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ベンチャーの採用ピッチ資料に書いて欲しい情報(候補者目線で考えてみた)


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WARCに所属している公認会計士・税理士の皆さんで組織された会計コンサルチームであるCo-WARC(コワーク)のサービスサイトがオープンしました。
是非御覧ください。


はじめに

ベンチャー企業で働く皆さんこんにちは✋
突然ですが、皆さんが今の企業に入るとき、採用ピッチ資料ってありましたか?

採用ピッチ資料とは、求人に応募してくれた方や、自社に興味を持ってくださっている候補者の皆さんに向けて、自社を紹介するための資料です。
会社説明会などで使うスライド資料なども採用ピッチ資料に含まれます。
最近のイケてるベンチャー企業の多くは、採用ピッチ資料をネット上に公開していることも多いので、検索をかければすぐに数十社は見つかると思います。

私は仕事柄、採用ピッチ資料を拝見することも多く、かつ、個人的にそういう資料を見るのが好きなので、いただいた資料には必ず目を通しています。

そこでいつも思うのは、企業側が伝えたい情報と、候補者側が知り合い情報に、若干のギャップがあるなということです。

採用ピッチ資料には、基本的には会社側が伝えたい情報が掲載されていて、良いことばかりが書かれています。
悪いことが裏では発生していたとしても、良いことに変換されて載っていることもあります。

それゆえ、候補者目線で考えると、もうちょっと深い情報がほしいなと思うことも多いです🤔
稀に、ミスリーディング(誤解を招く、判断を誤らせる)を誘発する内容が含まれていたりします。
そのため、候補者側からすると、ちょっと慎重に見ないといけない資料で、鵜呑みにはできないものです。

しかし、それはあまり健全ではないですよね。
本来、採用ピッチ資料は、候補者の皆さんに自社のことをより深く知ってもらって、認知度を上げたり、理解度を上げたりするために存在する資料です。
そのため、採用ピッチ資料は、会社と候補者間の情報の非対称性(情報格差)を解消するための資料といえます。

その目的を達成するためには、候補者側が欲しい情報を適切に掲載していく必要があります。

そこで今回は、採用ピッチ資料に載せてほしい情報を候補者目線で考えて行きたいと思います。
この記事に書かれているようなことがきちんと書いてある企業については、信頼度が上がるはずです。


1.採用ピッチ資料の一般的記載事項

まず、一般的な採用ピッチ資料に、どのような事項が書かれているかについて、簡単にまとめていきましょう。
一般的な採用ピッチ資料には、以下の項目が記載されています。

  • 会社概要(住所・事業内容・沿革など)

  • MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)

  • 事業解説(事業の種類、ビジネスモデル図など)

  • 労働条件(オフィス環境、福利厚生、人事考課基準など)

  • 選考プロセス

  • その他情報

以下、上記の項目ごとに私見を述べていきます。
ざっくりとした結論の概要を先に述べさせていただくと

  1. ページ数は気にせずとにかく大量の情報を掲載しておきましょう!

  2. 自社にとって都合が悪い情報でも誠実にありのままを記載しましょう!

という2点です。


1点目の結論については、ページ数を少なくして概要だけをまとめた資料の方が有益だという意見もあると思います。
もちろん、そういう資料「も」必要ですし、一般に広く公開する資料や、プレゼンのときはそっちを活用すべきなのですが、本当に必要な情報は会社側が決めることではないので、候補者に渡す資料については全部記載しておいた方が良いと思っています。
いらない情報が書かれているページは読み飛ばせば済む話なので、候補者側からすると、情報が大量に載っていても損はないのです。

それに、一度最大容量の資料を作っておけば、後で様々なシーンに合わせて削っていくだけで新しい資料ができるので、とても便利です。
新しく作るのは大変ですが、削るのは簡単ですからね👍


2点目の結論については、自社にとって都合の悪い情報を開示すると、採用成功率が落ちるという意見もあると思います。

しかし、悪い情報を隠して採用することにメリットはありますかね?🤔
そもそも、会社にとっての最大利益って、候補者が自ら望んで入社してくれて、かつ、入社後に自分の実力を発揮してくれることだと思うのです。

