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【心理学25】思考枠組みによる人材採用(ゲシュタルト心理学、組織心理学分野)

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はじめに

さっそくですが皆様。
以下の論点についての自己の見解を考えてみてください。

少子化による人口減少が予想される日本において、教育事業を行うべきか。

・教育事業を行うべきではない
・教育事業を行うべきだ

どちらでしょう?🤔
もちろんどちらにも解釈できます。

似たようなお話で、コップに半分水が入っているグラスを見て、「半分も入っている」と考える人と「半分しか入っていない」と考える人が出てきます。

今日解説する「ゲシュタルト心理学」もこれに関連するお話です。
少し難しい話ので、できる限り簡易化してお伝えしますが、とても大切な考え方なので、是非ご一読ください😁


1.ゲシュタルト心理学とは

大昔の心理学では、事実は一つであり、客観的に判断すれば、誰もが同じ認識、解釈に至るはずだと考えられていました。
そのため、特定の一部分の分析を蓄積すれば、全体も自ずと解明できるという考え方をします。
しかし、その後、事実は一つだけど、その解釈は人それぞれなのではないか?と考えられるようになっていきました。
これがゲシュタルト心理学の本質だと思います。

ゲシュタルト心理学では、物事を解釈する際には、全体を見て判断するべきで、全体を構造的に見て判断した場合には、解釈が人それぞれ異なってくる可能性があると考えます。
上記のコップの水の量の例でいうと、コップに半分水が入っているという事実は一つですが、それを多いと感じるか、少ないと感じるかは人それぞれだということです。
本人が置かれている状況や考え方、価値観などに左右されるのです。

ゲシュタルト心理学は心理学の大きな学派の一つで、現代の認知心理学、社会心理学等にも大きな影響を与えている考え方です。
ゲシュタルト心理学を一発でスパッと説明できる語彙力を私は有していないので、私は上記のように解釈しています。

なお、ゲシュタルトとは、ドイツ語で「形態」「姿」を意味する単語です。
同じ文字をずっと見続けているとその文字を認識できなくなったりしますが、それを「ゲシュタルト崩壊」といいますよね。
あれも「形態(ゲシュタルト)を認識できなくなってしまう」という意味です。


このゲシュタルト心理学は、今では様々な分野に派生しているので、それぞれの分野で研究が進んでいます。
そのため、現時点では、ゲシュタルト心理学は「部分ではなく、全体を見ることを重視する学派」という程度の理解で良いと思います😁
そして、全体を見て判断する場合、人間の認知・認識・解釈には違いが出てきます。
組織構築・採用という場面で考えた場合、この認知・認識・解釈の「違い」を理解することが需要だと思うのです。
今日はこの辺りのお話をさせていただきます。


2.思考枠組みと価値観

人間には、人それぞれ思考の癖が存在します。
同じ事実・事象でも、それをネガティブに捉えがちな人、ポジティブに捉えがちな人、その他様々な癖を持った人がいるのです。
こういう思考の癖を「思考枠組み」と表現することにします。

そして、この思考枠組みは、人それぞれの「価値観」というフィルターを通して顕在化します。
この価値観というものは、長年育った家庭環境、受けた教育、育ってきた場所、関わった人間などによって変化し、長い年月をかけて構築されていくものです。

少し怖い話をしますが、見方を変えれば、認識や解釈の癖をよく分析すると、その人自身の価値観が透けて見えるということでもあります。
それって、組織構築・採用における最重要テーマだと思いませんか?🙄
そうなんです。
超重要なのです。

そして、人事のスペシャリストの皆さんは、意識的無意識的にこの分析を行っています。
面接時に相手の受け答え、挙動、過去の経歴などによってその人の価値観を分析し、自社の文化とマッチするかどうかを判断しているのです。

この分析力は、面接を1,000~2,000人ほど積み重ねればある程度磨かれていくものですが、人事や営業のプロフェッショナルになってくると、面接や商談の回数が10,000回を軽く超えている人も多いので、高精度で見極めてきます😁

