けんたろう

アメリカと新興国のマクロ市場環境や個別株決算をメインに投稿していきます。米国、中国、イ…

けんたろう

アメリカと新興国のマクロ市場環境や個別株決算をメインに投稿していきます。米国、中国、インド、アフリカ地域メインの野良アナリスト。ナシーム・タレブの信奉者であり2020年のコロナショックで投資の成功体験をつかんだ。

記事一覧

読書:戦争論の投資への応用

MBAを受講すると、ほぼ必読書となるのが、ナポレオン戦争時代に活躍したプロイセン(フランスの敵国)の参謀であるクラウゼヴィッツの「戦争論」である。 戦争論は数多くの…

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DX支援コンサルティングAcentureの決算

アクセンチュアの業績が振るわない。ITコンサルティング企業であり、DX化の追い風を受けていた同社の2Q決算が発表されたが、売上こそ昨年同期比で+5%となったものの営業…

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SVB危機はまだ続くよ

・SVBの破綻は満期返還の失敗と流動性の枯渇にあった ・逆イールドは未だ続いている ・FRBはインフレ退治が完了しないと利下げに動けない ・結論として銀行危機は終わりで…

23年3月の米国金融市場を読み解く

シリコンバレーバンク、シグナチャーバンクが破綻し、にわかに不況入りのリスクが取りざたされてきた。2年国債の金利は急低下し、国債市場は不況入りを強く示唆するが、株…

半導体ETFのSMH:生成系AIの追い風

ChatGPTの衝撃は日本でも非常に大きい。少し前までメタバースが騒がれていたが、もはや生成系AIが社会にもたらす影響の方がよほど大きくなっている。 ChatGPTを開発したOpe…

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セールスフォース、コストコの決算にみるアメリカ経済の鈍化

筆者も投資しているアメリカ株について、2月に四半期決算を迎えるセールスフォース、コストコの決算が開示された。セールスフォースは企業の顧客管理ソフト、コストコは小…

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直近の経済概観:ネット企業と半導体は沈み、オフラインは伸びた

2022年の10-12月決算が出そろった。業界を横断的に見た結果、2020年のコロナ禍でブーストがかかった企業は反動減で失速した一方、当時は抑えられていた消費がサプライチェ…

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中国株には強気になれるか

参考:WSJ 中国の経済再開に賭けた投資資金が流入 米国上空に侵入した中国の気球が撃墜されたことで、米中の対立が再び強まっている。しかし、経済面においては金融、実…

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ロレアルと花王、資生堂の2022年決算状況比較:日本のコスメはアジアの女性需要を取り損ねるか

ロレアルと花王、資生堂の2022年は、明暗が分かれた。 花王と資生堂ともに国内外のインフレ、原材料の高騰、中国のロックダウンの影響で大いに苦戦したが、ロレアルはイン…

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半導体ETFのSMH:クアルコムとAMDの状況

2月2日に公開されたクアルコムの10-12月決算は、携帯電話搭載チップの需要減少が響き昨年同期比でマイナス12%の売上収益減となった。一方で車載半導体は、クルマの信号処…

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マネーストックと金融収支にみる米国株リスク

きっかけは「昭和恐慌と経済政策」(講談社学術文庫)にある、以下の記述であった。 同書は第一次世界大戦後に不況に陥った日本経済が、苦節10年の調整を経て1930年に金解…

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スターバックスと無印良品にみる中国小売動向

2月2日、コーヒーチェーンのスターバックスが10-12月決算を公表した。その内容は厳しいものとなった。米国は値上げの結果売上増こそ確保したものの、原材料と賃金インフレ…

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賢いIMFはまた外すか

国際通貨基金は、23年の世界全体の実質経済成長率を2.9%と予測した。特にアメリカは1.4%、日本は1.8%と先進国のなかで強気である。これは直近の堅調なアメリカの経済や…

ファナック、安川、日本電産、ミスミの決算資料に現れる今後の設備投資動向

多軸ロボットで世界4強の2社であるファナックと安川電機、HDD用モータで世界首位の日本電産、FA用機器商社の大手一角であるミスミグループ本社など、グローバルなFA関連の1…

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半導体ETFのSMH:ラムリサーチの決算

参考 ラムリサーチの10-12月決算が公表された。半導体製造装置の中で、エッチング機械のトップシェアを持つ同社はこれまでメモリ・ロジック両方の需要増にけん引されて増…