それにもかかわらず、悪い情報を隠して入社させてしまうと、信頼を失って、やる気もモチベーションも激下がりする可能性が高くなります。
そうだとすれば、最初から全部さらけ出して、それを受け入れた上で入ってもらった方が、その後のパフォーマンスも良いと思うので、私としては、悪い情報も誠実にありのまま記載すべきという考えです。

以前、RJP(Realistic Job Preview)について解説しましたが、その考え方と同じです。


では、以下では、記載項目ごとに書くべきことを述べていこうと思います。
※長くなります



2.会社概要で記載すべき事項

表紙と目次の次に出てくるページとして、会社概要を記載することが多いと思います。

こちらの情報は大抵は1ページでギュッとまとめた感じで記載します。
記載すべき事項としては、以下のようなものがあります。

  • 会社名(ロゴを載せることもある)

  • 本店所在地(支店・支社があるならそれも)

  • 代表取締役の氏名

  • 会社 or/and 代表取締役の写真

  • 事業内容(簡易的な記載)

  • 従業員数

  • 売上高や利益の推移

  • 顧客数やユーザー数の推移

  • 沿革など

会社概要の欄では、その会社を代表するような商品やサービス(例:任天堂でいうマリオ、ピカチュウなど)があるなら、その写真を載せたりもします。
このあたりはデザインの領域なので私にはわかりません(センスゼロ)ので、スライドを作るのが得意なデザイナーに任せましょう!

また、沿革を掲載する場合は、2ページに分けた方が良いと思います。
歴史ある会社の場合、沿革だけで相当な行数を取られると思うので、ページを分けたほうが見やすいです。
ただ、沿革に記載すべき事項は厳選しておいた方が良いと思います。
候補者が知りたいであろう沿革情報だけを記載しましょう。

なお、ベンチャー企業の場合は、沿革を載せても薄い情報しか載せられないと思うので、それだったら取締役全員の写真とプロフィール(経歴など)を2ページ目に掲載しておいた方が有益だろうと思います。
人数が少ないベンチャー企業なら、部長クラスより上は全員載せてもいいくらいです。
※本人の同意は必要

役員陣の経歴は候補者側からすると意外と気になる情報で、自分の部署を統括する人間や、会社を経営している人間たちがどういう経歴を辿って今に至っているかを把握しておきたいものです。

そのため、以下のような情報を掲載しておくと良いと思います。

  • 氏名

  • 出身地

  • 出身大学(学部も掲載した方が良い) or 出身大学院(研究科も掲載)

  • 資格(当該役員が士業資格や難易度の高い資格を持っている場合)

  • 役職、管轄部署、役割

  • 勤続年数

  • 大雑把な職歴

  • 趣味特技

  • その人の人間性がわかる情報

私個人としては、役員陣の専門分野が特に気になるので、研究科や研究分野などが記載されているとより興味深く読むことができます。
写真も宣材写真のような真面目な写真よりは、プライベートな写真などの方が親しみが湧きやすいかもしれません。
候補者にどういう印象を与えたいのかを考えて、写真や記載事項を選びましょう。


3.MVVで記載すべき事項

続いて、ミッション・ビジョン・バリューの3項目を記載することが多いです。

こちらについては、会社それぞれでMVVに込めた想いがあるはずなので、それを効果的に記載していただければ十分だと思います。
1ページですべてを示す必要もないので、3~5ページくらい使って、MVVをじっくり解説しても良いと思います。

テキトーにつくったMVVであれば1ページで記載してもいいと思うのですが、普通はそこに強い想いがあって、理想があって、情熱があるはずなので、それを全力で表現した方が、採用ピッチ資料としては効果的です。

転職者が、ベンチャーへの転職を決めたキッカケのうち、何割かは「MVVへの共感」があるので、ここは全力で記載すべき事項です。

逆に、候補者側に対して言えることは、MVVの記載が薄い、又は意味がよくわからないようなら、ちょっと警戒したほうが良いかと思います。
おそらく、そのMVVは社内にも浸透していませんし、意思統一もなされていません。
価値観の一致が弱い組織は、私の知る限りでは成功しづらいです。