年齢を重ねると、徐々に組織を運営する側、採用権限を持つ側に回ると思いますが、できれば早い段階でこの分析力を身に着けておくべきです。
他人の価値観をよく分析できるようになると、採用ミスを減らすことができます。
一人の採用ミスで組織が崩壊することもよくあるので、意外と重要なスキルだと思います。


3.思考枠組みの類型

前述のとおり、人間にはそれぞれ思考枠組みがありますが、この思考枠組みの類型について考えてみましょう。
時と場合によって多少の変化はあると思いますし、厳密に類型化するともっと多く類型化できるのですが、ひとまずシンプルに、以下の3種類の基本的な思考枠組みについて解説します。

(1)ポジティブシンキングタイプ
(2)ネガティブシンキングタイプ
(3)クリティカルシンキングタイプ

以下、それぞれご説明します!


(1)ポジティブシンキングタイプ


ポジティブシンキングの傾向が強い方は、物事をシンプルかつポジティブに考える傾向を持っています。
このタイプは、複雑な情報を遮断したり単純化することで、自分に理解しやすいようにします。
その上で、自分にとって都合の良い情報に着目し、良い方向で考える癖を持っています。
基本的に明るい性格の人が多く、社交性も高いです。
そのため、ムードメーカーとしての役割を担うことが多いタイプです。

この類型は、物事の良い面を見ようとする傾向(癖)があるので、共に同じ方向を向いて頑張る仲間として適しています。
一緒に居て楽しいという面もあるかと思います。
特にベンチャーでは気に入られやすい思考傾向と言えます。
業種で言えば営業職、事業開発などに適しています。

一方で、ポジティブシンキングが強すぎる人は、物事の良い面しか見ない・見えない人が多いので、自分自身について過信が生まれやすく、不注意によるミスを招きやすい傾向があります。
基本的に細部まで調べたりしませんので、短絡的な思考・行動を取ることが多いのです。
それが愛嬌として許される場合は良いですが、重大なミスに繋がることもあるので、精密な作業を必要とする職種には若干不向きだと思われます。

全員にわかりやすいキャラクターでいうとONE PIECEのルフィに近いタイプです。
彼に難しいこと(船の操縦)を任せたら、全員遭難します🤣

雨だけど植物には最高の日だな!


(2)ネガティブシンキングタイプ


ネガティブシンキング傾向が強い方は、ポジティブシンキングタイプとは真逆で、物事の負の面に着目します。
他人の言動の裏を読もうとしたり、自分自身の言動の負の影響等を過度に気にしがちです。
そのため、基本的に消極的で、一見すると付き合いにくいタイプに見えることがあります。

しかし、ネガティブな思考傾向ができるということは、物事の負の部分がしっかり見えているということでもあるので、思考法の活用の仕方次第では上手くハマります。
例えば、融資担当、内部監査担当などの職業では、物事の良い面だけを見ているとデフォルト(債務不履行)や不正が起こってしまいますので、ネガティブな思考法ができる人の方が向いていたりします。
もっといえば、悪人の気持ち、考え方、行動傾向などがわかるほど負の部分を研究できれば最高です。
内部監査、融資担当にとっては、そういう視点がとても重要です。

また、ネガティブシンキング傾向が強い人は、組織のブレーキ役を担うことが多いです。
組織の中にポジティブシンキング傾向ばかりが集まると大抵暴走しますので、ある程度ネガティブな思考を持った人の意見も大事にしないといけません。
そういう意味ではバランスを取ってくれるタイプとも言えます。

晴れてしまった。。。花粉が飛ぶ…


(3)クリティカルシンキングタイプ


最後に、クリティカルシンキングタイプについてご説明いたします。
このタイプは、物事を批判的に考察する傾向が強いです。
ここでいう「批判的」とは、非難・否定的という意味ではなく、多角的に分析して、より合理的な判断をするという意味です。

この類型の人達は、物事を冷静に分析してから結論を出す傾向が強いので、一見すると「なんか否定的な人だな」と感じてしまうこともあるかと思います。
また、細かいところに注意を払うので、大雑把な人からすると「面倒くさい人」と思われがちです。
しかし、ビジネスにおいては最も重要な思考傾向です。
特に専門職においてはこの思考傾向の人材が重宝されますし、必要です。