半導体ETFのSMH:露光装置のASMLの決算

オランダの半導体露光装置メーカーASMLの決算が24日に発表された。10~12月の売上高は前年同期比で+28%の64億ユーロであったが、純利益はややプラスの18億ユーロとなった…

読書:戦争論の投資への応用

MBAを受講すると、ほぼ必読書となるのが、ナポレオン戦争時代に活躍したプロイセン(フランスの敵国)の参謀であるクラウゼヴィッツの「戦争論」である。
戦争論は数多くの解説本が出ているが、論理展開が難解であるため読みづらく、引き合いには出されるものの読破している人は少ない本だろう。ただし最近では以下のように解説本ではなく、原著を読みやすく圧縮したものも出てきた。

戦争と投資は、どちらも不確実性を扱う

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DX支援コンサルティングAcentureの決算

アクセンチュアの業績が振るわない。ITコンサルティング企業であり、DX化の追い風を受けていた同社の2Q決算が発表されたが、売上こそ昨年同期比で+5%となったものの営業利益は6%のマイナスとなった。営業利益率は12%と、過去4年間で最も低い水準となった。なお現地通貨建て(ドル建て)の売上は欧州が+12%(+6%)、アジア等成長地域が+14%(+5%)である。

営業利益が低迷している理由は、売上に対

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SVB危機はまだ続くよ

・SVBの破綻は満期返還の失敗と流動性の枯渇にあった
・逆イールドは未だ続いている
・FRBはインフレ退治が完了しないと利下げに動けない
・結論として銀行危機は終わりではない

シリコンバレーバンクが破綻してから10日間が経った。
米国政府の詐欺ともいえる介入によってひとまず金融システムの崩壊は回避されたが、ファーストリパブリックなど米国の中小銀行の株価は大きく下げた。
銀行セクター全体を見ても、

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23年3月の米国金融市場を読み解く

シリコンバレーバンク、シグナチャーバンクが破綻し、にわかに不況入りのリスクが取りざたされてきた。2年国債の金利は急低下し、国債市場は不況入りを強く示唆するが、株式市場は未だ楽観的な水準にある。
以下のWSJの記事では債券市場は不況入りを示唆する一方、株式市場は楽観的である背景を分析している。ここでは3つの見立てを紹介しており、一つは債券市場が正しい可能性を、一方は株式市場が正しい可能性を、最後の一

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半導体ETFのSMH:生成系AIの追い風

ChatGPTの衝撃は日本でも非常に大きい。少し前までメタバースが騒がれていたが、もはや生成系AIが社会にもたらす影響の方がよほど大きくなっている。
ChatGPTを開発したOpenAIは非公開企業ではあるが、彼らやGoogleなど他のAIサービスを提供している半導体大手の業績期待が大きくなってきた。
以下の記事では、データセンタにスイッチ、ルータ、ファイバーなどを提供しているブロードコムのAIサ

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セールスフォース、コストコの決算にみるアメリカ経済の鈍化

筆者も投資しているアメリカ株について、2月に四半期決算を迎えるセールスフォース、コストコの決算が開示された。セールスフォースは企業の顧客管理ソフト、コストコは小売スーパー大手であり、両社は日本でもビジネスを営んでいるため、知っている人も多い企業である。
現在アメリカに投資している人のほとんどは、今後のアメリカ経済を占うインフレ率とFRBの動向に注目しているが、個別企業である両社の動向をみる限り、ノ

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直近の経済概観:ネット企業と半導体は沈み、オフラインは伸びた

2022年の10-12月決算が出そろった。業界を横断的に見た結果、2020年のコロナ禍でブーストがかかった企業は反動減で失速した一方、当時は抑えられていた消費がサプライチェーンの回復で盛り上がった格好である。

失速してきたAmazon
Amazonはコロナ禍で一気に売上を伸ばし、同時にリモートワークの浸透とDX化の恩恵を受けてAWSも快進撃が続いていた。しかし、22年4Qは北米でこそインフレ調整

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中国株には強気になれるか

参考:WSJ 中国の経済再開に賭けた投資資金が流入

米国上空に侵入した中国の気球が撃墜されたことで、米中の対立が再び強まっている。しかし、経済面においては金融、実業ともに中国のゼロコロナ解除への期待が強まっており、さながら米中は政冷経熱の状況にある。

