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【心理学15】人事・採用で最も重要な「RJP:Realistic Job Preview」の話(組織心理学分野・採用戦略分野)

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はじめに

10年くらい前に流行った「7・5・3問題」って覚えていますか?
新卒3年以内の離職率が、学歴別に見ると、中卒7割・高卒5割・大卒3割となっているという問題です😨

今は若干数値が良くなっているようですが、大卒の新卒が3年以内に3割辞めるというのは変わっていないようです😁
ちなみに、初年度だと、年によりますが約11~15%の新卒社員が辞めています。

私の感覚では、初年度1割、3年以内3割ならまだマシな方だなと感じます。
これはあくまでも平均値なので、深刻な会社は初年度に3割くらいが辞めて、3年で75%の新卒社員が退社しています🙄
全滅している会社もチラホラ。
もっと酷いところだと、中途採用組ですら、3年以内に70%以上が退社している企業も……

ははは😱ワラエナイ

今日は、そんな早期退職を防いでくれるかもしれない組織心理学分野の理論をご紹介しましょう!
その名も “Realistic Job Preview”(通称:RJP)です!

なお、私はこの理論が採用戦略において最重要な理論だと考えています。


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1.早期退職の損失

RJPの解説の前に、早期退職がなぜ会社にとって不利益なのか。
その点についてお話したいと思います🤔

この点、中途採用で説明するとわかりやすいです。
中途採用で人材紹介業者を利用した場合、仮に1年ちょっとで辞められてしまった場合、やっと仕事に慣れてきてこれからだという時期に辞められてしまうので、手数料がまるっと無駄になると考えられます。
手数料の相場は年収の35%ですから、それがそのまま損失になります。

また、中途採用にかけた人事部の人件費も無駄になります。
さらにいうと、新しい人を探してくるための人件費もそこに追加されますし、新しい人を人材紹介により採用した場合はさらに手数料が上乗せになります。

目に見えない損失も大きいです。
本来、従業員には長く働いてもらい、新人の模範となることで社風の基礎となる企業文化を醸成し、新人たちに姿勢と意欲を引き継いでいってもらわないといけません。
これらの役割は、長くその会社で働いてくれた優秀な社員がいないと成立しません。

早期退職が目立つ企業では、この企業文化がほとんど醸成されません😨

引き継ぎもろくに行われずに人が入れ替わることが多くなるので、業務プロセスも改善されず、ひたすら非効率化していきます。
その結果、余分な人件費がさらにかかり、負の連鎖が続きます。

最終的には、離職率の高さやブラック具合が外部に知れ渡ることになり、優秀な人材が誰もその会社を受けなくなります。
あとはもう終わりの見えない地獄スパイラルです😱


これらの損失は新卒が退職する場合でも同様にかかってきますが、中途採用の方が損失は大きいです。

ベンチャー企業の多くでは、中途採用メインの採用となるので、3年以内離職率が高い会社は、一度損失額を計算してみたほうが良いです🙄
莫大なコストが、無駄にかかっているはずです。
会社の規模にもよりますが、下手すると数億~十数億単位で無駄が発生していると思います。

このような状況をそのまま放置しているような会社で働きたい人はまずいないでしょう。
そのため、早期退職を防止する策を考え、それを実行することこそが、会社の組織力を底上げする活動そのものであるといえるのです。

そして、離職率を下げるのに効果的な方法がRJPです😁
どれだけ重要な理論なのかが伝われば嬉しいです。


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2.RJPとは

RJPとは、Realistic Job Previewの略で、自社組織や仕事について、悪い情報も含めて「誠実かつ事前に」応募者に伝えることを意味します。

「誠実かつ事前に」という点が特に重要です。

これによって、後述するように、離職率が下がります。
まぁ同時に選考進出率(自ら進んで次の選考に進みたいという人の割合)や内定承諾率も下がるのですが🙄


RJPはここ10年くらいで少しずつ周知されてきている理論ですが、まだまだ実践で導入されている事例は少ないです。
効果はすでにいくつもの論文で実証済みで、私自身も実践した上で明らかに効果がある方法なのですが、実践が非常に難しいのです🤔