4.事業解説で記載すべき事項

続いて、自社が行う事業の解説を記載することが多いです。

ここでは、以下のような項目を記載することが多いです。

  • 自社事業のビジネスモデル解説

  • 市場分析の結果

  • 競争優位性の源泉の説明

  • 市場シェア

  • 成長可能性

などについて書いていきます。

これらの項目については、日頃から投資家とのコミュニケーションでも資料を作っているでしょうし、IPOを目指しているなら社内に情報は溜まっているはずです。
それを効果的に配置して、読みやすい資料を作ってください。

また、採用ピッチ資料としては、その事業の客観的情報に加えて、内面的情報を記載したほうが良いと思います。
内面的情報の中には、なぜその事業を始めようと思ったのか(事業理念)という情報が含まれます。

単に、市場が拡大していて、競争が激しくなくて、儲かるからという理由で始めているなら、書くことは何もないかもしれませんが、通常はそういう薄い想いで事業を始めたりしないはずです。
ベンチャー企業の経営者の多くは、何らかの理想があって、実現したい未来があるから、その事業を始めています。
そして、ベンチャー企業がやっている事業の多くは「無謀」ですから、そういう情熱的な想いがないと、誰もついてきません。

ゆえに内面的情報が重要なのです。

そもそも候補者にとってはベンチャー企業に転職すること自体がリスクですから、それだけのリスクを冒しても良いと思えるほどの理由が必要になってきます。
その理由たりうるのは、経営者の情熱への共感ではないかと思うのです🤔

仮に、市場拡大中、売上増加中、競合優位性あり、ストックオプションがもらえるみたいな経済的理由でその会社を選んでいる人が多いのであれば、事業がほんの少し傾いただけで大量退職を招きます。
経済的理由でついてきている人は経済的理由で離れるものです。

ベンチャーでの生活が長い人はわかると思いますが、ベンチャーの業績は小さな市場の変化やキーマンの離脱(退職)で大打撃を受けることが多いので、業績の波が非常に激しいです。
だからこそ、正念場を耐え抜くためには情熱が必要です。

そういう意味でも、採用ピッチ資料には創業者の内面的情報を多く掲載しておいた方が良いです。



5.労働条件で記載すべき事項

次に、労働条件について記載することが多いです。

労働条件の項目で記載することが多い事業は以下のとおりです。


  • オフィス環境(執務スペースや休憩スペースなど)

  • 主たる福利厚生(各種制度、有給休暇の種類・日数など)

  • 人事考課基準

  • リモートワークに関する事項

  • 各種社内行事・イベントに関する事項

  • 勤務時間及び平均残業時間

  • その他有益と思われる事項


これらの情報を掲載するときは「盛り過ぎない」ことが重要です。

採用ピッチ資料あるあるなのですが、オフィスをキレイに見せるために画像を過度に加工したり、ほとんど利用者がいないような福利厚生をさぞ皆が喜んでいます風に書いてみたり、リモートワーク原則ダメなのにリモートワークもOKと書いてみたり、日頃殺伐としているのに仲良さそうな笑顔の写真を使ったりなど……

現実と乖離しすぎている内容を記載することはオススメしません。

その乖離が大きければ大きいほど、入った後の失望も深くなるので早期退職に繋がります。
できる限り現実に近似した内容と写真を使いましょう!


6.募集ポジションで記載すべき事項

続いて募集ポジションについての詳細を記載する場合もあります。

多くのポジションを同時並行的に募集する場合は、一覧で表示すれば良いと思いますが、もし特に力を入れたいポジションがあるなら、別途ページを割いて記載するべきだと思います。
その方が、候補者側には刺さります。

記載すべき事項としては以下のようなものがあります。

  • 募集職種の名称

  • 当該職種の役割、ミッション

  • 当該職種の組織上の位置づけ(他部署との関係や管理職か否かなど)

  • 募集に至った経緯

  • 年収帯(現実的な金額を表示する)

  • 業務の内容(できる限り具体的に)

  • 直属の上司となる人間の詳細なプロフィール(写真付が望ましい)

  • 一緒に働くことになる同僚のプロフィール(写真付が望ましい)

  • 問い合わせ先(担当者のメールアドレスなど)