中国の代表的な上場企業であるテンセント、アリババは昨年10月の安値から6割上昇しており、また中国株に投資する米国のミューチュアルファンドとETF

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ロレアルと花王、資生堂の2022年決算状況比較:日本のコスメはアジアの女性需要を取り損ねるか

ロレアルと花王、資生堂の2022年は、明暗が分かれた。
花王と資生堂ともに国内外のインフレ、原材料の高騰、中国のロックダウンの影響で大いに苦戦したが、ロレアルはインフレをこなして高級化粧品市場の足場を固めた。

花王と資生堂は苦戦、ロレアルは高級化粧品をテコに進撃
2022年の花王、資生堂、ロレアルの前年同期比売上成長は以下の通りである。3社が競争している化粧品セグメントについて、花王は日本でこそ

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半導体ETFのSMH:クアルコムとAMDの状況

2月2日に公開されたクアルコムの10-12月決算は、携帯電話搭載チップの需要減少が響き昨年同期比でマイナス12%の売上収益減となった。一方で車載半導体は、クルマの信号処理や電装化など、いわゆるCASEの進展をとらえて成長が続いている(下図)。

不振が続いている携帯電話チップであるが、クアルコムもAMDも年後半からの需要回復を見込んでいるが、その根拠となる材料はまだ示されていない。大口需要家である

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マネーストックと金融収支にみる米国株リスク

きっかけは「昭和恐慌と経済政策」(講談社学術文庫)にある、以下の記述であった。

同書は第一次世界大戦後に不況に陥った日本経済が、苦節10年の調整を経て1930年に金解禁を行ったものの、直前に発生したニューヨークの株価暴落と世界恐慌の発生によって再び不況に陥る過程を詳細に述べたものである。
上記の箇所は、経済政策は副次的・二次的な効果をもたらすために狙った通りの結果をもたらすとは限らないことを示す

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スターバックスと無印良品にみる中国小売動向

2月2日、コーヒーチェーンのスターバックスが10-12月決算を公表した。その内容は厳しいものとなった。米国は値上げの結果売上増こそ確保したものの、原材料と賃金インフレによる利益率圧迫が起きており、中国はロックダウン政策を解除してなお感染拡大の逆風が吹いている。

アメリカのインフレはいよいよ実体経済を蝕んできた
詳しく内訳をみてみよう。同社の北米エリア(アメリカ・カナダ・メキシコ)における既存店の

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賢いIMFはまた外すか

国際通貨基金は、23年の世界全体の実質経済成長率を2.9%と予測した。特にアメリカは1.4%、日本は1.8%と先進国のなかで強気である。これは直近の堅調なアメリカの経済や、暖冬により欧州のガス危機が杞憂に終わったこと、中国のロックダウン解除からの回復などの要因を反映したもの。

しかし、IMFやFRBは重要なときにこそ予測を外すことに歴史的定評がある。2008年も経済成長率は堅調であると当初予測し

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ファナック、安川、日本電産、ミスミの決算資料に現れる今後の設備投資動向

多軸ロボットで世界4強の2社であるファナックと安川電機、HDD用モータで世界首位の日本電産、FA用機器商社の大手一角であるミスミグループ本社など、グローバルなFA関連の10-12月決算が出そろってきた。
各社とも円安やたまりにたまった受注残を消化したことで業績は堅調であるが、一方で受注動向には今後の不安材料が表れている。

まずファナックについて、受注額は2四半期連続で減少した。ロックダウンから回

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半導体ETFのSMH:ラムリサーチの決算

参考

ラムリサーチの10-12月決算が公表された。半導体製造装置の中で、エッチング機械のトップシェアを持つ同社はこれまでメモリ・ロジック両方の需要増にけん引されて増収増益トレンドを歩んできた。
12月までは最後の需要増をとらえることができたものの、同社のガイダンスでは23年1-3月は大幅な減収を予想している。これはサプライチェーンの緩和により各社の在庫積み増し圧力が和らいできたことや、IT大手の

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半導体ETFのSMH:露光装置のASMLの決算

オランダの半導体露光装置メーカーASMLの決算が24日に発表された。10~12月の売上高は前年同期比で+28%の64億ユーロであったが、純利益はややプラスの18億ユーロとなった。これは輸送費や原価の5割ものコスト増に加えて、研究開発費の3割積み増しなどの影響があったためである。
また次期の売上高の指標となる23年12月期1Qの予約額は64億ユーロとなり、うち世界で同社しか製造できないEUV露光装置

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