最近のベンチャー企業のマネジメント層にはこのタイプの人が多くなってきている印象で、より高度な意思決定が求められるようになってきた現れだと思います😁
大変喜ばしい傾向です。

しかし、クリティカルシンキングにも大きな難点があります。
それは、調整が難しいことです。
この傾向が強くなっていくと、良くも悪くも「空気が読めない」ようになっていきます。
なぜなら、物事を多面的に分析する能力が高くなればなるほど、どんな意見に対しても批判ポイントが見えるようになるからです。

組織には「リスクはあるけど兎に角良いところだけ見て、今は前に進もう!」という瞬間がどうしても必要です。
そういうときにまで批判的意見を言ってしまう傾向があるのです🙄
「失敗したら意味が無いんで、もっと考えましょうよ。リスクがあるならヘッジしましょう」と言いがち。
言っていることは全然間違っていないですし、正論なんですが、正論はときに他人を傷つけたり、モチベーションを下げてしまったりするので注意が必要です。

また、この傾向の人達は他人よりも一段深いところまで考えていることが多いため、基本的に「自分の方がわかっている」「自分の方が考えている」と思っています。
その結果、他人に対して上から目線の発言をしてしまったり、若干攻撃的な物言いをしがちです。
この度合いが強くなると、組織内でとても嫌われます👍

したがって、クリティカルシンキング傾向があり、かつ、それを調整できる人を採用しないといけないのですが、そういう人が見つかることは極めて稀です。

データを基に考えると…


4.思考枠組みによる採用

では本題に入りましょう。
どうやって採用するかです。

(1)要件定義


上述のとおり、思考枠組みには様々な類型があります。
代表的な3類型を前項で示しましたが、それ以外にも特徴的な類型はいくつもあります。
この辺りのお話をすると長くなるので割愛しますが、重要な点は、自社にとって必要な思考枠組みはどのようなものなのかという点をしっかりと定義することです。
よくいわれる「要件定義」です。
最近ではかっこよく「ペルソナ」と言われたりもします。
どのような人材がほしいのかをしっかりと考えることです。

意外なことですが、多くの採用現場ではこの要件定義が甘々の状態で選考が進んでいきます。
それゆえに、感覚的な採用になりがちで、失敗が多く発生します。

そもそも、採用要件というものは、職種、ポジション、将来的に任せたい役割等で変わってくるはずなのです。
しかし、忙しい日々の業務でそれを考える余裕がなく、単に「目の前の膨大なタスクを半分引き取ってくれる人がほしい!」という切実な需要に負けて、とりあえずの採用をおこないがちです。
その結果、あまりマッチしない人間を採用してしまい、かつ、オンボーディングもろくに行われず、早期離職に繋がっていきます…。
どちらにとっても幸せじゃない😭

だからこそ、要件定義だけはしっかりしておきたい!

単純にポジティブシンキングのみ!ネガティブシンキングのみ!という人は少ないです。
皆さんどの傾向もある程度持っています。
その傾向の理想的な割合をよく話し合って、要件定義をしていきます。
このとき、ポジティブ傾向やネガティブ傾向については、心理テストなどを活用して分析を行うこともあります。
なお、心理テストで最も活用例が多いのはリクルート社のSPI性格検査だと思います。


その上で面接でもよく分析し、自社にとって程よい配分の人を採用していくことになります。

ネガティブ傾向強いなぁ。どうするかな。


(2)ディスカッション型面接


ポジティブ傾向やネガティブ傾向については心理テストでもある程度測ることができますが、クリティカルシンキングについては心理テストだけではなかなか測ることができません。
これは、ロジカルシンキングや分析力、発言力、話術などでも同様です。
それらの点を面接で見極めないといけないのですが、問題はどうやって見極めるかです🤔

形式的な質疑応答で果たして思考枠組みを分析できるか?
経験豊富な人事ならそれも可能なのですが、まだ経験が浅い人事やたまにしか面接をしないマネジメント層にとってはこれは難問です。