  • その他候補者にとって有益と思われる情報すべて


募集ポジションについて詳細に記載する趣旨は、候補者の不安を無くすことにあります。

候補者側の立場で考えると、やはり転職先に関して何も知らないということ自体が大きな不安要素であり、リスクです
そのため、できる限り詳細な情報を提供して、不安要素を消してあげる必要があります。

なぜそうしないといけないのかというと、優秀な人材であればあるほど、採用時の競争が激しいからです。
自社が情報を出し渋っている間に、採用における競合企業は、当該候補者に対して赤裸々に情報を開示しています。
優れた人事や管理職がいる会社ほど候補者に誠実に対応しますから、包み隠さずにすべての情報を開示します。
採用に強い会社は、私から見ても「そこまで言っちゃうんだな」と驚くほどの情報を開示しています。

候補者側からすると、重要な情報を何も開示しない会社より、自分を信頼してすべてを開示してくれる会社の方が信頼できます。
言われてみると当たり前のことなのですが、実際に採用現場でこれができている企業は少数派です。

だからこそ、ベンチャーにもチャンスがあるとも言えます。

大手企業の場合、重要な機密情報の開示については、法務やコンプライアンス部の承認が必要になることが多いので、たとえ採用のためといえども、資料に勝手に載せるわけにはいきません。
そのため、無難な公開済み情報しか載せられないというのが通常です。

一方でベンチャー企業であれば、自社の情報の管理はCEOが直接行っているでしょうし、人数が少ないので承認プロセスも比較的簡易です。
ゆえに、採用ピッチ資料に載せられる情報も多くなります。

このアドバンテージを活かすべきです。

候補者の立場に立って、入社時の不安を解消し得ると思われる情報は全て載せてしまいましょう!


7.その他情報で記載すべき事項

最後に、上記以外の項目で記載したいことがあれば記載していきます。

ここは企業の個性が出るところなので、本当に千差万別です。

私が見たことがある採用ピッチ資料の中で、面白いなと思った事項は以下のようなものがあります。

  • 部活動の活動報告

  • 特定の候補者に対する同僚たちからのメッセージ

  • 飲み会補助金の説明

  • 活躍している社員が述べる当社のメリデメ

  • 自社の弱点に関すること


何を書いても正解だと思いますが、私の見解としては、自社の雰囲気や弱点がわかる内容にした方が良いと思っています。

上記の例でいうと、部活動の活動報告を記載した企業の資料では、登山部で山登りに行ったときの写真や、ゲーム部が社内でゲームをしている写真などが掲載されていて、社員間の仲が良いのだろうという雰囲気が伝わりました。

また、活躍している社員が述べる自社のメリット・デメリットを掲載していた企業の場合は、特にデメリットの部分が秀逸で、入る前に知れてよかったと思えるような内容でした。
入社する前に覚悟を決めた上で入れるかどうかで、その後のパフォーマンスが大きく変わるので、非常に有益な情報だったと思います。


そして、特定の候補者へのメッセージも効果的だと思います。
とある会社の採用ピッチ資料は、デザイン的には全く手が込んでいなくて、Canvaかパワポで簡単に作ったものだったんですが、会社説明資料以外の部分が全部歓迎メッセージだったんです。
割合でいうと、2:8で歓迎メッセージが多いです。

一緒に働くことになる10名程度の社員全員が、特定の候補者に対して、どれだけ来てほしいか、入ってくれたらどれだけ嬉しいかを述べたメッセージでした。
選考が終了して、内定通知と同時にその資料をもらったら、とても嬉しいでしょうし、もう断れないですよね🤣
私なら即日で内定承諾書にサインしてしまいます。


このように、会社によって様々なことを載せていますが、いずれにしても候補者の立場に立って考えてみると、効果的な採用ピッチ資料ができると思います。


おわりに

ということで今回は、採用ピッチ資料について私見を述べさせていただきました。
企業の人事の皆さんや、これから転職をしようと思っている皆さんの参考になれば幸いです。

また、採用ピッチ資料は毎月更新すべきだと思うので、定期的に見直して、情報を最新の状態に保ちましょう!


そして、WARCでも求人を公開しておりますので、興味があれば是非ご検討ください。
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著者:瀧田 桜司(たきた はるかず)
役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長
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