。自分だけだと見なかったかも。しかも、実際に紹介された内容とはだいぶ違いました。それでも、深くて考えさせられる内容でした。

夫が自由の国に亡命してしまったショックで、社会主義と「再婚」した東ドイツの女性。その女性の息子が主人公です。自分の反政府運動のせいで心臓麻痺を起こしたと知って、眠り続ける母を看病する息子。8ヶ月後、母は目覚めます。

ところが、この8ヶ月が尋常で

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ステキな歌がいっぱいつまった映画『52hzのラブソング』台湾、2017年。

ステキな歌がいっぱいつまった映画『52hzのラブソング』台湾、2017年。

『海角七号』とか『KANO』とか、ずっと台湾の歴史にかかわる映画を撮ってきた魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督の最新作。今回は、日常ミュージカル映画です。

私はミュージカルはよくわからないので、それほど期待していなかったですが、おもしろかったです。単純に楽しかったというか、台湾らしくて、でも今風で、ユーモアたっぷりで。

いつも思いますけれど、ウェイ監督の映画は音楽がとてもいいです。出演者も、当然

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激しくて、あたたかい。『3月のライオン』羽海野チカ

激しくて、あたたかい。『3月のライオン』羽海野チカ

アニメ化もされて、神木隆之介さん主演で実写化もされた名作。将棋のネットTVを始めた頃に読んでみました。15歳でプロ棋士になった主人公の桐山零と、彼を取り巻く人々の日常や成長を描いた作品で、東京下町のあったかい雰囲気と、将棋の世界の厳しさのコントラストが際立ちます。

最初は将棋の世界のことを全然知らなかったので、棋戦とか専門用語の解説なんかは、実は飛ばして読んでいました。(監修の先崎先生すみません

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攻められている、小さな国を守る思想。映画『墨攻』日本、中国、韓国、香港、2006年。

攻められている、小さな国を守る思想。映画『墨攻』日本、中国、韓国、香港、2006年。

小説がすごくおもしろかったので、映画の『墨攻』も見に行きました。どうやら小説ではなく、漫画が原作の映画化らしいです。戦国時代、常に攻められている国、特に大きな国に攻められている小さい国を守る思想集団のお話。

香港映画はたくさん見ている気がするのに、アンディ・ラウの主演の映画は初めて。そして、韓国映画の大ベテラン、アン・ソンギも久しぶりなのでうれしいです。

で、感想はというと、アンディ・ラウって

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実話を知ると、より深い。映画『ドリーム・プラン』アメリカ、2021年

実話を知ると、より深い。映画『ドリーム・プラン』アメリカ、2021年

テニスで超有名なヴィーナス、セリーナのウィリアムズ姉妹を育てた父の物語。インド映画『ダンガル』のアメリカ版みたいな映画なので、仕事が一区切りついたご褒美に見に行きました。映画館の大画面でみるテニスの試合シーンは迫力ありますし、サクセスストーリーは見ていて楽しいです。

映画では、娘たちの自主性を尊重しながらも、厳しい父リチャード。貧しい中で娘たちを一流のテニスプレイヤーに育てるため、スポーツの商業

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みんなが立ちあがって歴史が変わった。映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』韓国、2017年

みんなが立ちあがって歴史が変わった。映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』韓国、2017年

大好きなソン・ガンホの作品。光州事件の映画だと知っていたので、血に弱い私にとって、きつい映画なことはわかっていたのですけれど、でもがんばりました。私は、できれば楽しい映画ばかり見て、元気チャージしたい派なのですが、ソン・ガンホを劇場で見たかったですから!

光州事件というのは、1980年に起きた民主化要求の市民蜂起のこと。当時独裁政権だった韓国。1979年に朴正煕(パク・チョンヒ)が暗殺された直後

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