その原因は、採用活動では企業側は自社の良いところだけを言ってしまいがちだからです。
良い人材ほど争奪戦になりますから、企業側としてはなんとしても採用したい。
だからこそ、自社の良いところをたくさん並べ立てて、来てもらう😨

結果、入社はしてくれるのです。

でも、その後、聞いていた話と違っていたということが起こり、入社してくれた人たちはリアリティショック(現実とのギャップによるショック)を受けて退社していきます。
これが人事領域でよくいわれている「ミスマッチ」発生のメカニズムです。

このミスマッチを防ぐために、応募者に対して「悪い情報も含めて」誠実かつ事前に情報を開示し、納得した上で来てもらうのがRJPです。

しかし、実際に導入するには相当な勇気が必要です。

RJPを行うことによって途中辞退・内定辞退が増える可能性が高いからです🙄
実際、誠実に話せば話すほど、辞退者は増えます(笑)
超大手企業であればネームバリューによってある程度辞退を抑止できますが、ベンチャー企業ではほぼ間違いなく辞退者が増えると思います。
以前、RJPを実施したベンチャー企業では、辞退率が倍以上に跳ね上がりました🤣

それでもなお、私はRJPを導入すべきだと思うのです。
理由は後ほどお話するとして、まずはRJPの効果から見ていきましょう!


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3.RJPによる効果

組織心理学の論文では、RJPの効果として以下の4つがよく挙げられています。
なお、以下の4つの効果はすでに実験によって実証済みです。

(1)セルフスクリーニング効果
(2)ワクチン効果
(3)コミットメント効果
(4)役割明確化効果

以下、一つずつ説明させていただきます。


(1)セルフスクリーニング効果

RJPを導入すると、応募者は事前に「悪い情報も含めて」十分な情報を持った上で入社するかいなかを判断できるので、自己選択によるスクリーニング効果が得られます。

人間は、自分で選んだことだと、なぜか確証バイアスというものが発生して、多少不利なことがあっても全部自分に肯定的に解釈してくれるのです🙄

(2)ワクチン効果

次に、ワクチン効果というものが発生します。
これは、初期段階に悪い情報をたくさん渡しておくと、実際に働き始めたときに発生した不利益事象に対して免疫ができるという意味です

不利益情報を最初に聞いておけば、心の準備ができますから、それで絶望感や不快感が緩和されるという仕組みです😁

この効果は絶大で、過去のRJP実施事例を見ても、大半のことはワクチン効果で乗り越えてくれます。
RJP恐るべしです。

(3)コミットメント効果

そして、コミットメント効果も無視できません。
これは、最初に不利益情報を渡したという事実が、その組織に対する信頼感を生み、結果としてその組織に対する愛着・好感・帰属意識が高まるという効果です。

営業やコンサルでも同じことですが、最初に不利益情報を相手に渡すというのは、誠実性の証明でもあります。
採用活動でも当然にやるべきことです。

(4)役割明確化効果

最後に、役割明確化効果というものもあります。
これは、選考段階で自社の不利益情報や課題などを誠実に話すことによって、応募者自身が自分の役割を明確に理解してくれるという効果です。

応募者は、その会社のどこに問題があるのか、どういう課題を抱えているのかを入社前に知ることができるので、入社を決意する過程で、それらの問題・課題にどう対処するかを本人が自分の頭で考えるのです。
それによって、入社後の自分の役割や動き方が明確になるという構造です。

素晴らしい😍



以上、主に4つの効果が発生して、早期離職率が低下するというメカニズムです😁

実は、この他にも2つほど効果があります😏
これは、すべてのRJPで発生するわけではないですが、しっかりとしたRJPを行えば通常は発生する効果です。


(4)モチベーションアップ効果

嘘ばかり並べられて入社した人間は、入社後に著しくモチベーションを落としますが、RJPによって入ってきた人間は、高いモチベーションを保ったまま働いてくれることが多いです。