そこでオススメしたいのが、ディスカッション(ディベート)型面接です。

私自身も過去にそういう面接を何度か受けたことがあるのですが、受けている方にとっても非常に有意義ですし、面接官も観察しやすい方法だと思います。
大手企業や公務員試験等で実施されているグループディスカッションも同様のコンセプトです。
特定の論点・課題に対してどういう思考課程を経て結論を出すのかをじっくりと観察できます。
中途採用の場合はより高度かつ実務的な論点を扱うことをオススメしたいです。

この面接の優れている点は、思考の癖、発言の癖、性格等が分析しやすい点にあります。
グループディスカッションであれば、他者との連携スタイルも分析できます。
非常に有益です😁

このとき、可能であれば人事は2人以上で対応すべきです。
一人は討論に実際に参加し、ファシリテーターを務める役割を担います。
ファシリテーター役は、あくまでも議論を促進するのが役目なので、自分が一方的に喋りたいタイプの人、マウンティング大好きな人は絶対に避けましょう。
そういう人は人事には向いていませんし、面接官にしてはいけないタイプです😱

そしてもう一人の方は観察に徹します。
このとき、観察役は優れた観察力を有する人でないと意味がありませんのでご注意ください。
ここの人選を間違うと採用ミスが多発します。

なお、ファシリテーター役の方が同時に分析力も高い場合は一人で面接を行っても支障はありません。
ただ、原則は人事又はマネジメント層が二人以上で役割を決めてから面接を行い、思考枠組みを分析していきましょう。
この方法を用いると、採用ミスをかなり減らすことができるはずです。

イメージしやすい実例として、私が過去に受けたとある会社の面接方法をご紹介します。
この会社では、CEOと直接経営課題について話し合うディスカッション型面談が実施されました。
この面談では、まずCEOがパワーポイントで自社のビジネスモデルや過去の実績等を説明してくれました。
時間で言うと10分程度、スライドのページ数は12~15枚程度です。
その上で、CEOから「弊社のビジネスモデルについてなにか気になる点はありますか?」又は「弊社のビジネスモデルの問題点についてご意見をお聞かせください」という問が投げかけられるので、そこからディスカッションスタートです😁

この時点で、この分野の知識量・思考力をある程度見ることができます。
半数くらいはただの感想だけで終わるので、問題点を抽出できずに終わります。

残りの半分くらいの人は問題点を抽出できるので、CEOがその課題に対する自身の認識を語ってくれます。
そのあとは様々な論点を話し合って、最終的に何らかの解決策の提示を求められます。
このディスカッションを通じて、論理的思考力、クリティカルシンキング、発言力(論証力)、課題解決力など様々な要素を見ることができます
この会社の面接の素晴らしかったところは「マンホールの蓋がなぜ丸いかわかりますか?」なんていうどうでもいい質問ではなく、実務で実際に問題となっている生きた論点を扱っていたところです。

私のときは、約40分ほど様々な視点からディスカッションをしていきました。
結果的に、私自身もその会社のビジネスモデルを深く理解できましたし、CEOの素晴らしい洞察力や論理性、抱えている課題なども全部わかりました。
このような面談方式は双方にとって有意義な時間になりますし、自分が入社したらどういう役割を担うべきなのかという点も明確になります。

あまり損がない面接だと思うので、可能であれば実施してみてください。


おわりに

今日は、ゲシュタルト心理学の考え方を出発点として、思考枠組みによる採用活動についてお話させていただきました😁
本当はパーソナリティ心理学の分野にも言及しようかと思ったのですが、ちょっと長くなりすぎるなと思ったので割愛しました。

どんな人間にも思考の癖があります。
この癖は、育ってきた環境や学んできた量などで個人差がとても大きく出ます。
価値観そのものが表出しているといってもいいです。
そのような癖を「思考枠組み」と表現しています。

この思考枠組みの代表的な類型を理解し、自社の求める人物の要件定義をしっかり行いましょう。
その上で、ディスカッション型面接などを活用し、自社に合う人材を見極めて行きましょう!

この記事がなにかの参考になれば幸いです。

また書きます🎵

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【著者情報】

著者:瀧田 桜司(たきた はるかず)
役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長
専門:法学、経営学、心理学
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