RJPをしっかりと受けた応募者は、メリット・デメリットを総合考慮して、自分で入社を決めたからこそ、しっかりとやろうという精神状態に至ります。
その結果、モチベーションが高い状態を長期間維持ししやすくなるという構造です😁

(5)企業文化の変革効果

この効果は、企業側に発生する効果です。
RJPを本格的にやろうとした場合、自社のダメなところを直視することになります。
特に人事担当者はそこから目を背けられず、真正面から向き合うことになります。

そして、そのダメなところを言語化し、相手に伝えるという苦行を強いられます😨
自社の不足、課題を相手に話すのはなかなかしんどいことです。

でも、それをやることで、課題が言語化された状態で浮き彫りになります。
そのまま放置する企業は少ないはず。

その結果、企業文化の変革のキッカケが生まれ、変えていこうとする人たちが出現します。
今までは「ダメなところもあるけど、いつか誰かが変えるでしょ」という感覚だったものが、自分の事として認識し始めるわけですね😁

RJPの結果、社内制度が一気に変わったという企業もあるので、非常に有益な取り組みだと思います。


以上、5つの効果について簡単にですが解説させていただきました。
やらない理由がないと思うのですが、どうでしょうか?🤔
私は自分が担当する採用では、ほぼ間違いなくRJPをやるのですが、やはりRJPをやった採用の方が遥かに良い人材を採用できています。
なので強めにおすすめします。


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4.RJPの実施方法

RJPの効果がわかったところで、実施方法の話に移りましょう!

RJPの立案者であるWanousさんは、RJPの実施方法について、ガイドラインを提唱してくれています😁
よくできたガイドラインなので、それを基礎にして、実施方法を解説していきます。

(1)初期段階でRJPの目的を説明
(2)客観的事実に基づく誠実な情報提供
(3)主観的事実に基づく誠実な情報提供
(4)自己決定をしっかりと促すこと
(5)選択肢を複数提示すること

この5ステップでRJPを行えば十中八九うまくいくと思います。
以下、解説していきます。


(1)初期段階でRJPの目的を説明

まず最初に行うべきことは、RJPの目的を相手方に説明することです。
日本ではまだRJPを実施している会社は多くありません。
むしろ超少数派です🤣

そんな状況で、いきなり不利益情報を提供したら、応募者はビックリします。
そのため、最初の段階で、RJPという理論の簡単な説明と、自社がそれを導入する理由・目的を説明しましょう。
採用選考のプロセスは会社によってまちまちなのでいつがベストなのかは会社によりますが、できる限り早い段階で説明を行うべきだとは思います。
できれば一次面接の段階が良いでしょう。

それを行うことによって、コミットメント効果が増大します😏
RJPを行う目的を説明して相手が不快になることはほぼ無いので、15分くらいかけてじっくり説明したいところです。
お互いのためになるからやってますと。

なお、これは実体験での話ですが、私がRJPの目的説明に力を入れ始めてから、嬉しい誤算が発生しました。
それは、応募者も誠実になったことです。
私が最初にRJPの説明をして、不利益情報を包み隠さず相手にお伝えすると、相手も選考上不利となる事実を教えてくれるようになったのです🙄

前職を辞めた本当の理由とか、過去の持病のこととか、こちらが一切聞いていないことまで全部自発的に話してくれるようになりました。
おそらくこれは、返報性の法則だと思います。
返報性の法則とは、人は他人から何らかの施しを受けた場合に、お返しをしなければならないという感情を抱く心理のことです。
会社側が誠実に対応してくれているから、こちらも嘘はつけないという心理になったのでしょう🤔

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(2)客観的事実に基づく誠実な情報提供

目的説明が終わったら、まずは客観的事実に基づく誠実な情報提供を行いましょう。

この際、無理に不利益情報だけを伝える必要はありません。
良い情報と悪い情報を両方とも伝えることが大事です。

私見としては最初に悪い情報を伝えた方が良いと思います!
悪い情報が10あったとしたら、先に10伝えて、その後、良い情報を10伝えて、いい感じの割合にすると良いかなと。
良いところが10もないという場合は……😒

いずれにしても、客観的事実に基づく情報が重要です。

例えば、BS・PLを示しつつ、現状の財務状況をお伝えしたり、直近3年間の離職率を数字で示してお伝えするなどがあります。
あとは、外部調査会社が実施したランキングに基づく自社の順位とか、事業部の中の人間関係の問題の個数とか。
客観的事実を集めて、それに基づいてお話すると説得力も増します。

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(3)主観的事実に基づく誠実な情報提供

次に、主観的事実に基づく誠実な情報提供を行いましょう!

主観的事実というのは、面談や面接の担当者の「私見」という意味です😁
自分の目から見えている事実に基づいて、率直な意見を言おうということです。

会社の良いところも悪いところも、主観で話してOKです😁

人事担当者の多くは、組織内で最も会社のことを知っている人たちの中の一人ですから、沢山話せるはずです。
それをそのまま話していただければ結構です。
どういう問題・課題を抱えているのか、どうやって解決したいと思っているのか、思いの丈を応募者に語りましょう。

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(4)自己決定をしっかりと促すこと

すべてのお話が終わったら、最後に必ず相手に自己決定を促してください。

私の場合は、

これまでお話したことが、弊社の現状です。
まだまだ至らぬ点が沢山ございます。
課題や問題だらけの組織です。
そのため、ご入社いただく方には、入社後に大変な思いもさせてしまうかもしれません。
だからこそ、全て正直にお話した次第です。
メリット・デメリットをじっくり考えて、次の選考に進みたいかどうかをご検討ください。
2週間以内にお返事がなければ、ご辞退されたものと考えます。
次の選考にお進み頂ける場合は、是非ご連絡ください。

という感じに伝えることが多いです😁
大体最初の面接でRJPを実施するので、二次面接以降に進みたいかどうかを本人に決めていただきます。

これを実施してからは、2次面接に進む人自体は減りましたが、二次面接以降に進む人は入社意思が強い状態で二次面接に進んでくれるので、それはもう充実した選考になります👍

もちろん、一次面接で合わないなとなれば、お見送りすることもあります(笑)

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(5)選択肢を複数提示すること

二次面接以降の話ですが、ある程度お互いの性格や相性がわかった段階で、複数の選択肢を提示することをオススメいたします。
この選択肢は、あくまでもRJPのための選択肢です。

例えば以下のような選択肢が考えられます。

・短期インターンの実施
・短期業務委託の締結
・既存社員との交流会の開催
・オフィスツアーの実施

これらの選択肢を相手に提示して、相手が望むことを実施してあげるのが良いです😁
これによって、少しずつ応募者は自分が働く姿をイメージしてくれるようになります。
そのイメージが具体的であればあるほど、入社意思を固めやすくなります。

特にインターンは効果的です。
入社した後に実際に働くメンバーと働くことで、お試しで転職ができるので、非常に有効なRJPです。
最近のベンチャーでは実施する企業が増えてきましたね😁

WARCでも、(今は公認会計士限定ですが)お試し転職のサービスを実施しています。


士業や専門職(エンジニア等)だとお試し転職はしやすいので、是非実施した方が良いと思います。
応募者の大体の実力も把握できるので、双方にメリットがあります😁


以上が大まかなRJP実施方法です!

比較的すぐに実践できるかと思うので、是非ご検討ください😁


おわりに

今日はRJPについて少し長めにお話させていただきました。

応募者にとっても企業側にとっても特にデメリットはないと思うので、早めに実施して、改良を加える作業に入ったほうが良いと思います!

組織の定着率が上がると、優秀な人材たちによって企業文化が醸成されていくので、より強固な組織が出来上がっていきます。

その結果、業績も上がりやすい組織になります😁
キラキラしたイメージで応募者を釣る時代はもう終わりを迎えつつあります。
誠実・正直に採用活動を行って、それでも人が来てくれる会社を作っていきましょう!

それがきっと、双方にとって良いことです。


ではまた次回🎵


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この記事は、株式会社WARCの瀧田が担当させていただいております。
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【著者情報】

著者:瀧田 桜司(たきた はるかず)
役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長
専門:法学、経営学、心理学
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